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ヒロインは英雄をお断りします  作者: 月咲シン
2/4

♯2.神様王様あなたは鬼です悪魔です(泣)

無機質な施錠音と重厚な扉を背にして、冷や汗が流れる。

だというのにあたしのこの危機感に同調してきれる同級生は0だった。

なぜならここは謁見の間で、異様で圧巻で目を奪われる光景がそこにあったから。


左の壁際では、ローブに身を包んで杖を掲げる魔法使いが六名。

右の壁際では、甲冑に身を覆って斧槍を掲げる騎士が六名。

来訪者に対するあたしたちに礼式で迎え、その奥の左右に屹立する武官と文官が目礼で応え、佇んでいる。


そして玉座へと続く先で、この城の、いやこの国の頂点となる冠を被った威厳のある人物があたし達と俯瞰するように座っていた。


「――よく来てくれた勇者たちよ、そなたたちを歓迎する。我はオルトレア国王、ハーウッド・ロウ・グレイスト・アイン・オルトレアである」


貫禄ある声量で同級生たちの心を鷲掴みにするような圧倒感。威圧するわけでもないのに、まるで巌のような迫力がおじーちゃんにはあった。


さすがは国の支配者。あたしから言わせれば管理者みたいなものだが、お偉いさんのトップは違うねー。人としてのカリスマってもんが段ちだ。


まるでうちのお祖父様のような濃い迫力に、圧倒されるように同級生たちは萎縮して立ち尽くしていた。


……よくそれで勇者を名乗ろうとしたものだと、知らずため息がこぼれる。


「お主たちに来てもらったのは他でもない。このオルトレア王国を脅かす近隣の敵国や、増発する魔物の驚異から救ってほしいのだ」


その発言に頭がついてこれたのは、はたして何人いたのだろうね?

軽く周囲を見回してみても、ポカーンと口を開けて理解不明な状況に陥っているものが大多数だ。


あたしが気づいた範囲でことの状況に深刻な表情を浮かべているのは、五人だけ。


クラス委員長の本岡透。

クラス副委員長の清水絵梨香しみず・えりか

生徒会長の宮本俊みやもと・すぐる

生徒会役員の有岡智美ありおか・ともみ

バスケットボール部副部長の柳拓馬やなぎ・たくま


さすがに優秀な生徒たちですこと。教師やクラスメイト達から役員等に選ばれるだけのことはある。

本岡くんより早く頭の整理の追いついた宮本くんが、表情を曇らせながら一歩前に出て王に尋ねた。


「あの、まず第一にここはどこなんですか? その辺りの説明を先にお願いしたいのですが……」

「おぉ、そうだな。混乱するのも無理はない。その辺りから詳しく話そう」


その後、あらかじめ決められていた台本を読むかのように、淡々とあたしたちがここに召喚された理由を王様は話し出した。


いわく、この大陸には三つの大国があり、三つ巴でにらみ合っている状態であること。

軍は国堺に配置しており、万年兵力不足であること。また、徴兵しようにも農奴は兵糧不足を招き、冒険者や傭兵も魔物討伐で追われ、国内にはすでに敵国の密偵などの危険も孕んでいること。

自国の被害がいかに甚大で、民がどれだけ苦に虐げられているかなど。無力を嘆き、正義を訴え、悪事に働く敵国や魔物の侵略から手を貸して欲しいとのこと。


……あたしにいわせればどいつも被害者ツラしているだけで、他所も同じようなこと考えているんじゃなかろうかと思うんだけどねー。


一通りこの国の悲劇な現状を話し終えた王様に、なんとか現状を理解した宮本くんが、本岡くんと困ったかのような目配りをして言いにくそうに口を開いた。


「申し訳ありませんが……いきなり呼ばれて敵国や魔物をどうにかしてほしいと言われても、僕たちにそんな戦う術などありません」

「ふむ、それは大丈夫だ。勇者たちはこの世界の住人よりも強い能力を擁し、恩恵を宿すことができる。頭の中と口で同時に《生命樹の窓ライフツリー》と唱えてみよ。自らの能力ステータスを見ることができるはずだ」

