何で黙ってたの?
「みんな、ベッドがある部屋は二階よ。いっぱいあるからどの部屋でも好きに使っていいわ」
城に入るとすぐ目の前に二回へと繋がる大きな階段があった。みんなは先に階段を駆け上がり自分の部屋を決めていた。僕も適当な部屋を選ぶ。
「うわぁ、広い」
部屋へ入るとそこにはホテルで家族連れが泊まるような広さの部屋だった。窓の外を見ると下の町が一望できた。
「悟~入っていいか?」
扉の向こうから陸斗の声がした。
「いいよ~」
返事をすると陸斗が部屋に入ってきた。
「どの部屋もほとんど変わらないんだな」
「へ~そうなんだ」
僕が無意識に素っ気無い返事をしてしまったせいか、陸斗がどうした?と聞いてきた。
「元気ないな、何かあったのか?」
「……うん、地獄人の事でちょっと、そのことでみんなにも話しておきたい事があるんだ、みんなをここへ呼んできてくれないかな」
「あぁ、別にいいけど」
そう言って陸斗は部屋を出てみんなを呼びに言ってくれた。その間に僕はクロードの話していた事を思い出す。
「何や?悟の話って」
暫くすると扉の向こうからみんなの声が聞えてきた。
「俺も詳しくは聞いてないんだけど、地獄人の事だって」
扉が開きみんなの顔があった。
「悟、みんなを連れてきたけど…」
「どないしたんや?悟。ウチらに話って」
「地獄人の話って…何か分かったんですか?」
「うん、僕もさっき聞いた話なんだけど、みんなにも知ってもらいたくて」
「もったいぶらずに、話を始めてくれ」
大介さんに急かされ僕は話し始めた。クロードに言われた事を思い出しながら。
「その昔、僕たちのところで言う神様は………」
僕の話が終わるとみんなは思い思いに感想を述べた。
「そんな過去があったんですかぁ」
「数百年も前からそんな事が……」
そこへ大介さんが僕と同じ疑問を持った。
「それってシュレイナさんが言ってた話とずいぶん違ってこないか?」
それについても僕は説明した。あくまでもクロードの話であることとこれが真実では無いかもしれない事と。
「そんで悟、あんたはどう思うてるんや?」
「僕は……できれば戦いたくない、相手が怖いとかじゃなくて、本当は地獄人は悪くないと思うんだ。ただ…かわいそうなだけだと思うんだ」
少し沈黙があった。そこから切り出したのは大介さんだった。
「甘いよ、悟。その考えは、なんとしてでも地獄人は倒さないといけないんだ」
「せやで悟、ウチらは最後まで残らなあかんのや」
「俺もそう思う、この戦い勝たないと意味が無いんだ」
「話し合いで解決するのは少し間違ってると思います」
僕は正直驚いた。大介さんや葵さんが言うのは分かるんだけど陸斗が、ましてやアリシアさんまでもが地獄人を倒す意見に賛同するなんて。
「みんな、何でそこまで勝ちにこだわるの?こんな戦いにたとへ負けたってここでの記憶が無くなるだけじゃないか」
みんなは僕の意見にキョトンとしていた。僕、何か変なこと言ったかな。
「悟、お前シュレイナさんとかに何も聞かされてないのか?」
「何もって、みんなは何か知ってるの?僕の知らない事が」
「悟さん、この『魔法使いの闘い』を最後まで勝ち残った人間には…何でも好きな願いを一つだけ叶えることが出来るんです」
「え!?それってどういう…」
願いを叶えられる?シュレイナやクロードは一言もそんな事を言ってなかった。忘れていた?いや僕に隠していたのか、それでも何で?
そこへ扉が開きシュレイナが顔を覗かせた。
「あ、みんなここに居たのね……ちょっとどうしたのよ悟、そんな顔して」
僕は立ち上がりシュレイナに近づいた。
「シュレイナ、僕に何か……隠してること無い?」
「な、何よ隠してる事って、それにみんなもどうしたの?そんな真剣な顔で」
「僕は知らなかったよ、この戦いで最後まで残った人間が好きな願いを叶えられるなんて」
「あんた、何でそれを!?」
シュレイナは急に表情が変わった。
「みんなに聞いたんだ、シュレイナ、何で黙ってたの?」
「それは、最後で言ってあんたを喜ばせようと…」
嘘だ、そんな単純なものじゃないはずだ。僕の変わらないまっすぐな表情を読み取ったのか、ついにシュレイナは観念した。
「わかったわよ、実はあたしとクロードはあなた達人間を選ぶ時に一つ決めていた事があるのよ」
決めていたこと?それって一体。
今回は少しシリアスな展開になりましたね、シュレイナは何故悟に隠していたんでしょうか?今のうちに言っておきます。ぶっちゃけそんなに深い意味はないのであまり期待はしてくれないでください。次回はそれぞれの叶えたい願いなどを書いていきます。感想待ってます!!