prologue
出来損ない。
何回、その言葉を聞いただろうか。少なくとも10000回以上は聞いている。
その言葉通り、キル=ブラックイースは生まれつき出来損ないだ。
何をやっても常人以下。得意なことなど何もない。
出来損ないという肩書はキル=ブラックイースにピッタリな言葉であった。
「……おいおい。何の冗談だ? 確かに人に嫌われやすいが、殺されるような恨みを抱えた覚えはないぜ?」
「大抵、そういう場合は本人は覚えていないよ。もしくは、あなたにとってふとした出来事も誰かにとっては殺したくなるような出来事だったのかもしれない。そう考えるのが自然じゃないかな?」
「あぁ…なるほどな。次からはそう考えてみるか」
「次? 君に次なんてあるのかな?」
「さぁな」
そう呟いてキルは白い髪の少女によって、殺された。彼が生を受けてから17年と3ヵ月2日でキルはその人生に幕を下ろした。
……キルがただの出来損ないの常人だったら。
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真っ白な空間の中、ポツンと一人立っているキル。その姿は殺された時の姿で血まみれの制服を着てやつれた顔をしている。
そして、白い空間に大きくある黒いデジタル数字には101という数字がある。
「……あーあ。100回越えたら何かあると思ったらなんもねーのかよ。ったく、何のためにこんなことされてるのかまったくわかんねぇなぁ……」
そう呟いたキルの姿はいつの間にか血まみれの姿から普通の制服姿に戻っていた。キルは101という数字を見て再び呟く。
「さてと、次こそ何かあると信じて。行ってみますか」
101という数字に触れた瞬間、光が放たれキルを包み込む。やがて全身が光に包まれた頃、キルは意識を失っていた。
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「——ん。—ルくん。キルくん」
誰かに名前を呼ばれて、キルは目覚めた。起き上がり、照り付ける太陽の日差しに目を細めてキルは話しかけてきた少女を見る。
その少女は紛れもなく、先ほどキルを殺した白い髪の少女であった。
キルは動揺することもなく、少女の顔を見る。
「また屋上でサボってたの? もうお昼休みだよ?」
「……もうそんな時間なのか」
キルが起き上がると、手に紙パックのジュースとパンを持った少女はキルの隣に座り込む。
「お昼ご飯は?」
「んー、腹減ってねぇや」
「三食ちゃんと食べないと不健康だよ。買いに行く? お金なら貸してあげるよ」
「お母さんかお前は」
「……」
「なんだよ」
「また、お前呼ばわり? ちゃんと名前で呼んでって前も言ったと思うけど」
「はいはい、ノアこれでいいのか? それともちゃん付けでもすればいいのか?」
「それでも私は構わないよ」
「俺は勘弁だ」
何気ない会話を繰り広げているキルと少女。
しかし、キルは知っている。
これから1か月後。
キルは少女——ノア=ワールドエンドに殺されるのだ。
何故、キルはそれを知っているのか。
キルは死ぬたびに過去に戻る能力を所持しているからだ。