足音は聞えなかった
時は悟たちがゴールする少し前の事。自分の孫が一番に到着すると言っていたグロッツ様は……
「おかしい、シュレイナは一体何をやっているのじゃ、このくらいの試練ならあの娘なら簡単に乗り越えられるはずじゃろうに……」
(まさかこの中にいる誰かにやられてしもうたのか)
そこへ甲冑を身に着けたグロッツの部下が現れた。
「報告します!シュレイナ様が到着されました」
「おお、そうか。それにしてもギリギリじゃなぁ。よしそれじゃあ時間じゃ皆の前に顔を出すかの」
~そして時は悟たちへ戻る~
「悟さん!よかった~間に合って、本当に心配してたんです!」
到着して周りを見渡すとアリシアさんがこちらに気づいてやってきた。
「うん、シュレイナのおかげだよ!おかげで間に合った」
「ホントよまったく!後先考えず突っ走って、こっちの身にもなりなさいよ!」
シュレイナはまだ怒っていたようだ、そこへアリシアさんのパートナーもこちらへやってきた。
「私からもお礼を言うわ。ありがとう……ってあなた、シュレイナって『シュレイナ・ロベルト』?」
パートナーの女性が驚いたようにシュレイナの顔を見て質問する。
「うん、あたしがシュレイナだけど……」
「うわー!本物だ!あの魔法学院を首席で卒業して毎年このウィザード・ストゥラゴで優勝してる、シュレイナ・ロベルトさん!」
さっきまでのおとなしい感じとはえらく変わってずいぶん興奮した様子だった。
「ちょっと、恥ずかしいからそんな大きな声で言わないでよ、あなた今年から参加してるの?」
「は、はい!あ、私、『カネア・ナスラム』と言います。去年学院を卒業して一年間訓練を積んでから今回が初めてで、でも全然だったんです……シュレイナさんに助けてくれなければ今頃……」
カネアさんがシュンとしていると、シュレイナがあることに気づいた。
「そういえばカネア、チームは3人1組のはずだけど…もう一人は?」
その言葉を聞いてからカネアさんの顔が更に暗くなる。
「もう一人は、途中で別々になって……まだ戻ってきてないんです。幸い火の石を三つ持っている人が一人でも到着すれば合格だったのでよかったのですが」
「何があったの?」
「それが……」
カネアさんが言いかけたとき、目の前に雷の玉がいきなり現れてそこからグロッツ様が現れた。
「え~一回戦突破の諸君まずはおめでとう、少々数は少ないがまぁいいじゃろう。ここにおらん者は後で人間界へ返すのじゃよ。ここにいた時の記憶も消してな」
負けたら記憶を消されるのか、シュレイナやクロードの記憶、それはちょっと嫌だなぁ。
「さて二回戦はチーム戦を行う。5人1組でチームをで戦うのじゃ。それではここにクジを用意した。誰からでも構わん、引いてくれ」
こうして僕たちを入れた4チームが出来上がり、それぞれにまとまった。そこにはアリシアさんもいた
「戦いは2週間後とする。その間に親睦を深めたりお互いに技を磨くのもいいじゃろう。しかし他のチームとは戦うでないぞ、チーム内での訓練は許可する、それではこれにて解散じゃ。火の石はそれぞれ持ち帰って構わんぞ、わしのサービスじゃ」
僕らは出口から外へ出てその場を後にした。その頃別のチームでは……
「こんなもの持っていてもしょうがないですね、その辺に捨てておきましょう」
そう言うと小柄な少年はローブの中から大量の火の石を地面に捨てた。それに気づいたもう一人の男が
「君、その石!」
「あぁこれですか?2回戦が40人もいるのは面倒ですからね、今のうちに倒させていただきました」
その言葉に驚きを隠せない三人と平然の佇む女性。
「あら、私はわかっていたわよ、誰かが意図的に人数を減らしたのも、それを誰がやったのかも」
「ほぉ~それはそれは、さすが僕の次にここへ到着した人間ですね、今回は楽しめそうだ」
「それはそうと、あなた、パートナーは?私が来たときもいませんでしたけど」
「あぁそれなら少し離れた町で待機させてあります」
少年はあっちの方ですと指差しながら言う。
「え?それじゃあ君は一人でここまで!?」
「まぁその話はいいじゃないですか、先を急ぎましょう」
そう言うと少年は会場から離れていくが不思議なことに足音は聞えなかった。
ここからはチーム戦になるので登場人物が一気に増えていきます。皆を均等に喋らそうと思ってるのですが、多分放置になる人も出てくると思います。特にクロードとか(笑)
感想待ってます!!