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ありがとう悟、元気でね

「俺達の願いは四人とも『天界を出ても記憶を残して欲しい』です!」



陸斗が言い切った。その言葉にグロッツ様は呆気に取られて戸惑っていた。



「な、なんじゃと!?」



「全員、願いは一緒です、どんな願いも叶えてやるって言いましたよね?俺達は変えるつもりはありません!」



そう葵さんの提案はこの事だった。あの時……。



「ちょいと強引なんやけど、どんな願いも叶えられるってなら『ウチらの記憶をそのままにしておく』ってのはどうやろか。これやったらみんな記憶を失わんで済むんとちゃうか?」



確かにそれなら……でもみんなの願いは…。



「せやけど、みんなの叶えたい願いもあるやろ?みんなの意見を聞きたいんや」



みんなが暫く考える、そして陸斗から切り出した。



「俺の願いは別に叶わなくたっていいしこっちの記憶が残るならそっちの方が断然いい。俺は賛成だ」



そして次に大介さんも手を挙げた。



「俺も、確かに願いが叶ったら道場は復興するかもしれないけど、それはみんなの協力があってのことだ、復興は自分で何とかする。俺も賛成だ」



大介さんも賛成になった。残るは……。みんながアリシアさんの方を見る。アリシアさんはお母さんを捜しているんだ。そっちの願いの方がやっぱり大事だよね……。



「私は……」



「アリシアちゃん……こんなん言うんは失礼かもしれやんけど無理してみんなに合わせやんくてもええんやで?あんたはお母さんを見つけやなあかん。そのためには…」



しかしアリシアさんが顔を上げた。



「私は……小さい頃は、一人でした。けど今はみなさんが居ます!寂しくなんかありません!だから私も、賛成です!」



「そうか、おおきにな、ほんなら明日は……って何でみんなウチを見るんや?」



まだ解決してない謎があった。そう葵さんの願いだ。それは本人も分かっていたようで、気まずい顔をしていた。



「いい加減応えてくださいよ、葵さんの願いが何なのか」



「うっ。………事や……」



「え?」



余りにも小さな声で聞き取れなかった。



「もう一度言ってください」



「う~……金持ちになって世界で一番旨いもんを食うコトや!悪いか!?」



「……っぷ!ははははっ!」



陸斗が噴出して大笑いした。みんなも釣られて笑った。



「やから言いたなかったんや!」



葵さんは顔を膨らませていた。



何はともあれこうしてみんなの意見がまとまり現在に至る。グロッツ様はどう出るだろう。



「この子達に一本取られたわね、おじいちゃん」



「む~どうしたものか」



「でけへんのですか!?」



葵さんがさらに詰め寄る。



「あくまでもわしは、願いを聞く側の人間なんじゃ、叶えるのはオルセス様で……」



「ほんなら、オルセス様にそう言ってくださいよ」



「ぐぅむ~」



グロッツ様が困り果てていると声が聞えた。



『その願い、叶えてあげましょう』



「その声は、オルセス様か!?」



すると僕の胸からまた光の玉が現れまたあの女神のような美しい姿になった。



みんなが驚いている。そしてグロッツ様が。



「よろしいのですかな?」



オルセス様は少し微笑むと。



『この子達の活躍で天界は救われました。ここの掟ぐらい変えてあげますよ。私が許可します』



「は、承りました」



グロッツ様が深々と頭を下げた。



『それと、悟君』



オルセス様が僕の方を向いた。



「は、はい!」



『あなたのやった事には本当に感謝しています。白銀の腕輪を本来の姿に戻したり、地獄人を助けたりと。私にはあの時ゼノムを止める事は出来ませんでした、ありがとう』



あの時と言うのは戦争のあった頃だろう、けどこれは僕だけの力じゃなかった。



「いいえ、僕は自分のやるべき事をしただけです。それに、みんながいたおかげで出来たこともいっぱいあります」



『たとえそうであっても、あなたは天界を救ってくれました。それを称えて仲間達の記憶はそのままでいいでしょう』



みんなの記憶がそのままになるんだ。



『ありがとうございます!!』



みんなでオルセス様にお礼をした。そして、ついに別れの刻がやってきた。



「よし、それではみな準備はよいな?名残惜しいかもしれんが別れの時じゃ」



みんながそれぞれのパートナーのところへ行き別れを告げていた。



「悟、最後のパートナーがあんたで本当によかったわ、あたしはこれからこの国の王として頑張るから、あんたも人間界で頑張るのよ」



「俺も、いろいろ楽しかったぜ。辛い思いをさせちまったかもしれねぇが俺達のこと、向こうでも忘れないで居てくれ」



シュレイナとクロードに握手をした。



「ったく、泣かないって決めてたのになぁ。ダメだわあたし」



シュレイナの目からポロポロと涙が落ちていた、僕も目頭が熱くなってきたけど必死に拭った。



「それではみな、湖の上に立ってくれ」



五人が水面に立ってもそのまま沈まなかった。グロッツ様は一人ひとりと握手を交わす。そして僕の番だ。



「悟君、本当にありがとう。これも何かの縁だ、その腕輪は君にあげよう。オルセス様もそのおつもりだ」



え?この腕輪を?



「そ、そんな困ります!僕の世界にこんなもの持って行ったら」



僕は必死に腕輪をはずそうとしたが外れなかった。



『安心して下さい、その腕輪はもう害はありません。むしろ君に持ってもらった方がオーフェルも喜ぶでしょう。そうですね…少し小さくしておきましょうか』



そう言ってオルセス様が腕輪に触れると光に包まれ腕輪は小さくなり黒い指輪となった。



『これからよろしくな、相棒』



指輪からオーフェルの声が聞えた。本当に僕のものにしてしまっていいのかな。



「それでは、()くぞ」



グロッツ様が杖を振るうと僕らの体が徐々に沈み始めた。



「バイバイ、悟。みんなも」



「さよなら、シュレイナ、クロード」



『さようなら~!』



そしてシュレイナは完全に見えなくなった。













「うぅっ……ありがとう悟、元気でね」



シュレイナはその場にしゃがみ込み目からは涙が溢れて止まらなかった。

すいません、一話じゃ終わりませんでした。一応次回は悟が人間界へ戻ってその後の事です今度こそ最終話です。

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