ずっと一人だったんだ
四人が叫ぶとそれぞれの足元から光り輝く巨大な柱が出現し、中から巨大な動物たちが姿を現した。
葵の赤い柱からは鳥。
大介の緑の柱からは亀。
アリシアの青い柱からは龍。
陸斗の黄色い柱からは虎。
そして四人は無意識に呪文のように呟いた。
『我の中に眠る荒ぶる火の守護神よ姿を現せ。炎帝・朱雀』
『我の中に眠る静かなる地の守護神よ姿を現せ。地帝・玄武』
『我の中に眠る清らかなる水の守護神よ姿を現せ。水帝・青龍』
『我の中に眠る高ぶる雷の守護神よ姿を現せ。雷帝・白虎』
そしてそれぞれの動物が四人の背中へ吸い込まれていくと四人は意識を取り戻しそれぞれの色のオーラを纏い光る玉となって宙に高く飛び上がった。
「何やったんや、さっきの…」
「何かが体の中へ入っていったような」
「体中から力が湧いてきます」
「これなら……勝てる!」
一方その始終を見ていたシュレイナ、クロード、ゼノムは。
「まさか、あの力って……『四神』!?」
「古くから伝わる伝説だと聞いていたが……」
二人は戦いを忘れるほどに目の前の光景に見入っていた。そこへゼノムが。
「これが先代の長たちが調べていたと言う四神かぁ、まさかここで見ることが出来るとは、けど『風帝・黄流』はいないようだね」
「ゼノム、あなた何か知ってるの?」
「えぇまあ、四神とは三界を創り出した神の守護神だったと言われていてね、神の死期が来たと同時にその四神もこの天界の地に眠りに着いたという伝説がある、それをあの子たちが呼び覚ましちゃったんだろうね」
ゼノムがやれやれと言うような表情で続ける。
「更に『風帝・黄流』は神の側近であり四神の力を増幅させるらしいけど……それはいなくても僕の人形たちは壊されてしまうだろうね」
そう言っている間に四人は獣化した相手を圧倒し周りにいた牙獣族も次々に倒していった。
「よし、このままゼノムも、俺がぶっ倒してやる!」
陸斗がゼノムの方へ向かってくるとゼノムは逃げもせず、すっと片手だけを出した。
「まさか、片手であれを止めるつもりなの!?」
「いや、一応ね、おそらく途中で……」
「おらあぁぁぁぁ!……っう!」
するとゼノムに向かっていた黄色い玉がフッと消えて陸斗は地面に落ちていった。他の三人もある程度まで牙獣族を倒していくと輝いていた玉が急に光を失いその中にいた子供たちが下へ落ちてゆく。
「何だ!?体に力が入んねえ」
「おそらく……強すぎる力に体がついて行かなかったんだろうね、まだ持ち始めたばかりの力なのにそうやって無理するからだよ」
その時シュレイナがクロードの隙をつきゼノムに拳を振り上げた…が。
「君の相手は彼だって言ったじゃないか」
ゼノムにあたる瞬間にクロードが手で受け止めた。
「止めとけ、どっちにしたってお前じゃゼノム様には勝てないさ」
「それもそうね、じゃあクロードが協力してくれたら勝てるんじゃないの?」
クロードは一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑いながら。
「………それもそうだな……『爆炎弾』!」
『水滅撃』
クロードとシュレイナが同時にゼノムに魔法を放った。完全に意表ををつかれたゼノムはまともにくらった。
「何だ!?」
ゼノムは一瞬何が起こったのかわからないと言う顔をしていた。さらにシュレイナたちが追い撃ちをかけた。
「クロード!」
「はいよ!『大炎戒』!」
クロードが大量の炎を放ちゼノムの周りを囲んだ。
「っく、こんな炎ごときっ」
「あら、じゃあ消してあげましょうか?『風滅』!」
シュレイナが風の魔法を加えると更に炎は燃え上がった。
「あ、ごめんなさ~い。水はこっちだったわね『霧水』」
シュレイナが霧のような水を炎にかけると。
「うっ、視界が……」
消された炎が煙に変わりゼノムの視界を奪った。あたりを警戒して何度も振り返るが二人の位置を確認できないゼノムの背後にシュレイナが近づいた。
「こっちよ!おりゃあ!」
ゼノムが振り向いた瞬間にシュレイナのグーパンチが頬に直撃した。
「っててて……くっそ、クロード!どういう事だ!貴様、裏切ったのか!」
視界が晴れてクロードの姿を確認したゼノムは自分でも気付かないほどに口調が荒くなっていた。
「確かに俺は地獄人だ、けどなぁ俺は最初っから天界人の人間なんだよ」
「その地獄人が何で天界人の見方をするんだ!」
完璧に切れているゼノムに対してクロードは冷静に応える。
「俺はガキの頃にずっと一人だったんだ」
次回はクロードの回送に入ります、何故地獄人の彼が天界に来たのか?空間を断ち切られた天界に来られたのか?そういういろいろ大事な伏線を回収していきます。