プラス思考に切りかえて。
「孝兄の言ってた“危険”ってこのことだったのか…。」
制服のままベッドに寝転がって、俺は思い出したようにつぶやいた。
太陽が沈み、細い月がうっすらと、明るさの残る空に姿を現している。
そんな中で、電気もつけずに考え込んでいた。
今日会った、萩という先輩とラグビー部部長、そして孝兄。
この三人に共通するもの、その中に俺を入れてほしくない、入る気もない。
よしっ、と決心して勢いよく体を起こす。
明日、萩先輩に言ってやろう、
兄貴は兄貴、俺は俺です!だから、ラグビー部に入る気はありません!
って…。
ぐっ、とこぶしを握りしめ気合いを入れる。
でもなー…、
思いながら握ったこぶしをゆっくりと開く。
俺がいくら言ったって、あの先輩諦めそうにないよなぁ…。
――あの人は、お前がきっぱり断ったくらいで諦めるような人じゃないからな。
将人の言葉が頭の中で重く響く。
「どうすりゃいいんだよ…。」
言いながらまたベッドに倒れこむ。
その時、ノックもなしに部屋のドアが開いた。
自分の部屋に入った頃には、左足の痛みは最高潮を迎えていた。
「うわっ、兄ちゃんどないしたん!?…痛そやなぁ、ケンカでもして負けたん?」
帰宅後、玄関での第一声がこれである。
直一の妹、果南はやたら細かいことに気が付く。
指摘されると何故か痛くなる気がする今は、それが妙にうとましく感じる。
しかも、一言も二言も多い果南の性格が、余計苛立ちを募らせる。
したがってキツイ言葉が口をついて出た。
「…うっさいんじゃ、ボケ。べらべらしゃべっとるとお前、ゴンタ捨てるで!!」
ちなみにゴンタというのは、うちにいる犬の名前だ。
雑種で名前からは想像できないほどくりくりした目を持つゴンタは、果南にとってかけがえのない存在である。
もちろん俺にとってもそれは同じで、捨てるなど口からのでまかせである。
だが、果南はそれを真に受けたらしく、突然涙目になった。
「…アホッ!兄ちゃんのアホ!もう大っ嫌いや!!」
そう言い捨てて走りさる果南の背中を見つめ、俺はため息をついた。
最低やな、俺って…。
カバンをベッドに投げ出し、畳の床に座り込んで思った。
シップ越しに、そっと左足に触れてみる。
尋常じゃない熱を発していたので、すぐに指をひっこめた。
「くそぉ…痛ぇ。」
頭の中がぐるぐるする。 気持ち悪い、どろどろとした吐き気に襲われる。
思わず、両手で口をおさえた。
…俺、今ごっつうマイナス思考や。
吐き気が収まり、両手をだらしなく体の側面に横たえながら思った。
せっかく、あの倉田に会えたんや!
元気出さんと損やな。
よっしゃ、とつぶやき体を起こす。
「はよ、明日にならんかなぁ。」




