上位の会話
ある競技で世界一位の男が、余裕綽々と言った。
「ああ、追われる身も辛いものだ」
その言葉を側で聞いていた世界二位の男が言う。
「安心してください。あなたの座はもうじき私が頂きますよ」
「楽しみにしているよ」
そんな二人のやり取りに、世界三位の男が加わる。
「お二人さん、俺の存在を忘れてもらっては困る。虎視眈々とあんたらの座を狙っているんだぜ」
そこに世界七十億位の男がやってきて言った。
「皆さんの苦しみ、お察しします」
しかし七十億位の男の言葉に、世界一位の男は、
「おいおい、勘弁してくれ。あなたに何がわかるのだ」
とあきれ、世界二位と三位の男も、
「申し訳ないですが、あなたに言う権利は…」
「そうだ、お前のような底辺の順位の奴が偉そうに意見するな」
と、世界七十億位である男を見下した。だが世界七十億位の男に怒る様子などは微塵もない。
「やっと見つけたぞ。今度こそはお前に勝ってみせる」
と、その場に突然現れた宇宙二位の男は、世界一位、二位、三位の男達の存在などには意にも介さず、世界七十億位の男に宣言した。世界では七十億位であり、宇宙では一位の男は、四人の男達を一瞥すると、勝ち誇ったように言った。
「先に世界一になっても良かったのだけどね…。ああ、追われる身も辛いものだ」