あたし達は一人じゃないんだから!
~時はシュレイナたちへ戻る~
「人じゃなたかったって、どういうことなの?」
あたしを見てカルマがカネアに聞いた。
「カネア、この人は?」
「二回戦はチーム戦になって、私と同じチームになった人よ」
「シュレイナよ、それより話の続きを聞いてもいいかしら」
「そうか、とりあえず俺がカネアたちと別れた所から話す」
カルマは一息ついてから話し始めた。
あの時、黒い煙がだんだん近づいてきてどこからか声が聞えたんだ。
『フフッ、あなたは逃げないんですね。おもしろい人だ』
声を聞く限りではまだ子供だった。それもかなり年下の。
「お前、何者だ!?どこにいる!?」
『どこって……目の前に居るじゃないですか』
目の前?黒い煙……その中に赤く光る、目か?そしてついに俺はその煙に包まれた。とたんに嵐の中に放り込まれたような感じだった、四方八方から攻撃を受け何がなんだか分からなかった。その時間はとても長く感じた。
「っくそ、こんなのどうすればいいんだよ!?」
俺は徐々に意識が遠のいていったそしてやっと開放されたと思ったらあたりの草木がみんな枯れていたんだ。俺はその場で倒れてその煙の後を追えなかった。そして俺は気を失ったんだ。
「これが俺の受けた傷だ」
上の服だけを脱いで見たカルマの体は傷だらけだった、こんなにも……。
「お前らは無事だったのか?カネア」
「うん、私も襲われたけど、何とかアリシアと一緒に二回戦に進めたわ。シュレイナさんとそのパートナーの悟君のおかげでね」
そうか、と一言いってカルマがあたしを見た。
「本当にありがとうな。シュレイナ…だっけ話は聞いてるよ。グロッツ様の孫なんだろ?感謝している」
「礼なら傷治した後に悟に言いなさい。アリシアちゃんを助けようと言ったのは悟なんだから、それよりもあたしもあなたを知ってるわ。『カルマ・グレッタ』あたしが入学する前に学院をトップで卒業していったんでしょ?」
あたしもよく知っている。確か先生達が教えてくれた。またカルマのような逸材が来てくれた…と。
「あなたほどの実力者でも敵わなかったの?そいつは」
「あぁ、おそらく二回戦でもどこかのチームにまぎれてるんだろうな。人間でもなく天界人でもなかった………まさかな」
その言葉があたしには引っかかった。この話を聞いてあたしは一つの可能性を感じた。とても小さい可能性を。
「まさかって何?あなたの話を聞いてあたしも考えてるんだけど。人間でもない天界人でもない種族って一つしか居ないでしょ?」
カルマが驚いたようにこちらを見た。
「君も知っていたのか?あいつらを……だが、あいつらはもう」
「あたしはロベルト家の人間よ。当たり前じゃない、でもあたしだって信じられないわよ奴らの種族が生き残ってるなんて」
あたし達の会話にカネアだけが付いて行けてなかった。
「何よ、奴らとか種族って。そいつは人間でも天界人でもなければ何なの!?」
「あたし達が生まれるもっと前の話。数百年も前に滅んだ種族……地獄人よ」
「地獄人?」
「そう、あたしも詳しくは知らないけど数百年前のファリッサを創ったオルセス様は天界人の他にもう一つの種族を創りだした、いや創らざるをえなかった。オルセス様が創ったファリッサにはどうしても邪悪なものが存在してしまった。その邪悪なものを封じ込めたものが『黒天の腕輪』でもそれだけじゃ足りなかった。溢れてしまった邪悪なものは自ら意思を持ち進化を遂げてもう一つの種族を創った。それが地獄人よ」
カネアは呆気にとられていた。今まで普通の天界人には聞かされていなかったんだろう。そしてもう一つの黒い歴史があるのを。その後をカルマが続けた。
「地獄人はやがて天界人に戦争を吹っ掛けたがオルセス様のおかげで最悪の事態は免れたんだ。地獄人にも王がいてな、そいつに争うのではなく共存しようと申し出て和解した」
「和解したのに、何で滅んでしまったの?」
「俺も、そこまでは古い書物で読んだんだがそこから先が無くなっていたんだ、何者かに破られたように。知られちゃマズイ事でもあったんだと俺は考えている」
そこまではまだ知られてないのね、あたしも黙っておこう。
「とにかく、今回はその地獄人がどこかのチームにまぎれている可能性があるんだが俺はこのザマだ、逃げろとは言わないが、気をつけろよ」
「うん、わかった」
あたしたちはその場を後にして城を出た。
「シュレイナさん、私たち、勝てるんでしょうか?地獄人に」
カネアが不安気は顔で聞いてくる。あたしにだって分からない、カルマでさえ歯が立たないなんて、これはあの子達の成長に期待するしかないわね。
「大丈夫よ、あたし達は一人じゃないんだから!あの子等だってまだまだ成長するわ」
「そうですよね!私もがんばらなくっちゃ」
口ではそう言ったけど地獄人の力だってまだまだ分からないことがたくさんある。こりゃあ探りを入れた方がよさそうね。また明日にでも偵察に行きますか。
「じゃ、宿に戻りましょ」
カネアの顔からは不安の色はなくなっていた。
今回は新しい敵を中心に書きましたがまだまだこれは上っ面に過ぎません。シュレイナの言う黒い歴史とは何なのでしょうか?悟君の腕輪も……伏線を張りすぎて回収が難しそうですけど頑張ります!(汗)感想待ってます!!