拉致に計画は必要なし!
萩たちが動き出したその頃、集はグランドを見渡しながら立ち尽くしていた。
「将人たち、どこにいるんだよ?」
台坂中学は、強制入部らしい。
広いグランドは、新入生勧誘のために忙しそうに走り回っている2・3年生や見学に来ている新入生などでごった返していた。
ということで、現在、集は三人とはぐれてしまっているのだ。
グランドまでは短い階段を降りていくようで、その階段の一番上で集はグランドの様子を見ていた。
広く、綺麗に整ったグランドは、古びた校舎に不釣り合いに見えてならなかった。
「…あっ、佐野?」
グランドの一角、鉄棒の近くに佐野らしき人物を見つけ、安心した。
将人や侑希と一緒にきょろきょろとあたりを見回している。
俺を探してんのかな?
そう思ったと同時に、ふ、と目が合い、佐野がうれしそうな顔を見せる。
将人の袖を引っ張りこちらを指さす。
将人はまったく…といった感じの表情を作り、侑希の頭をパコンと叩きこちらを指さした。
侑希は、安心したような顔で手を振ってきた。
思わず、安堵のため息をつく。
そして、手を振り返す。
だが突然、佐野が怪訝そうな顔をして、こちらに向かって走り出した。
どうしたんだ?
そう思うが早いか、急に後ろから抱きかかえられた。
「へ…?」
状況がうまくつかめず、まぬけな声が口をついてでる。
足が、プラプラと宙を舞い、抱き上げられている胸のあたりがわずかに苦しかった。
無理矢理、首をまわして後ろを見る。
坊主頭の男が目の前にいて、少なからず驚いた。
やっほー、と軽い感じのノリでその男が声をかけてきた。
「どうも、ラグビー部所属の萩捺芽というもんです。拓真の…じゃないっ、えーっと…部長命令で、君を拉致りに来ましたぁ!」
はぁっ?
全く意味がわからず、不機嫌極まりない声が出る。
だが、そんなこと気にした様子もなく、萩という男は続けた。
「ささっ、部室へお連れしましょ。」
「…おい、こら捺芽!俺の命令じゃないだろ!!」
軽くすごいことを言い出す萩の後ろから、さっきぶつかりかけた男が怒鳴っている。
二人は、命令した、してないで、言い争いを始めた。
っていうか、何なんですかあなたたち!?
すいません…。 完璧に暴走し始めてます。けど、こーいう感じて進んで行くので… よろしければ、お付き合いお願いします!




