ほんならいっちょ見せてもらうで
悟たちが会場に入る数分前のこと。グロッツの居る『王の御座』では…。
「はっはっは、今回もわしの孫が勝つかの~」
そんな上機嫌のグロッツを見る隣の男が。
「何を言うか『東の王』グロッツよ、今回こそはわしの孫が勝つに決まっておる!」
「またまた冗談を言いおって『西の王』ダグロスよ、昨年もその前もシュレイナが勝っておるのじゃぞ?今年もそうに決まっておる」
グロッツの発言を鼻で笑うダグロス。
「フンッ、だがグロッツよ、今回の一回戦ではお前の孫が一番最後だったそうじゃないか?しかも時間ギリギリでな」
その言葉に嫌なところを突かれたという顔をするグロッツ。
「う…そ、それはじゃな~」
「どうせ選んだ人間がダメだったんじゃな、ほれ、今ちょうど入ってきたぞ、見るからに貧弱そうじゃな、それに比べてわしの孫が選んだ人間はどうじゃ?強そうじゃろ?」
「大事なのは見た目よりも中身じゃよ、戦いになれば……」
そう言いつつもグロッツはシュレイナの選んだ人間とダグロスの孫が選んだ人間を見比べる。
(とは言ったものの……本当に大丈夫じゃろうか、それに何故シュレイナは二人しか連れていないのじゃ?)
そんな不安を持ちながらもグロッツは戦いを開始するように部下に伝えた。
~悟の視点~
「さ~始まりました!魔法使いの闘いの二回戦!一戦目はまずこちらの西の王ダグロスのお孫さん率いるディレイスチーム!」
司会者らしき人の説明で会場が盛り上がっていた。
「対するは東の王グロッツのお孫さん率いる優勝候補のシュレイナチーム!……ってシュレイナさん?何故こちらは二人しか居ないんでしょうか」
司会者の当たり前のような質問にシュレイナは平然と応える。
「初戦なんて、この二人で十分よ!」
会場がざわついた、これが当然の反応なんだろうな、相手は全員強そうな五人組、対してこっちは僕と女性の葵さん。そもそも一回戦を勝ち上がったのがほとんどが男性で、人間界の女性の人は数えるくらいしか居なかった。
「え~確かに全員参加の義務は無いのですが、本当にいいんでしょうか?」
司会者が更に質問を投げかけてくる。
「いいから、早く始めてよ!」
「あ、は、はいっ」
シュレイナの言葉に司会者は気圧され、進行を再開した。
「さ~これはおもしろそうな戦いになりそうです!それでは魔法使いの闘い二回戦、開始!」
スタートの合図と同時に武器を持った五人が同時に突っ込んできた。
「ほんなら、行くで!悟」
「うん!……水の剣!」
葵さんは自分の刀を引き抜き、僕もクリルザンを出した。
ガキイィィィィン!!
振りかざされた五人の武器を葵さんの炎刀灼刃と僕のクリルザンが受け止めた。
「んだと!?」
一人の男が驚きそのまま一旦引いた。僕らも後ろにさがって距離をとった。
「まずは様子見やな」
そう僕らはまず、近距離戦で様子見をしてそこから対応していこうという作戦だった。
「どや?悟」
「うん、力は強かったけど……行けるよ」
「さよか、じゃあウチから先に行くで?」
そう言うと葵さんは五人のうちの一人に切りかかって行った。
「オラアァァァ!」
「来いよ!そんな刀、へし折ってやる」
男は持っていた金棒を構えると葵さんを迎え撃った。
「ふっ自分、遅いな」
男の目の前まで行った葵さんはすぐに回りこんで男の後ろをとった。
「んな!?」
「スキあり!」
葵さんが刀を振り下ろすと、男はモロに食らい、纏っていた防具が砕けて吹っ飛んで地面に倒れたまま動かなかった。
「まずは一人目!」
意外にもあっけなかった。しかし葵さんの後ろにはもう一人の男が大剣を振り上げていた。
「葵さん、後ろ!」
「おりゃあ!」
間一髪で避けた葵さんはそのまま更に後ろにさがった。男が振り下ろした剣は硬い地面にめり込んでいた。
「ほ~危ない、危ない」
「ずいぶん、余裕だな、そんな細い刀でこのオリファル鉱石で作られた大剣を受けられるかな?」
いかにも硬そうな鉱石の名前だった。けど葵さんは。
「ふ~ん、ほんならいっちょ見せてもらうで、炎刀灼刃の力をな」
ますは葵パートです、悟君の活躍はもう少し後なので今は彼女の戦いぶりを見てあげてください、単独で戦っているように見えますが、葵が戦っている間に悟君も戦ってますから、それは後の話で。感想待ってます!!