「《生命樹の窓ライフツリー》?」


その王様の言葉に、同級生達は半信半疑で空中に《生命樹の窓》と唱える。

雑念が拭えずに何度か失敗するものもいたが、成功した者は表情で異変を読み取れた。

どうも不可視な《窓》のようなので他者からは覗き見ることはできないようだが、可視モードに念じれば他者からも拝見できるらしい。


とりあえずあたしも周りに習って、ひとまず念じながら唱えてみることにした。


「《生命樹の窓ライフツリー》」


そう唱えると半透明な画面が目の前に映し出された。

マジかー。どうやってこのディスプレイ映しているんだろうなー。3D映像かなと疑いながら、項目に目を向ける。



―――――――――――――――――


氏名:白鷲雲雀しろわし・ひばり

Lv.1

年齢:14

性別:女性

種族:人種ヒューマン

本職業:-

副職種:-


身体能力ステータス

STR(筋力):I/27

VIT(耐久):I/19

AGI(敏捷):I/34

DEX(器用):I/86

POW(魔力):G/280


潜在能力パッシブスキル

鷲の目:H/185

千里眼:H/158

第六感:I/62


能動能力アクティブスキル

弓術:H/166

刀術:I/95

槍術:I/89

体術:I/55


技能力スキル

集中:H/147

命中:H/110

恐怖耐性:I/95

疲労耐性:I/74

忍耐:I/59

料理:I/50

疾走:I/16


―――――――――――――――――



……。


…………?


………………ん~?? これってどうなのだろうか? よくわからん。


〈ステータス〉? 〈スキル〉? うーん、あたしのするスマホのゲームはモノリス系ばかりで、こういったゲームはしたことないからよくわかんないなぁ~。

弓術とかは本家で習ったというより無理矢理叩き込まれたようなものだから分かるけど、正直思い出したくもない思い出ね……。


あれ? でも魔力やけに高くね? こんなもんなの? ていうか魔力ってなにさね?


周りがどうなのか気になるが、なにか通知簿を見られるみたいで恥ずかしい。

男子連中が何人かが見せ合いっこして能力の上下を見比べているが、それほど差はないようだ。体育の授業や部活で得られる〈スキル〉もあるだろーしね。

だいたい耳に入る範囲で20~40の間。男子の能力でそれなら、あたしもまあまあじゃないのだろーか? おおよそ100単位でランクも変わってるし。


いやでも、さすがにLv.1で魔力280はちょっと多いような気がする……。

なんだろうこの嫌な予感は……。まあ、とりあえず周囲には伏せておくとしますかね……。


あとどうやら〈クローズ〉で閉じれるようなので、とりあえず不可視のまま消しておく。

王様―、姫さまー、これについての詳しい説明プリーズ。


「さて、《生命樹の窓》については見てもらったとおりだ。後で詳しく調査させてもらうとするが、次に恩恵の話に入ろうか。――メアリーよ」

「はい、お父様」


そう言うとあたし達を案内してきたお姫様――メアリーさんが右手を胸に添えて了解の意を示し、左側に佇んでいた魔法使いに目で合図を出す。


すると前から順番に魔法使いたちは生徒たちの前で一礼し、なにやら小瓶を懐から取り出してその中の虹色の液体に筆先を浸け、


「左のお手を」


そう言ってなにがなんだか分からずに素直に左手を差し出した生徒の左手の甲に、なにから紋章のようなモノを描き始めた。

どこかくすぐったそうに顔を緩める生徒に対し、魔法使いたちの表情は真剣なものだ。アートにしてもずいぶんと凝ったイメージがする……。


……服従印とか、奴隷印とか、そういうんじゃないでしょうね……?


