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……………チュンチュン。
睡んでいた意識がゆるりと浮上し、目が覚める。
どうやら小鳥の囀りで起きたようだ。
上半身をゆっくりと起き上がらせ、腕と背筋を伸ばす。
「んっ……ぁあっ!」
眩いほどの陽射しが、暖かくて気持ちいい。
ようやく暖かくなってきた。
こないだまで朝はひえきっていて、布団から出られなかったしね。
清々しい朝に、思わずほほが緩む。
「~~~~~~♪」
いつもなら至福の二度寝を貪るのだが……生憎、今日は予定がある。
だから二度寝をするわけにはいかない。
………でも、本当に絶好の二度寝日和だなぁ。
「……よし」
まだ名残惜しいが、気合いをいれベッドから出る。
そして、既に用意されている服に手を伸ばす。
淡い水色のワンピース………確かに可愛い。
可愛いけども俺が着るには、まだ抵抗を感じる。
それでも、着るしかないんだけども…………。
「―――――はぁ」
着ている寝間着を脱ぎ、ワンピースに腕を通す。
最初は一人で着替えられず、母親の着せ替え人形になっていたのだが。
最近ようやく一人で着替えられるようになった。
これも日頃の努力の賜物である。
何故か母親は名残惜しそうな目をしていたのだが、ここは絶対譲れない。
「……んっしょ。できました」
鏡の所まで行き、確かめる。
…………………………。
「………やっぱり」
鏡にうつるのは、背中まで伸びた薄桜の様な綺麗な髪と、透き通った青い瞳、白磁のような白い肌もった、天使の様な4歳の幼女。
ユカ・グラザー。
それがこの天使の名前だ。
試しにと両頬をつまみ、伸ばしてみた。
………もにゅっ。
鏡の中の天使も同じ様に伸ばしている。
「……ひはふひゃい」
ってことは夢?…………………じゃないよな。
痛くないのは、染み一つないぷにぷにする超柔肌のおかげだ。
これが今世の俺の姿だと改めて認識した。
溜め息が微かに漏れる。
別にコンプレックスを抱いてる訳ではない、少し逃避をしただけ。
俺には前世の記憶がある。
つまり輪廻転生、生まれ変わりという奴だ。
前世の名前は闇無深雪。
女みたいな名前だが、生粋の日本男児の高校生だ。
俺の名前のことでバカにしたやつは、きっちり話し合いをさせてもらい理解してもらえた。
そう俺は男だったんだ、けして女ではなかった。
まあ、疑うのなら日本人ってとこだろうな。
俺には親がいない。
死別ってことではなく、赤子の頃に孤児院の前にネックレスとともに捨てられていた。
だから、見た目は完全に黒髪黒目の日本人だったが、確実とは言えないって感じかな。
まあ孤児として育ったが、それなりに幸せな人生ではあった。
普通に親友もいたし、彼女も……いた時期もありました 。
ただ、生まれ変わったのなら、俺は死んだのだと思う。
しかし、いつどのように死んだのか? 気がついたときには異世界で赤ちゃんになっていた。
事故にでもあったのだろうな。
「…………まぁそれはもういいか」
そろそろ、これが夢ではなく現実だと認めないといけない。
だから、今日から新しい人生を生きることにする。
俺が決意したのは、転生してから4年がたっていた頃だった。