この人を助けたい!
「何で言ってくれなかったのさ!一回戦のルールに制限時間内にたどり着かないと強制失格になるって」
僕たちはひたすらに走っていた。ゴールをめざして。
「だって毎年あたしは一番にゴールしてたから時間なんて気にしてなかったのよ!それにあんたの修行も必要だったし。あたしのせいじゃないわよっ!」
「おいお前ら、ケンカしてないでもっと速く走ってくれよ。このままだと間にあわねぇぞ」
「わかってるよ!」
「わかってるわよ!」
二人の声が同時にクロードに向けられた。
修行のおかげで二つ目の火の石は簡単に手に入りそれでも制限時間は残り十分を切っていた。僕は二人のすぐ後ろを走っていたが、だんだん疲れてきた。そんなときにシュレイナが。
「ん~悟もそろそろ限界に近いわね。クロード、悟をおぶって。あれをするわよ」
シュレイナが僕を気遣って何かするようだ。
「そうだな、この距離なら残ってる魔力でなんとかなりそうだ。悟、乗れ」
「うん」
僕はクロードの背中に乗ると二人が立ち止まりその場でしゃがみこんだ。
「え、どうしたの?」
「悟、魔力ってのはただ魔法を使うために消費するもんじゃないのよ。」
すると二人は陸上競技のクラウチングスタートのポーズをとり。
「魔力を……足へ」
次の瞬間二人は地面を蹴り加速した。
「うわっ!」
「振り落とされんなよ、悟」
高速道路で車の窓から顔を出したときに受ける風。まさしく僕は今そんな風を受けている。
「何でこんなに加速が……うわっ」
クロードがもう一度地面を蹴り更に加速した。
「それはな、俺たちは自分の魔力を体の一部に集中させてその部分を強化するんだ。ちょっとコツがいるがな」
「喋ってないでもっと加速するわよ!」
そう言うとシュレイナはもう一度地面を蹴りまた速くなった。
「もうそろそろだな」
「ねぇクロード、一つ聞いていい?」
「ん?どうしたんだ」
「わざわざ走らなくてもあの時使った風の魔法で行けばもっと楽なんじゃないの?」
あの時と言うのはシュレイナたちが風を纏って会場にいった時の魔法だ。
「あ~あれな。あの魔法は上級魔法だからな、それ相応の魔力が必要なんだ。シュレイナはいけるかもしれないが、今の俺の魔力じゃ足りないんだ。俺もまだまだだな」
あの魔法も上級だったんだ。確かに水の上級魔法も長い呪文を言ってたっけ。
「そっかぁ。あ、あれがゴール地点かな」
そこには高い塔のような円柱の屋根がとんがった建物が見えた。
「おうそうだな。もう時間ギリギリだ」
クロードが時計で確認する。門の前ではシュレイナが立っていて僕らも門の前に到着する。
「やっと着いたわね、じゃあみんなで門を開けるわよ。せ~のっ」
『あの、ちょっと待ってください!』
門を開けようとした瞬間にどこからともなく声がする
「え、何、敵?」
僕らが振り向くとそこには金髪でショートヘアーの青い目の女の子が立っていた。外国の人だろうか、それとも天界の人?
「何よあんた?」
シュレイナが前に出た。
「あ、あの別にあなたたちと戦うつもりはありません、時間が時間ですし……」
確かにあと十分ほどで僕らは強制失格になる時間だ。ここで戦ったらたとえ片方が勝利したとしても時間切れになってしまう。じゃあ一体……
「も、もし火の石が3つ以上あるなら……一つ譲っていただけませんか?」
「「「???」」」
「自分が無理を言ってるのはわかってます!でも私たちにはもうこの方法しかなくて……でももう何人にも断られて」
その子はとても必死だった。でも何でこの子一人なんだろう。自分のパートナーは、とそこへこの子のパートナーらしき人が現れた。
「もういいのよ『アリシア』。今までも無理だったんだから今回は運が悪かったのよ、ごめんなさいねあななたち、私たちはもうここで失格だから先に行ってちょうだい」
その人はもう完全に諦めていた感じだった。運が悪かった?一体何があったんだろう。助けたいなぁこの人たちを……あ、そういえば。
「悪いけど、あたしたちは3つしかもってないわ。せっかく会えたけどここでお別れね」
「待ってシュレイナ!確かあったよね、もう一つ火の石が」
「え!?本当ですか?」
「はい、今手元には無いです、けどある場所は知っています。僕が今から……」
しかしそこへシュレイナの言葉が遮った。
「ダメよ悟っあんた自分が何言ってるかわかってるの?」
わかっている、その火の石を取りに行けば僕は確実に失格になる事だって。でも僕は……この人を助けたい!
ここで新キャラ登場です。そしてここでもまた悟君の優しさが悪い方向へ向かおうとしています。でもそういうキャラ……私は嫌いじゃないです。次回は悟とシュレイナが活躍します!クロードはちょっとお休みです(笑)
感想待ってます!!