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タイム!!  作者: 音無奏
16/48

弟くんの素質。

「…おーい、大丈夫かぁ?弟くん達ー。」



 階段を降りてきながら萩が声をかけてきた。

 その後ろから部長と呼ばれた男が降りてくる。



「いやー、さすが弟くん!見事な不意打ちだったな。」



 のん気な声で萩が言う。 佐野は誰のことを言っているのかわからず、俺に視線を送ってきた。

 なんとなく、“弟くん”とやらが誰をさしているのかわかった俺は、困った顔を向けた。



「で、さ、弟くんラグビー部に入んない?…今の腕さばき、絶対素質あるもんな!」


 俺のほうを見て萩が言った。

 佐野が驚いた顔をする。



「…弟くん、て?」



 言いながら俺のほうを見る。

 俺は、ため息をついて見せた。



「…えっ、知らないの君!?この少年は、ラグビーの天才であり、ラグビーの名門・桜崎高校の一年にしてレギュラー張ってる、倉田孝介先輩の弟くんなんだよ。」



 大げさに驚いた顔を見せ、萩は佐野に説明をした。 後ろで部長さんがうんうんと頷いている。



「…そーいや、兄貴おるて言うとったな。」


「俺には、自慢できない兄貴だけどな…。」



 ため息混じりに言うと萩が、そんなこと言っちゃって〜、と満面の笑み。

 部長さんは、入るよな?と言いたげな視線を送ってくる。


 さて、どう断ればいいものか…。



「…ですが先輩、こいつは…集は、ラグビー部に入る気ないんですよ。」



 俺が思案していると、佐野がやけにきっぱりと言った。

 そして、俺のほうを、なっ?といった感じで見てきた。

 俺は、驚いたがしっかりと頷いた。



「あの…俺、もう入る部活決めてるんです。…だから、入りません!」



 よっし、きっぱり断ったぞ!


 そんなことを考えている俺に、萩が何か言おうとしたその時…。



「…おーい、集!大丈夫かお前!?階段から落ちてただろ?」


「おいナオ、大丈夫か!?…ありがとな。集、助けてくれて…。」



 将人と侑希が走りよってきた。

 侑希のほうは、何故だか涙声だ。



「…ったく、侑希のやつまたかよ。お前、集に関しては本っ当に心配性だなー…。」



 将人がちょっとイジケ気味に言う。だが…



「…まぁーさぁーとー。」


「はいっ!?」



 この世の終りのような声が自分の名前を呼んだので、イジケていた将人は肩をびくりと震わせた。

 そんな将人の首を鍛え上げられた腕が締め上げる。



「…おっまえは、本当にタイミング悪いのぉ〜。俺がせっかく決めセリフ言おうとしてたのに…。」


「わっ、萩先輩じゃないですか!?…なっ、何なんすか!?…ぐっ、苦しいぃー。」



 将人が悲痛の声を上げる。

 俺は、不思議に思って聞いた。



「何だよ将人、知り合い?」


「い…いぢおう…。」



 首を締められているせいか、将人の声はくぐもって聞こえた。

 その声が聞こえた後、ぱっ、と突然萩が腕を離した。

 将人がどすん、としりもちをついて、いってぇ〜と声を上げる。

 そんな将人を微塵にも気にした様子もなく、萩は俺のほうに向き直した。



「まぁいいや。入部期間はまだあるしな。…そんじゃあ、また会いましょ、弟くん。いや…倉田、集…だっけ?」



 言いたいことを言った後、萩たちは階段を上っていった。

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