第四機 全知の神と全能の修羅
結構サブタイトル決めるの難しいですね……
「じゃあとりあえず自己紹介から!私の名はレナリア・フォルテタール。レナって呼んでもらって構わないよ。君、名前は?」
「龍介だ。リュウでいい」
「リュウだね、分かった。ところで、リュウはどこから来たの?」
早速この質問だ。だが想定の範囲内。俺はジュピターの事と、別の世界から来たことをレナに話してやった。
「なるほど。じゃああのボルトから聞こえてきた声はジュピターさんだったんだね!」
「お前、ジュピターと話したのか!?」
これは想定の範囲外だった。驚かなかっただろうか……
「もちろん!面白い人だね、ジュピターさん。あの人とは色々と馬が合うような気がする!」
「人じゃないけどな。ていうか、そのネジは今どこにあるんだ?あれ結構重要なものなんだが」
とにかくあいつに文句を言いたい。死にかけたんだからな!
「それなら、肩の関節を繋ぐパーツとして使わせてもらってるよ」
「あ、ほんとだ」
見ると、右肩にあのボルトが組み込まれていた。そこら辺に落ちていた物を使ってこんな物を作れるとは、かなりの天才なのだろう。
「そのボルトはそのままだと使えない構造になってるんだ。でも私が持ってるこれを使えばとても簡単。まだ驚かないでよ、ここからがマテリアル・グローブの凄いところなんだから!」
そう言ってレナはポケットからコイン状の何かを取り出した。その中心には、かっこよく『J』の文字が書かれている。
「このコインは『コア・チップ』と言ってね、その中でもこれは『ジュピターチップ』!右の手の甲に円形の幾何学模様があるでしょう?そこにかざしてみて。はいっ」
そう言ってレナはチップをよこす。それを受け取った俺はよくわからないまま、手の甲にチップをかざした。
その瞬間、手の甲の模様が激しく光り始めた。コインも共鳴して光を放っている。
『ジュピターチップ、セット!』
頭の中で女性の物と思われる電子音声が聞こえる。その音声を合図にしたように、光る模様が一気に肩のボルトまで伸びていった。模様がボルトに到達すると、ボルトがひとりでに回りだし、その隙間からノイズ音が聞こえてきた。
『ーーーっあ、あー。聞こえますか?神サマでーす!良かった、ちゃんと生きてたんですね!』
繋がって早々、ジュピターから理不尽な台詞が飛んできた。生身の人間を空から落としといて非道な台詞だ。俺はネジに向かって怒声を………とばそうとしたのだが、ジュピターの声に反応したレナによって遮られてしまった。
「もしもしジュピターさん?レナリアだよー!」
『OH!その声はレナちゃん!?久しぶりー!もうかれこれ4日ぶりですか?時がたつのは早いですね!』
「え、ちょっと待ってくれ!お前らが4日ぶりってことは、俺は4日以上寝てたってことか!?」
「リュウが落ちてきた翌日にこのボルトを見つけたから、正確にはリュウは5日間寝てたね」
「嘘だろ………」
そうなると、俺はもう5日も無駄に過ごしたということになる。
………ジュピターのせいで。
『あはは、そんなに寝てるんですか龍介さんは。貧弱ですねぇ!』
「おいレナ!通信を切るにはどうすればいいんだ!」
「『チップオフ!』と唱えるだけだけど……」
「よし、チップオフ!」
『あ、ちょっと待ってください!ちょっとおおぉぉぉーーー……』
俺が叫んだ途端に、ボルトは元に戻り光る模様は次々と消えていき、最後は円形の光さえ綺麗さっぱり消えてしまった。
「これどんな構造なんだよ。まさか魔法とか……?」
「全然違う。光の正体はラストエンドデスクラゲが分泌する「X2CN0Σ」って物質で、コア・チップは密態皇石を志念養芻液と焔化合させることで……」
「……ゴメン、聞いた俺がバカだった。許してくれ」
とりあえず可視の物体だということはわかった。もし魔法とかの不可視の物体だったら、俺は失望していただろう。
「ところで、何か食べるものは無いか?腹が減って死にそうだ……」
思えば4日間何も食べずに寝ていたので、少し痩せた気がする。これから外出もしたいが、まずは腹ごしらえだ。
「じゃあ一緒に食堂に行こう、私もお腹空いた!ここのおばちゃんが作る料理は何でも美味しいんだよ!」
「ほぉ?それは楽しみだ」
途端によだれが止まらなくなってきた。輸血なんかしている場合ではない。俺は輸血の針を強引に取り外し、ベッドから降りた。すると、
ウィーーーーン……
今度は右腕とは違うところで稼動音がした。もしかして………
「あぁ、いい忘れてた。左脚も機械にしといたよ。右腕と同じくらい傷が深くてね、ついでだから変えといた。あ、脚用のチップも今度作るからね。できたら見せるよ。名前は、どうしようかな………『全能なる修羅の脚とかでどう?』」
「おまえ………天才なんだな。こんなかっこいいの作れるなんて……」
今度は膝のところに円形の幾何学模様があしらわれていた。色もやはり漆黒。
「何か言ったー?」
「いや何でもない。行こうぜ」
「よし、行こー!」
そう言って俺の左手にしがみつくレナ。半ば強引に体を密着させたせいでレナのけっして小さくない胸が押し付けられる形になった。予想以上の感触に、女にあまり興味がない俺でもドキリとした。全身に電流が走る。
「あ、変態!今絶対にエッチな事考えたでしょう!」
「ご、誤解だ!とにかく行くぞ!」
そうして俺達は、先程レナがこの部屋に入ってきた所に向かって歩いた。
新しい脚、センチネルは俺の意思で思い通りに動かすことができ、違和感もほとんどない。強いて言うなら左足全部の感覚が無いので、立っているのが不思議な感じだ。まぁ時間が経てば慣れるだろう。
俺が目を覚ました場所はB棟72階の治療室で、A棟からD棟、階は地下50階から上は100階まであるらしい。俺の落下地点はC棟100階の工房だった。凄い豪邸に落ちてきたものだ。
俺とレナは話しながら、A棟25階から26階ぶち抜きの大食堂に向かった。
……このまま腕を組んで歩くのかな………?
こんなもので皆さんが楽しめたのなら幸いです。