あたしが得たもの
事故でパパとママが死んだ。
だけど、パパとママだと思っていた人たちとあたしの血は繋がってなくって、本当のパパとママができた。
もとの、パパとママって思ってた人たちは綺麗な人だったけど、本当のパパはカッコいい人で、ママはかわいい人だった。
そして、あたしはママとそっくりだったのが、すっごく嬉しかった。
もとのパパとママが死んじゃったのは悲しいけど、それよりも本当のパパとママと一緒にいる方が楽しかった。
パパもママもあたしを怒らないし、すっごく優しい!
欲しいものはくれるし、好きなこともできる。そうして、あたしはパパに言われて、新しい高校に転入した。
そこにいたのは、お金持ちの家の子たち。そのなかでも一番お金持ちでカッコいい人がいた。
園部和人くん。パパが言っていた、あたしの婚約者って人。
「あの、園部和人くん、ですよね? あたし、倉敷清香って言います。和人くんの婚約者になります。よろしくね!」
ざわっと周りがざわめいたのが聞こえた。当然かな。こんなカッコいい人の婚約者ってなれば、注目されて当然だよね!
「……」
和人くんはなにも言わずに、席を立つとどっか行った。あたしは追いかけようとしたんだけれど、女の子達がジャマをする。
「あなた、ご自分が何を言っているのかお分かりなのですか?」
この子こそ何を言ってるのかな? あたしは事実を言っただけなのに。
「何の話? あたしは忙しいから後にして」
早く和人くん追いかけないと!
「……そうですか。わかりましたわ」
「そうね。あなたが園部様に相応しくないことが、よくわかりましたわ」
「だよな。やっぱり響華様じゃないと!」
女の子だけじゃなくって、男の子まで騒ぎ出す。
ふさわしくないって、どういうことよ!
……そっか。あたしに嫉妬してるのね。キョウカってのが誰かは知らないけど、あたしよりかわいいわけもないし。
「どうでもいいけど、あたし急ぐから!」
「いまから追っても無駄ですわ。園部様はこれから響華様との逢瀬に向かわれたのですもの」
「……誰よそれ?」
「園部様の愛されておられる方ですわ」
「そう。あなたと違い、あの方は本当に美しく、お優しく、尊敬できる方ですもの」
なに、クラスの人たち、変になってる?
「とにかく! あたしは行くから!」
慌てて逃げ出して、学校を出る。待っていたパパの運転する車にのってうちに帰る。
「清香、和人くんには会えたかい?」
「うん……」
「そうか。それじゃ、次のパーティーでエスコートしてもらわないとね」
「うん。そうよね!」
あの人たちが何をいってるのか知らないけど、あたしの婚約者なのは絶対だもの。問題はなにもないわよね!
彼女は自分の都合がいいことしか認めようとはしません。