ただかわいそうなだけなのに
僕とシュレイナとカルマさんは城の外でみんなを待っていた。そして暫くするとクロードを先頭にみんながやってきた。陸斗が僕に手を振っている。
「お~い!悟~!」
「うわ~でっかいな~」
「写真でしか見たこと無えやこんな城」
「本当にいいんでしょうか?私たちが入っても」
みんなが思い思いに感想を述べている、そこへシュレイナが。
「さぁみんな遠慮なく入っていいのよ!あたしのお城なんだから」
「お前のじゃなくて『グロッツ様の』だろ」
クロードがシュレイナに指摘した。
「いいじゃない、いずれはあたしの城になるんだから、みんな、中へどうぞ」
「「は~い!」」
みんなは次々に門の向こうへ行った。陸斗が振り返り。
「悟、行かねえのか?」
「うん、先に行ってて、僕も後で行くから」
「そうか、じゃあ後でな!」
「そう行って陸斗は走っていった。
「どうしたんだ?悟」
僕はクロードに聞きたい事があった。
「クロード、教えてほしいんだ。地獄人の事なんだけど何か知ってる?」
「地獄人かぁ……いいだろう、長くなるから歩きながら話そう」
クロードは地獄人について語り始めた。
その昔、悟たちのところで言う神で俺らの言うところの三界神は人間界の他に二つの世界を創り出した、『天界』と『地獄界』でそれらを合わせて三界と呼んだ。もともとは全ては神が管理していたんだが、やがて『天界』と『地獄界』を管理させるそれぞれの神を生み出した。
それが『天界のオルセス』と『地獄界のゼノム』だった。二人の神は初めは均衡を保っていたがやがて三界神にも死期が来た。そして残った人間界をどちらが管理するのかで争いが起こってしまった。それはどちらかが滅ぶまで続いた。
オルセスとゼノムの争いは数百年に亘ったがオルセスは神器と呼ばれる武器を生み出しその力で実力が徐々に開き始めオルセスが優位に立った。すでに勝ち目は無いゼノムに対してオルセスがゼノムに提案した。
「共に共存し、二人で三界を管理していこう」と。ゼノムもその意見に同意しそして天界と地獄界を自由に行き来できる空間を創った。それからは互いに助け合いが生まれ天界人も地獄人も仲良く共存していった。しかし地獄人の中には共存をよく思っていない者も居たんだ。
その内の一人の男がある日オルセスの宮殿に忍び込み神器を盗み出そうとした。その神器が『黒天の腕輪』だった。その当時はそんな名前ではなかったらしいがな。しかしタダの地獄人に腕輪の力は強すぎた。たちまちにその男は暴走を始めた。しかしそのとき他の神器が暴走を阻止しようと独りでに動き出しその男を殺した。
ゼノムは天界人に自分の種族を殺されたと怒り、またオルセスに戦争を吹っ掛けた。オルセスも今回ばかりはゼノムを抑え切れなかった。仕方なくオルセスはゼノムを滅ぼして後に残った地獄人の怒りを静めるために腕輪の力を使った。
しかし腕輪の力だけでは地獄人たちの憎しみは祓えなかった。そこでオルセスは天界と地獄界をつなぐ空間を断ち切りそれを最後に地獄人からの干渉は一切無かった。後に残ったのは地獄人たちの恨みを吸った『黒天の腕輪』だけだった。だから今も地獄界は存在し地獄人も生きてるかも知れないんだ。
「そして現在に至り生き残っていた地獄人が何故か天界に入ることが出来てそれをきっかけに復讐を果たそうとしているわけだ」
クロードの説明が終わった、けど僕には更に疑問が浮かんだ。
「ちょっと待ってよクロード、その話シュレイナが話していたことと全然違う、地獄人は全員滅ぼされたって」
「それはあくまでも俺が聞いた話しだ、何百年も前の話だからな、人から人へ伝わっていくうちに違う話が混ざったりしたんだろう」
一体どれが本当の話なんだろう、シュレイナやカルマさんの話は古い書物にあったって言うけどクロードの話も凄く真実味がある。
「真実は誰にも分からないんだ、しかし分かっていることはあいつは間違いなく本物の地獄人だってことだ、絶対に倒さなけりゃ今度は必ず天界を滅ぼしに来るぞ」
その地獄人はどんな気持ちで今まで生きてきたんだろう、きっと幸せにはなれなかったんだろうな。そんな相手に……僕は……。
「何やってんのよ!早く入りなさい」
そんな事を考えているとシュレイナが早く来いと急かしていた。僕とクロードは小走りで城の中へ向かった。
「心配すんな悟、勝てるさお前なら、それにみんなも居るんだ」
勝てる勝てないではなく僕には迷いがあった。そんな相手を僕は倒さないといけない、他に手は無いのかな、その地獄人もただかわいそうなだけなのに。
自分でも書いている内になんだか分からなくなってきました(汗)とりあえず今はまだ真実は分かりません。何とか収拾が付くように頑張ります。次回は悟に衝撃の事実が知らされます。感想待ってます!!