ウチが全部これで倒しとったからや
~葵の視点~
「私はあなたの属性と相性のいい水の魔法を使う他に風と雷の属性も使うのよ、あなたに勝ち目は無いんじゃないの?」
相手の女はすでに勝ち誇っていた顔をしとった。って言われてもなぁ。
「さぁいつでも来なさい」
「ほんならお言葉に甘えてっ」
ウチはすぐに刀を引き抜き女に切りかかった。
「きゃっ!」
女は意表を衝かれたようにように驚いて避けた。
「ふんっ最初は魔力の温存ってわけね、それで私に勝てると思ってるの?『水弾』」
女の手から水の弾丸が数発、飛び出した。悟のクレウスよりはちっさいけどスピードはこっちのが上か、けどこの程度やったら。
「ほっ」
ウチは全て刀で切って防いだ。こんなもん悟のスパレドに比べたらどってことない。
「やるわね、これならどう?『雷輪」
今度は雷の輪っかが向かってきた。
「ん~これは避けるしか無いかな、っよっと」
「かかったわね、その体勢で避けられる?『水疾砲』」
十発ほどさっきよりも速い水玉が飛んできた、これはなかなか……やけど。
「ほいっほいっ」
ウチには小学生の投げるボールくらい遅く感じ、全て避けきった。
「うそ!?」
ウチはすぐに間合いを詰めて女の腹に防具の上から一発切り込んだ。
「うっ……」
女が腹を抑えながらよろめく、そしてこちらを見ると……。
「さっきから何よあなた!一向に魔法も使わないし、刀や避けてばかりで…魔法も使ったらどうなのよ!?」
「んなこと言われてもな~あんたには通じやんてわかっとるし…それにウチ魔法なんてほとんどつかわんしな」
「はぁ?」
女がありえないと言うような顔をしていた。
「じゃああなた、一回戦はどうやって戦ってきたのよ?その刀だって二回戦からのものでしょ?」
「ん~それは内緒!」
「何よそれ!?……まぁいいわ、それなら私も!」
と言って女は呪文を唱えた。
『契約を結びし地獄の民よ、汝の力の矛を、汝の護の盾を、具現し我に与えたまえ!』
すると女の持っていた首の石が黒く輝き始め黒い光が女を包んだ。
「何やあれ!?」
何や嫌な力を感じるてくるわ、あの中で何が……。暫くすると光が収まり女が現れた。さっきまでとは随分と違った格好で。
「どう?この姿、これでもあなたの攻撃が効くかしら?」
女の姿を全身を黒い鎧で覆われ、手にはこれもまた黒い三叉の矛が握られていた。
「厄介やなぁ、とりあえずこれでっ」
ウチは刀に魔力を込めていきなり橙色の刀身で女に切りかかろうとしたが女は微動だにしなかった。
キイィン!!
ウチの剣が弾かれた!?
「効かないわ…よ!」
女の矛の攻撃をくらった。
「っう!」
「この鎧と矛はね、地獄界にしか存在しない特別な鉱石で造られたものなの、そんな刀で切れるわけないでしょ?」
「これで切れんのやったら……はあっ!」
ウチは更に魔力を込めた、刀身は赤く輝きだした。これが炎刀灼刃の最大や、これやったら。
「おうらあっ!」
矛に向かって思いっきり振り下ろした、すると。
「……え?」
ひびが入ったのはウチの刀の方やった。そして向こうの矛は三叉のうちの一つが砕けた。
「この矛に傷をつけるなんてやるじゃない、でもその刀……もうダメね」
「うそや……ウチの刀が、そんな!」
呆けとったウチに水の弾丸が次々に飛んできた。ウチは避ける暇も無く直撃してしまった。
「次で終わりね……『雷滅』」
女の手からでっかい雷の塊が出てきた、あれくらったら、もう終わりやな。
『いや、まだ終わりじゃない』
誰や?ウチに話しかけんのは。
『うぬの力はこの程度では無いはずだ』
初めて聞くその声は…すごく近くで聞えた。
『最後に我の力を最大に引き出してくれ』
刀?炎刀灼刃が……ウチに?んなことって。
『我は何年も生きてきたがそろそろ寿命のようだ、ひびが入ったのは、うぬのせいではない。最後に我を使ってくれたのがうぬでよかった』
何がなにか分からん、けど、自然と力が湧いてくるような気がした。あんたがそこまで言うなら…やったる!
「何?まだやるつもりなの?終わりよ!」
ウチは刀を真っ直ぐ構えた。雷の塊が投げられた。ほな行こか、炎刀灼刃。この刀へ……全魔力を。すると刀は更に濃い赤へ…紅色へ輝きさらに刀身が炎を纏った。
『さらばだ、うぬ……いや、葵よ』
刀を振り下ろすとひびが広がり刀身はついに砕けてしまったが雷の塊を切り裂き女の矛と鎧を砕いた。
「うわあぁぁぁ!」
攻撃が止むと女はボロボロでよろけていた。そしてウチが女に近づく。
「ウチが何で魔法も使わずに一回戦勝ち抜いたか教えたるわ」
ウチは女の腹に正拳突きを一発入れた。
「ウチが全部これで倒しとったからや」
そのまま女はその場に倒れた。
葵の戦闘は難しかったです、だって魔法使わないから攻撃のレパートリーが少ないんですよ。次回はアリシアちゃんです!戦いに不慣れな彼女はどう戦って行くのか?