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………トントン、ガチャ。
「おはよう、ユカちゃん」
金髪セミロ ングの美女が入ってきたのは、調度確認し終えた時だった。
この透き通るような空色の瞳をもった、若い美女は俺の母親である。
名前は、セイラ・グラザー。
見た目は女子高生で、母親には全くと言っていいほどみえない。
前世の俺の方が先輩という感じだがこれでも25歳。
むしろ母親というより姉と言ったほうがしっくりときてしまう。
「おはよーまま♪」
「あら、もう着替えたのね偉いわユカちゃん」
笑顔でほめてくれたのだが、何故か目が少し残念そうだ。
そんな目を向けられても、この境界線は譲れない。
だから、駄目だってな。
いい加減諦めてくれ母さんよ。
グゥ~~!
俺の御腹の虫が鳴いちまった。
何故今鳴く……確かに話を替えるいいタイミングだが、俺は食いしん坊なキャラになるつもりはないんだ。
「………ぅう」
頬を赤らめ、俯いてしまう。
どうも、体につられてしまっているのか……こういった態度がでてしまう。
俺は精神まで女になるつもりはない、これはどうにかせんといかん精神も鍛えないといかんな。
一人決意を固めていると、母さんから微笑ましげな視線を感じた。
「っん?」
「ふふふ♪ お顔を洗ってから、朝御飯にしましょ う」
「うん」
食堂には、既に父さんと兄がいた。
「ユカちゃんおはよう」
「おはようユカ」
「おはようパパ、くろにぃ」
俺は兄の隣にある、専用の椅子をよいしょと登り座る。
座り終えた時には、皆から温かい視線が集まり、 なんだか非常にくすぐったい。
くそっ、早く成長しないかな本当に。
このままだと、精神的にもたないくすぐったすぎる。
そんな俺を、惚気た表情で眺めている銀髪のイケメンは、レオカード・グラザー。
不良のような見た目だが、真面目に軍隊で働く俺の父親だ。
26歳とまだ若いが、軍隊ではなかなかいい役職についているらしい。
だから、家は貴族ではないがそれなりに裕福な生活をしている。
因みに母とは学院の同級生で父さんの一目惚れらしい。
そして、隣にいるのは四つ上の兄“クロウ・グラザー”。
兄の方をみると優しく微笑み、手を俺の頭の上に優しく乗せ 、ゆっくりと撫でてくる。
………何故撫でるんだ、ええいやめろ。別に撫でられても嬉しくないんだからな。
と思いつつ無抵抗に撫でられ続ける。
今の俺は幼い妹だ、抵抗するのは変だしな仕方なく撫でられてやっている。
別に撫でられるのが気持ちいとかそんなんじゃないからな。
目が細くなってるのは、眠いからだ、ほんとだからな。
父親から受け継いだ銀髪に母親似の端正な顔立ち。
例えるならば、絵本の中の王子様ってところだな。
きっと将来は、女性がほっとかないな。
マジで羨ましい、前世の俺が不憫に思えちまう。
「…………朝御飯の準備するから待っててね♪」
母さんはそう言うと、鼻唄混じりでキッチンに向かう。
私たちもそれぞれ、返事をした。
目の前に朝御飯が置かれ、母さんも椅子に座る。
「「いただきます!!」」
「いちゃっ……ぅう~~~」
痛ってぇ、舌噛んだ!!
滅茶苦茶痛い、思わず涙目になる。
何でみんなそんな笑顔をむけてるんだよ。
凄い痛いんだぞ、血でてるんだぞ、心配をしてくれ。
そして兄よ、何故また撫でる!
ええい!やめろ、それどころではないんだ!
舌千切れてないか、大丈夫なのか?!
触ってみる……とりあえず千切れてはいないようだ。
ただ、鉄の味が口のなかに広がる。
「大丈夫、ユカちゃん?
