クリスマスの夜
「だれ?」
少女の問いに応えるように扉が開き、一人の男が少女の部屋に侵入してきた。
男は部屋を見回し、イスに座る少女の姿を見据えると、からかう様な口調で訊いた。
「誰だと思う?」
少女はその質問に困った、というふうに腕を組み、首をかしげる。やがて、
何かを思いだしたように、イスから立ち上がり、いった。
「あなた、サンタクロースね! クリスマスだもの。そうにちがいないわ!
あ、そうだ! せっかく来てくださったのだからゆっくりしていって!」
そういって少女は、うれしそうにした後、慣れた手つきでお菓子を用意し始める。男はその様子をみて、深いため息をついた。
「すこしだけならいいよ。だけど、夜が明ける前には帰らないといけないけどね。仕事を片付けないといけない」
「大丈夫よ。わたしはサンタさんのお話を聞きたいだけだから」
「僕の話なんてつまらないさ。それよりは君の話を聞いたほうがよっぽど面白いと思うよ」
それを聞いた少女は、困ったような表情を浮かべた。
「それじゃあ、サンタさんに質問したいことがあるの。いい?」
「かまわないよ。 いったい何が聞きたいんだい?」
男は少女の用意したお菓子に手をつけながら応えた。それを聞き、少女は男に尋ねる。
「サンタさんは今日どうやってここに来たの? やっぱり、サンタさんだかトナカイにそりを引かせてきたの?」
少女の問いを聞き、男は少し考えた後、口を動かし始める。
「いいや。残念なことに、そりには乗ってきていないんだ。最近はもっぱら馬を使っているよ。君には分からないかもしれないけれど、トナカイにそりを引かせると目立ってしまうんだ」
それを聞くと少女は悲しそうにうつむいた。男は、悲しそうにしている少女の様子をみた後、いった。
「僕はもうそろそろ行くよ。本当はここまで長居する予定はなかったからね。
誰か来る前に行かないと面倒が増えてしまう」
そして、男は思い出したように付け加えた。
「そうだ、君も一緒に行かないかい?」
少女はあきらめたように少しだけ笑うと、男をからかうようにして、いった。
「最初からそのつもりだったんでしょう?」
男は愉快そうに笑い、少女の手をとって歩き始めた。
作者の文章力向上のため
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