内心で危惧しながらスケープゴートと化すかもしれない六人の生徒を傍目に、脱出の糸口を探して周囲を見回すが結果がよろしくなかった。


そういえば鍵、閉められたんだよね? まさかこういう展開だからとか……?

どうする? 弓なら多少の心得はあるが、近くの兵士から武器を盗んで抵抗しようにも八方塞だ。檻の中に囚われた獣どころか、虫かごに閉じ込められた昆虫以下だぞこれは。

ま、まあ本当にやばい系の刻印だとしたら効率が悪すぎるし、一気に疑われる前に全員に施すよね? 暴れられても面倒だろうし?


そんなことを考えた矢先、六人の生徒の左手が次々に発光し、描かれた紋章がスウーと手の甲に吸い込まれていった。

発行する色はバラバラだったが、同時、新たに浮かび上がる刺青のような紋様に、その上をなぞるようなローマ数字。

それが完全に浮かび上がると光は消沈し、やがて消えていった。


「な、なにこれ……?」


六人の内の一人、池田祐太いけだ・ゆうたは左手の甲に描かれた紋様と数字に疑問符を浮かべる。


ナスのような形に斜めの串を二本刺したような緑の紋様に、〈ⅩⅣ(14)〉のローマ数字。それが何を意味するのかは不明だ。


見れば他の五名にも池田くんと同様に紋様と数字が描かれているが、その誰もが図はバラバラだ。

紋様は丸いものがあれば四角や三角めいたものもあり、数字は低いほうから〈ⅩⅣ(14)〉~〈ⅩⅩⅤ(35)〉。


高いほうがいいのか低いほうがいいのか分からないが、数字が高いほうが紋様は複雑そうに見える。


「それは〈トランスコア〉と言います。土地によっては〈神宿り〉や〈憑霊〉とも訳しますが、勇者様に天からご恩恵が授かった洗礼の証です」


みんなの疑問を雪解けさせるようなほほ笑みを浮かべて、メアリーさんは解説する。


いわく形のない精霊などの力と能力を宿し、器に定着させ、自身を強化する術式らしい。

施術の終わった者が《生命樹の窓》を開き、みなが一様に目を丸めて上昇した能力補正に驚いていた。


眷霊憑依トランスコア〉。


高位なモノほど数字も多く、低位なほど数字も低い。またそれに伴って紋様も複雑だそうだ。

とはいえ、この術式を施す特殊な液体は高価なものらしく、貴族などしか用いられないそうだ。

ざっと一回の施術料で金貨1枚。家族持ちの平民の半月分の生活費に至るそうだ。


うん、その分お金にしてあたしにくださいな。面倒な力なんていりませんでー。


そう言ってやりたいところだ。三十二人分の施術料で金貨30枚分。こんな子供たちに国費使いすぎじゃないんですかねー?


ともあれ、これにもきちんと理由があるらしい。

どうもあたしたち地球人? 異世界人? は魔力というものが高いらしい。


で、この〈トランスコア〉、どうも魔力の高い者の方が高位のモノが宿りやすいそうで。


一例で上げるとこの国の平均的な貴族の〈トランスコア〉は〈Ⅹ(10)〉ぐらいらしい。

《生命樹の窓》の能力も平均は10のようなので、やはり全体的に成人男性よりもあたしたちの方が上ということになる。


なるほどね。そう考えれば六人とも平均以上だ、ってもう次の六人も解説中に終わったようだが、それでも池田くんよりは高い。あードンマイ?


しっかし、まーたファンタジー要素な展開なことで。自覚していない魔力とかいわれても困るんだけどねー。

日常で使うことはないので知らず蓄積されているだけかもしれないけど、なにはともあれそういった理由で強い兵士を育成したいとのこと。

つまり成長率の差を重視したということだ。異世界人を育てたほうが戦闘経験のない者でも、伸びが早く強靭になるからと。


……なんの育成バトルゲームだこれ。痛いのは嫌だっツーの。


ゲームのチェス盤じゃねーんだぞ。ポーンやビショップ扱いか?

