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彼女の望み

 その話を聞いたときは驚きました。父が経費削減とためと指示したことは、安全を損なうことだったのですから。

 わたくしは慌ててその場に向かいました。幸い、まだ工事中ですので、今ならまだ修正は間に合うはずでしたから。


 ……すでに手遅れだったのは、わたくし自身が事故に遭ってから分かったことでしたが。



 そうして判明した事実。わたくしが倉敷の父母の子ではなかったということ。

 意識が戻ったとき、すでにわたくしが倉敷ではなくなっていたということ。

 行き場を失ったということ。

 そして、なによりも。あの方との婚約もなくたっていたということ……。


 最初は仕事関係で、有利になることを利用できると、受けた婚約でした。

 ですが、和人さんは、確かにわたくしを愛して大切にしてくださいました。

 わたくしが和人さんに想いを返すようになるのは、すぐのことでした。


 正直、両親に愛された覚えはありません。ですが、会社関係で関わった方々には、可愛がられていたのを自覚しております。わたくし自身も皆様を尊敬させていただいておりましたから。

 ですが、利害関係抜きで、本当の意味で愛されているという実感は、なによりの甘美なものでした。

 ……そう、わたくし自身のすべてを、あのかたに捧げてしまったくらいに。


 事故に遭い、すべてを失い、わたくしは自分を失っておりました。

 体に残る傷は、うかれたわたくし自身に与えられた罰なのだろうとすらおもえました。


 その時でした。御園様がわたくしをお見舞いに来たくださり、養子として引き取ってくださるとおっしゃられたのは。

 そうしてもうひとつ、わたくしが失ったと思っておりました、和人さんも、わたくしをお見舞いに来てくださったのです。

 そこで、知らされた事実。わたくしと和人さんの婚約は継続のまま。倉敷ではなく、御園から嫁ぐことになるということ。

 そして、これはわたくしも気がついておりませんでしたけど、わたくしが和人さんの子を身ごもっていたという事実。


 喜びと、幸福で、どうにかなってしまいそうでした。


「響華はなにも心配することはないよ。すべては僕が終わらせるから」

「なにをなさるのですか?」

「大丈夫だから」


 和人さんはなにも教えてはくれませんでしたけれど、なにをなさろうとしているのかの予想はつきます。

 それがいつになるかも、検討はつきます。


 幸い、高校卒業に必要な分の単位は取り終えておりましたし、成績にも問題はございません。大学受験は来年でもよろしいでしょう。

 今はただ、時が来るまでゆっくりと体を休めることにいたしました。

事故に遭った時期は、1月上旬だったという設定です。

この時期に清香が転入したのは、多少なりとも和人の好感度を得ようとしての事です。

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