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花のなまえ

記憶がいい加減だ。

しかも日本の花の種類は記憶が薄れ、もっと曖昧になって来ている。


牡丹と芍薬が、同じ仲間なのだと、辞書を見てわかった。

葉の形、花弁の形が日本のものとこちらのものでは違うので、頭の中でどんどんごちゃ混ぜになって行く。

サツキや椿、木瓜ぼけなどは同じ種類だと分かるけれど、ここでは、みんなカメリアだ。

~ジャポニカ とラテン語で名前が付いているものは日本から来たのかと思うけれど、お花が咲いてみると、日本でなじんで来たものと微妙に違っていたりする。

もしかすると、日本で見ていたものは品種改良されて変わっていたものだったのかもしれないし、或いは、あちらは原種に近かったのに、こちらに入って来てから気候や空気、水、日照時間などの条件の違いで変化したのかもしれない。


面白いのは我が家の立ち葵で、白にピンクのグラデーションの入った一種類しか植えていないのに、いろいろな色の花が咲くことだ。

真っ白いのや赤やピンク。

さすがに黄色い花が咲くわけではないけれど、みんな赤くなるのでなければ、酸化しているという訳ではないのかもしれないと思う。

そう言えば、木瓜も白い花で置いておくことは難しいのだそうで、すぐに赤く変化してしまうらしい。

私は白い木瓜を持っていたのだけれど、冬の寒さで枯らしてしまった。


お花は改良され、どんどん品種が変わって行くので、深く興味を持って追いかけているのでなければ、すぐについて行けなくなる。

それでも、バラの花の原種に近いものは香りがあるが、改良されて珍しい色のものには香りがなかったりするので、見かけにばかり気を取られると、後でがっかりすることもある。

我が家の勝手口の前に咲く白いバラの香りはとても強い。

夏には、枝だけでは支え切れないくらいたくさん花を付けるのだけれど、どういうわけか寒い冬にも、いくつか花を付ける。

あ、そうだ。

このフレーズは、もう何年も前に、以前欧州にお住まいだった、とある日本人男性の書かれた一文と同じだった。


「そう言えば、どういうわけか寒い冬にもバラの花が咲いていたのを憶えているよ」

女性の口から聞いても自然に聞こえるだけの、何でもないフレーズが、男性の手によって書かれることで、急に色気を感じられたりする。

きっと男性にとっては逆のこともあるのかもしれないと思うけれど、そこはわからない。


この「色気」も、理解できるようになって来たのは、ほんの最近のことだ。

そして日本人の好みが常に、薄い、仄かな、淡い、さりげなく、そこはかとなく……であったということも。

でも今は、外国の大胆さとか強烈なものが入り混じって、それも違って来ているのかもしれない。

或いは海外に出ると、人も花と同じように変わって行くような気がする。

一昔前の自分が懐かしいことがあるけれど、決して元に戻れるというわけではないのだろうと思う。

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