しかも召喚の条件が『若く、生命力と魔力に溢れ、集団で一空間に密集している』とのこと。


それがたまたま、天文学的な確率で座標があたしたちのクラスに当てはまってしまったようで。


……あはー。なるほど事情はわかったよクソったれ。でも納得はできないぞこんなの。

ただでさえ受験で忙しいってーのに、こんな茶番に付き合いきれません。バイトもあるので今すぐ帰してくれませんかねえ?


「あの、王様。いくらその恩恵が宿ったとは言っても、わたしたちは戦争もない平和な場所で育ったため、戦い方など知りません。それに家族が心配して待っているんです。だから帰してくれませんか?」


グッジョブ。さすが副委員長。清水さんの訴えかけは過半数の意見でもあった。

この事態が段々と現実味が帯びてきているのは理解し始めた。故にその危険性も。


ならばどうしてファンタジーな力が宿ったところで戦わなければならない? 国が敵から脅かされるなら、自国の兵力でなんとかするのが筋ではないだろうか。


いくらあたしたちの方が有望株とは言え、この三十人分の施術量を有望な兵士の鍛錬や武具に与えるべきだと思うんだけど……?


「大丈夫だ。いますぐどうこうせよとは言わん。能力自体はすでに立派なものなのだ。下地は十分に養えておる。我が軍と修練を積み、万全の状態で送り出そう」

「で、ですけど――!」

「それに召喚の儀は一年後の魔力の満ちる満月の日にしかできん。褒美を与えて召喚される寸前に戻すゆえ、ぜひ王国の危機に協力してほしい」

「そ、そんな……」


は? ふざけてんのかこのジジイ? なに一方通行の命令口調で言ってくれてるの? その偉そうな髯引っこ抜くぞ?


