第三十六話 萌ちゃん!?
窓の外を見ると、空はすでに暗くなっている。玉緒さんの反応的に、俺の携帯に連絡したのは最上さんだ。
でもなんでこんな夜に、俺を誘って……いや、今はそんなときじゃない。
どうすれば、このロープから脱出できるのか。
周りはどうみても一般の女の子の部屋で、ロープを切れる刃物なんてあるはずがない。
「ていうか玉緒さん……俺のこと、『大好き』って言ってたよね?? なんでだよ……俺べつに玉緒さんにそんな親しいことしたことないし」
好きって言ってもらえるのは…………だ、ダメだ! 俺は今、最上さんと付き合ってる。今はここを脱出しないと。
さっき玉緒さんは俺を縛っているロープを少し緩くしていた、もがいてみればいけるかも。
俺は手を縛っているロープを外そうと、ゴソゴソ手を擦る。
「い、いけ! うっ……!!」
ダメだ。ギリギリ抜けないように仕込ませている。
トントントン。軽い足音が部屋の外から伝わってきた。
「誰か、帰ってきたのか? 玉緒さーん?」
頼む。俺をここから離してくれ。肩が痛いし、座りすぎてお尻が硬くなっている気がする。
部屋の扉の前で、足音が止まった。
玉緒さん、じゃないかも。
「あのー? 誰かいますかー? 俺を助けてください」
カチャ。扉が開かれる。しかし俺の目に映ったのは、小さな子どもだった。
「も、もも、萌ちゃん??」
「千里兄ちゃん……助けに来た」
は。なにこの状況。俺は玉緒さんに縛られて……萌ちゃんが助けに来た。
「ゆ、夢か! ははっ、気持ち悪い夢だわ。まあ、早く現実の俺を呼び覚ましてくんねえかな」
「千里兄ちゃん……頭、イカれちゃったの?」
夢、じゃない?
「萌ちゃんは、なんでここにいるの?」
「うーん。家にあるカメラに気づいて、居場所をたどってみたの……で、ここに来たの」
カメラ? 最上家で? どういうことだ?
「萌ちゃん、家に隠しカメラがあるのか?」
「うん! 家でうろうろしてたら、見つけたの。今から千里兄ちゃんのロープを外すよ」
萌ちゃんは俺に近づき、こすこすとロープを外してくれた。柑橘の香りが漂ってきて、萌ちゃんの顔が寸前に――。
にしてもおかしいよなー。なんで小五の子が家の隠しカメラに気づいて、ここまで追跡したんだ?
いや、それよりも最上家に隠しカメラがあることが一番まずいし、今、最上さんが危ないかもしれない。
「兄ちゃん、外したよ」
「ありがとう」
やっと体を動かせる! 俺はイスから立ち上がって肩を伸ばす。
「疲れたー!」
ピコン。俺の携帯の着信音だ。
あれ……玉緒さん、俺の携帯を持っていってないんだ。俺は携帯を取って、ホーム画面を見つめる。
白井から……!!
『泉!! 早く駅前に来て!』
俺はすぐさま萌ちゃんを連れて、この家から出る。
近くの道は初めてみるが、スマホのマップを見ながら、ようやく見慣れた街中につく。
「駅に行こう、萌ちゃん」
「うん」
しかし俺の背後から、ある足音が伝わる。
聞いたことある、あの男の声が俺の背筋を冷やす。
「やっぱ最上萌、君は飛び抜いた天才だ。泉さん、君も――」




