第七機 世界はネジで回ってる
とりあえずこれで貯めておいた分はおしまいです。
なるべく早く投稿したいと思います!
…………う、うん……
「お待たせー!」
レナが地下から戻ってきた。手には三枚ほどチップが握られている。
「それが『強化属性』のチップか?」
「そうだよ!『ストロングチップ』に『ディフェンドチップ』、あと普段でも使える『マルチチップ』!」
レナがいうストロングチップには、ムキムキの腕でS字をかたどった刻印が刻まれており、(あ、ストロングのSか)ディフェンドチップにはDの形の盾が刻まれていた。(ディフェンドのD)マルチチップはそのまま『M』とだけ刻まれている。(マルチのM)
「どれも面白そうだな、後で試すか」
「あとこれを腰に着けて!」
「………ん、なんだこれ」
俺がレナにもらったのは、ベルトの両サイドに四角いポーチのような物が着いた物だった。中を開けると1センチ位の間隔で区切られており、ひとつひとつにアルファベットのシールが貼られている。
「なんだこれ?」
「『チップホルダー』だよ!ポケットに適当に突っ込んでおくより効率が良くなると思うよー」
確かにこれならいざというとき、「あれ、『ストロングチップ』どこだ!?」なんてことがなくなる。俺は早速チップホルダーを腰に着けた。俺のサイズに合わせて作ったらしく、着け心地は悪くない。
「ありがたく貰っとくよ」
『ー早く行くでござるよー!ー』
ござるが早く行こうとうるさい。俺はござるの鉢を左右に思いっきり揺らしてから下に行くネルメスに乗った。
『地上1階デゴザイマス。外出ノ際ハちんぴら共ニオ気ヲツケクダサイ』
「気遣いありがとう、ネルメス」
「うわっ……ネルメスって喋るのか」
玄関の壁に付いたスピーカーから音声が流れてきた。深くて落ち着いているが機械特有のぎこちない音声だ。
「ネルメスっていうのはこの建物全体を管理してる人口知能のことだよ。エレベーターだけじゃなくてこの建物の自動で動くものはほとんどがネルメスが動かしてるんだよ。ねー!」
『ハイ。建物内ノ空調ヤ照明ヲ始メ、ろぼっと達ノえねるぎー供給モ行ッテオリマス』
「そんなにやってるのか。感心するな」
『ーリュウスケ様ー褒メスギデゴザイマスー』
ネルメスの声にノイズが走る。恥ずかしさを表現しているのだろう。良くできた知能だ。
『ソレデハ、イッテラッシャイマセ』
「はーい、いってくるよ。行こう、リュウ」
「おう」
『ーあ、待つでござる!ー』
後ろからござるがあわててついてくる。俺達はあまり気にせず外へと踏み出していった。
「すげぇ…………」
俺の求めていた桃源郷がそこにはあった。
回り続ける歯車。高度な建築技術により作られたであろうアンバランスなデザインの建物。街灯は宙を浮いており、道行く乗り物も宙を浮いている。きっとござるの機械と同じ原理だろう。
そして一番興奮したこと。それは道を歩く通行人にあった。
「ほ、ほとんどロボットじゃねぇか!!」
推測だが半数以上はロボットだろう。
「近年になってロボットの精度が急激に上がってきてね、買い物なんかはロボットに行かせる人が増えてるんだよ」
「なるほど。みんな怠けてるんだな」
『ー……………ー』
「どうしたござる、固まっちゃって」
『ー前ここを通った時は、ここにこんなビルは建っていなかったでござる……ー』
「お前ここ通ったのいつだよ……?」
『ー7年前でござるー』
「お前どんだけ引きこもりだよ!?」
ござるが引きこもりだとは知らなかった。これからは「ヒッキー充」と呼んでやろうか。
「そうか、もうそんなたつんだねぇ」
「ん、どうしたんだ?」
「最初にござるさんが言ってたじゃん、『ーレナリア殿が介抱してくれたー』って」
「そういえばそうだったな。……まてよ、7年前に会ったってんなら、ござるの鉢も7年前にお前が作ったのか!?」
「えっへん!」
「なんて女だ……」
レナは多分高校生位の年だから、小学生の時にあの翻訳機械を作ったことになる。とんでもない天才女だ。よく考えたら俺のマテリアル(右腕)やセンチネル(左脚)を2~3日で作っちゃうんだから凄い奴である。
「そういえばござるさんの部屋はD棟の83階だよね?何であんなところにいたの?」
『ー……迷っていたのでござるぅ……ー』
「なるほど、玄関は見つけたけど外に出たら迷って二度と帰ってこれないかもしれないってとこか。だから7年もあそこに………ダサッ!アハハハハ!!」
『ーだまれサイボーグ!ー』
鉢の中でジャボジャボと暴れるござる。カブトガニが暴れるのは何かシュール。レナがこちらの茶番に気付く。
「だからなんで喧嘩をーーーー
『ギィァァァアアア、ア アア……』
ちょうど俺達が路地を曲がった先で、一機のロボットが切ない悲鳴をあげて倒れた。その傍にはやたら体格のいいロボットが立っていて、二機の周りを人間やロボット達が囲んで叫んでいる。
『やっぱりボスはTUEEEEEE!!』
「見事な殺しっぷりだ!!」
『ボス、最高!!』
どうやらロボット同士で殺し合いでもしていたようだ。そして中心のデカブツがボスとかいう奴らしい。
デカブツは高々と右手を挙げると、
『まだ殺し足りねぇゼ!誰かいねぇかゴルァ!』
そう言ってシャドウをしているが、正直言うと下手だ。脇がしまっていない。その癖にニヤニヤしながら強がっている。その姿はまるで前の世界のあいつ達…………
…………うぜぇ!
「おらおらデカブツ!相手ならここにいるぜ!」
「ちょっと何言ってるのリュウ!?あいつらはここら辺で一番強いチンピラ、『ブラック・フッド』だよ!!」
『ーいくら拙者でもあいつらの相手は無理でござる!ー』
「大丈夫、闘うのは俺だ」
俺の怒声に気づいたのか、こちらに振り向くボスザル。突然の『デカブツ』呼ばわりでかなり腹をたてているようだ。
『ァアん?やんのかゴラァ!』
こちらに歩いて来るデカブツ。他にもゾロゾロと金魚の糞のごとく雑魚が群がってきて、あっという間に俺の周りを囲んでしまった。
「俺達に話しかけるということは……後悔しないよなボクチャン?」
「いいからさっさと始めろ鉄屑!」
「この野郎………コロス!」
ボスザルは息を荒くしていた。今にも殴りかかって来そうな感じだ。
「ふん………鉄屑になるのはお前だ!!」
こんなもので皆さんが楽しめたのなら幸いです。