や、ちょっとそれは勝手すぎるんじゃないかと、一言遠まわしに抗議でも言ってやろうと我慢の限界を迎えようとした時、


「べつにいーじゃん副委員長。褒美までもらえて元の時間に戻してくれるつーんだから、少しぐらい協力してもさ」


そう言ったのは左手の甲を眺めながらニヤニヤと笑う、バレー部で長身の男子生徒の宮崎晴斗みやざき・はると


正気かとあたしも耳を伺うものの、その左手の甲に描かれた〈ⅩⅩⅤ(35)〉という〈トランスコア〉に事情を察する。


つまりこいつは自分の〈スコア〉が高いことに自信に持ち、ゲーム感覚で戦争を楽しもうとしているのだ。


愚行極まりなく腹立たしくさえなる。現状を正しく理解していないらしい。だというのに……


「そうそう、困っているみたいだしさー。助けてやろうぜー清水さん」

「せっかくここまでしてもらったんだし、なにもせずに帰るのもあれだよなー」

「つっまんねーつーか。もしかして怖いのー? 勉強だけが取り柄で、人助けは苦手なわけー?」


ははははは、と笑い声が響き、感化されるように広まっていく。


最初は片手で数えるほどの賛成派が、洗礼後には半数以上を占めていた。

力に魅せられた者の陶酔とした目だ。まるで昔の誰かさんを見ているかのように。ああ、虫酸が走る。


全員の〈トランスコア〉が平均以上であり、また元の世界に召喚前に戻れて、褒美までもらえる。


そんなメリットばかりに目が眩み、本質を理解しようとしていない。

どうしてこんなことになるのかと疑問に思うのも数秒、答えはとても簡単だった。


中学三年生の秋。部活も引退し、受験真っ盛りの最中――。


つまりは逃避だ。戻りたくないのだ元の世界に。ストレス解消による娯楽に飢えているのだ。

まだ14、15の子供。二次性徴を迎えたとは言え、成人未満の精神力はまだまだ未熟で幼いものだった。


どうしたものか。正直、あたしは同級生がどうなろうと知ったことではないが、被害が自分に起こるのは避けたかった。


生き死に以前に受験生としても、せっかく頭に詰め込んだ問題集も一年後には綺麗さっぱり忘れている自信がある。また一から覚え直すのは面倒だから嫌だしなー。


「お手を」


うんうんと唸って試行錯誤している内に、どうやら最終組のあたしの番まで回ってきていたようだ。


っていうか早いなこの人、前から順当に施術していたとしても、二人分ぐらい早くあたしのところに来ている。


そうではなければ出入口の離れた場所にいるあたしの所まではもう少し時間がかかるはずなのだ。優秀なのかね? 仕事熱心なことですね。まあ相手側からしたら当然のことでしょーが。


しかし素直に得体の知れないものをされるのは抵抗があるといいますかなんといいますか……ねえ?


そうやってあたしが渋っていると、とうとう最後のグループである前に挙げた五人にまで回ってきた。これでもう施術していないのはあたしたちだけだ。


もうやったことでいいんじゃない? と目を訴えかけると、ローブで素顔の隠れた魔法使いさんはやや苛立った様子で二度目の催促をした。


「お手」


おい、犬かあたしは?


というか今気づいたけど、この人もそんなにあたしたちと年齢変わらないんじゃなかろうか? 声質からしても十代っぽいし? 背丈もあたしと余り変わらないチビっぽいし? 能力は優秀でも性格に何有りってところかな?

 

しかしこうしていても埒が明かないので、不承不承といった具合に左手に施術を受ける。


まあ、ここまできたら断れないだろーし。強くなるんならいっかと半ばヤケクソ気味な思考で、はいよ、と犬のように左手を差し出す。

で、施術開始なわけだけど、あー、たしかにこれはくすぐったいわー。筆先で撫でられれば当然のことでしょうがねー。


数秒ほどで虹色の紋章が描き終わり、数瞬後、あたしの左手の甲から紅黒い光が発光――



『――ミツケタ――』



ぞわりと、背を撫でるような悪寒と寒気。ってちょっと待って。なにか嫌な予感がする!


慌てて回れ右して、ポケットに手を突っ込んで光源を抑えようとする。が、そのあたしの態度に担当した術師さんが眉を潜めて怪訝な表情を浮かべる。

あ、やば。どう誤魔化したものかと困惑すると、背後からどっと沸き立つような歓声が上がった。


「おおッー! すっげー!! 有岡さん〈トランスコア〉〈LX(60)〉ってマジかよ!」

「なっ!? 柳お前〈LV(55)〉!? はあ!? どうなってんだそりゃあ!?」

「委員長〈LXV(65)〉―!? すっげぇ! うおお! さっすがー!」


首だけ動かして歓声のする方向に目を向けると、名前を呼ばれた三名が周囲から騒ぎ立てられていた。


張本人はどこか呆然とした表情を浮かべるものの、みなに急かされるように〈生命樹の窓〉を開き、瞠目している。


無理もない。この世界の住人の平均を、五倍~七倍上回っているのだ。熱にうなされた様に現実味が湧かないのだろう。


そして騒ぎはピークを迎えるように、残る二人で爆発した。


「し、清水さん――〈LXX(70)〉!? すごい! 副委員長すごい!!」


戦うことを拒んでいた清水さんが、自分の左手を信じられないとばかりに凝視し、


「か、か、かか、会長――き、〈XC(90)〉ッ!!? うおぉぉぉー!? なんだそりゃぁー!! 凄すぎるーっ!!」


周囲から会長の飛び抜けた〈トランスコア〉に喝采がおき、謁見の間は騒然となった。

同級生だけでなく、この世界の住人も驚愕している。信じられん、だの。さすがは勇者様だ、だの。皆が一様に会長を称えていた。


〈XC(90)〉かー。そりゃあ凄いわー。あたしでもテンション上がってくるほどにね。さすがは会長。チートだね!


