エピローグ
悟が人間界へ戻ってすぐの話です。
目を開けるとそこは懐かしい場所だった……学校だ。そして向こうから龍一が手を振っている。
(戻ってきたんだ、けど、あれから少しも時間が経過してない)
ふと振り替えした手の指先を見た。黒い指輪がはめられていた。
(やっぱり、夢じゃなかったんだ)
そして徐々に龍一が近づいてくる。
「やっと見つけた、サッカー部の部活見学行こうぜ!」
そうだ、今は学校なんだ。天界じゃない。
「あ、あのさ龍一」
「ん、どうした?悟」
僕はこれから変わっていくんだ。
「僕、やっぱり野球部に入ろうと思うんだ」
「お、おう、そうか……悟、お前…背ぇ伸びた?」
龍一が不思議そうな顔をして手で自分の頭と僕の頭を測った。
「そうかなぁ?別にいいじゃん、行こうよ!」
「悟、何かあったのか?いつものお前じゃないような…」
「……友達が、いっぱい出来たんだ!」
僕は満面の笑みで応えた。僕の…掛け替えの無い親友たちだ。
「そっか、よかったな!じゃあ行こうぜ!」
「うん!」
僕らはグラウンドへ走りだした。
その後の話。僕らは天界に居る時にお互いの住所と電話番号を交換して帰ったら連絡を取る約束をしていた。互いの住所は遠かったけど、親に携帯電話を買ってもらいメールでやり取りをしている。みんな元気にしてるみたいだ。
そしてそれから五年後。今もみんなと連絡を取っている。葵さんは社会人となり会社でテキパキと仕事をこなしている、たまに上司と口喧嘩になるらしい。大介さんは体育科の大学に通いながら自分で柔道教室を開いていた、沢山の生徒に囲まれた写真を送ってきて幸せそうだった。
アリシアさんは母国フランスに留学が決まり、向こうで勉強しつつ母を捜すらしい。陸斗は高校で短距離走の名選手になっている、僕がクラスメイトの陸上部に友達であると言ったらサインを貰ってきて欲しいと頼まれた。
そして僕と龍一はというと……。
「龍一、来週の授業って変更あったよね?」
「あぁ三時間目の数学が地理に変わるってさ」
同じ高校に通っていた。僕は野球推薦、龍一は勉強で。
「そっか、地理は苦手なんだけどなぁ」
「何言ってんだよ、俺も頑張らないと、悟に抜かれるかもな、中学校からいきなり伸びたよな全体的に」
「そうかなぁ?」
僕は天界から戻ってから本来の力というものが戻ったらしい。勉強や分かりやすくなったし天界で修行したぶんはちゃんと身に付いてる。
「そういえば悟、明日の土曜日って部活も休みだろ?どこかに行かないか?」
「あ~ごめん、その日は別の人とどうしてもはずせない約束があるんだ。ごめん」
「何だよ~ひょっとして彼女か?お前もやるようになったなぁ」
龍一がニヤニヤしている。
「そ、そんなんじゃないよ。大切な仲間達なんだ」
「へ~、まぁいいや。じゃあまた今度だな」
「うん、またね!」
僕は家に帰って明日の準備をした。そして次の日、僕は自分の荷物の準備と靴を持って自分の部屋にいた。
「そろそろかな」
すると天井に光る穴が開き手が伸びてきた。
「来た!」
僕は手を差し出すが伸びてきた手は僕の襟を掴み引っぱりあげられた。
「うわあぁぁぁ!!」
そして目を開けるとそこには……。
「久々やなぁ悟、元気にしとったか?」
おなじみの関西弁の葵さん。
「お前、結構体がたくましくなったじゃないか、俺ほどじゃないがな」
以前よりも随分とゴツくなった大介さん。
「悟さん、かなりの勢いで引っぱられてましたけど大丈夫ですか?」
髪が伸びて大人っぽくなったアリシアさん。
「よ、悟。こっちの高校でもお前の話は聞いてるぞ、期待のエースピッチャー」
もう一人の親友、陸斗、そして……。
「こ~ら、あんた達、話したいことはいっぱいあるだろうけど、城の中でも出来るでしょ?行くわよ」
「時間はたっぷりあるさ、せっかくシュレイナ女王様が一日だけ天界へ連れてこられるようにしたんだ。しっかり楽しめよ!ゼノムもお前を待ってるぞ、悟」
僕のパートナーのシュレイナとクロード。
「ねぇ、シュレイナ、クロード」
『ん?どうした(の)』
二人の声が重なった。やっぱり変わらないなぁ。二人は互いの顔を見合わせると同時に笑って僕の方を向いた。
『おかえり!悟!』
「……ただいま!!」
E N D