とりあえずお口ぐちゅぐちゅしにいこうか、ね?」
母さんが席をたち、俺を抱き寄せる。
あなただけだよ、俺を心配してくれるのは。
俺は母さんの豊満な胸に飛び込む。
けっしてやましいきもちなどはこれっぽっちもないからな。
「ぐちゅぐちゅっっぺ…」
洗い場で口をゆすぐ。
案の定透明だった水が、赤くなっていた。
「じゃあ口をあーんして、ユカちゃん」
何回かうがいをし、母さんの方をむき口を大きくあける。
「あ~~~~~~」
「ちょぅとそのままでいてね――《治癒》」
母さんは人指し指一本をたて、治癒そう唱えた。
すると、指先に淡い光の粒子が集まり、次第に一つの大きな光の塊(ビー玉より少し大きめ)となる。
その光の塊が俺の口のなかに入ってきた。
暖かくて冷たい、何か変な感じがする。
その感覚が消えると、俺の舌にあったジンジンも消えてなくなった。
「よし、これで大丈夫よ♪」
「ありがとーママ♪」
鏡で傷が無くなってるのを確認し、母さんに満面の笑みをみせる。
母さんは嬉しそうに頬にてを当てる。
そのしぐさは母さんが気分が良い時にやる癖だ。
その姿をみるのは俺も嬉しい。
家族っていいなぁ。
俺はそんな思いを噛み締める。
……………ああ、言い忘れていた。
さっきのは魔術というものらしい。
この世界には、魔術が存在しているのだ。
そう、俺が転生したのは異世界らしい。
これを知ったときはテンションがあがった。
幼い頃から、練習すればチートになれるのではと思い、練習しようとしたのだが。
どうやら、まだ使えないらしい。
魔術回路というとのがまだ無いとのこと。
俺は落胆した………が、それも今日までだ。
俺は今日、魔術回路を手に入れに出掛けるのだ。
別に魔術回路を買いに行くって訳じゃない……ん?いや、あながち間違ってはないかもな。
だって教会でお布施てきな物を渡し、神託のようなモノを受け魔術回路を手にいれるのだから。
教会から魔術回路を買うと言ってもいいだろう。
ああ、楽しみだ教会に行くのはお昼頃だ。
早くお昼になってくれ………!
朝食を終え、父と兄は支度をし始めた。
二人はそれぞれ、仕事と学校に行く時間だ。
俺は母と一緒に玄関までいく。
「……くろにぃ♪」
魔術回路を手に入れるということで興奮していたのか、靴を履いていた兄の背中に抱きついてしまった。
兄は大して驚きもせず、幼児とはいえいきなり抱きつかれればよろめきくらいはするが、全くよろめきもしなかった。
兄は昔から父に剣術や体術等を習っているので、引き締まった身体をしている。
だから、小さな俺がいきなり飛びついても倒れたりすることはないので、安心して飛び付けるのだ、ふふん凄いだろ♪
って何を嬉しそうにしてるんだ!?
男が男に抱きつくなど需要はないぞ!
まして兄弟で………いや、今の俺は妹か、ならいいのか?
いや、俺は精神まで女になるつもりは………。
「元気だな、ユカ!」
「……早く帰ってきてね」
そして、俺に魔術の事を教えてくれよ兄さんよ。
両親は俺にはまだ早いし危ないといって教えてくれないだろう。
だから、学校で習い始めた兄さんが頼りなんだからな。
「なるべくね……だから、良い子で待ってろよ」
そう言うと、頭を撫でてくれた。
兄は、どうやら頭を撫でるのが大好きみたいだ。
まぁ、いいだろう教えてもらえるならやすいものだしな。
「えへへぇ~♪」
最大級の笑みもプレゼントしてやる。
まあ、嫌いではないしな。
「………あっ」
そろそろ行くみたいで、兄の手が離れた。
いや、名残惜しいとか思ってないが、いきなり離れたんで声が出てしまっただけなのだ。
丁度、両親のいってきますのキスも終わったみたいだ。
ん?おれが抱きついた時くらいからしてたぞ?
「いってらっしゃい、くろ兄、パパ」
「二人とも気を付けてね」
「ああ行ってくる、ユカも頑張るんだぞ」
「うん♪」
「母さんユカ、いってきます」
二人は、呼んでいた馬車に乗り込み出発した。
さて、俺達も準備しますか。