その調子で一年間、あたしを含めてみんなを守ってちょーだいね! ああ、ホント、なんだか希望が出てきたなー。よかったよかった。


あ、担当さんも会長たち高スペックぶりに目を奪われている。まあ当然だね。ふふん、あたしたちの会長だしねー。なんかあたしまで誇らしげになってくる。


でもあんなに注目されるのはあたしはお断りかなー。期待されるのって、好意を寄せられるより嫌だし。吐き気がする。


んあ? あたしのほうも光が収まったみたい。熱みたいなのも引いていくなー。

うーん、〈ⅩⅩ(20)〉ぐらいあればあたしでも生きていけそうだろーし。期待していいのかな? 

ああ、でもなにかここでも嫌な予感がするから一桁だったりして……。 


よっし、担当さんや皆にバレないようにこっそりと拝見しますかね?


はい、サン・ニイ・イチ、ごかいちょーう!


「へ?」


つい間抜けな声が零れる。だがそれも無理のないことだろうか。


自分の手の甲には、数秒前にはなかった円形の尾を呑む赤黒い蛇の中に、双翼を茨で絡められた繊細な絵柄の紋様があり、


その上にローマ数字で浮かんでいる〈トランスコア〉は、あたしの想像の斜め上をぶっちぎっていくものだった。





〈CC(200)〉――って、どういうことさネ?





……。


…………?


………………んえぇぇぇーっ!?


驚きを声に出さずにすんだのは、奇跡に近い所業だった。

目の前の担当さんがあたしの動揺具合に不審に思い、会長から目を離してあたしの左手を見ようとして――


反射的にポケットに左手を隠した。


「あ、あは、あははー。い、いや~~に、にに……〈ⅩⅩ(20)〉でしたー。あ、あは、あはははー……」


無理やり笑顔を浮かべ、動揺を押し殺すあたしはきっと変に見えただろうが、会長たちに意識がいっているようで深く詮索はされずにそのまま戻っていった。


…………。


うおおおおー! なんじゃこりゅああああああ――!!?


慌ててあたしは〈生命樹の窓〉を唱え、能力の再確認を行った。



―――――――――――――――――


氏名:白鷲雲雀しろわし・ひばり

Lv.1

性別:女性

種族:人種ヒューマン

本職種:-

副職種:-

眷霊:皇蛇バジリスク/CC


身体能力ステータス NEW

STR(筋力):I/27→G/227

VIT(耐久):I/19→G/219

AGI(敏捷):I/34→G/234

DEX(器用):I/86→G/286

POW(魔力):G/280→E/480


潜在能力パッシブスキル

鷲の目:H/185

千里眼:H/158

第六感:I/62


能動能力アクティブスキル

弓術:H/166

刀術:I/95

槍術:I/89

体術:I/55


技能力スキル

集中:H/147

命中:H/110

恐怖耐性:I/95

疲労耐性:I/74

忍耐:I/59

料理:I/50

疾走:I/16


眷霊能力トランスキル NEW

石眼:I/1

鋼殻:I/1

怪力:I/1

修復:I/1


―――――――――――――――――


…………。


なんかぶっそうなの増えてるぅぅーーーーっ!!?


はあ!? 身体能力+200ってなに!? カンストするんじゃないのこれぇ!?

しかもぶっそうな〈トランスキル〉が四つも増えてるし! なんで!? どうして!? あたしこんなにいらないって!


もう呪いじゃんこれ! しかも蛇って白鷲家いえの天敵じゃなかったっけこれぇ!?


バレたらやばい! 戦争の道具決定じゃんこれぇ!? ああもう面倒事は嫌だって言ったのにーーー!!? 王様のバカーーーー!!!


あばばばば!!!

自由なキャラクターって、書いてて楽しいですねーw

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