第三十四話 第二の事件
第三十四話
「金沢、なんで。どういうことなの??」
こ、答えてくれない。玉緒さんも金沢も沈黙して俺を見つめている……まさか、本当に恨みを買っちゃったのか。
「ごめん、玉緒さん! じつは一ヶ月前……君が落とした輪ゴム、俺が拾って返さなかったんだ! 家に帰って今から返すよ」
クゥー……いつもポニーテールだから髪を下ろしているところ見たかっただけだよ。
めがね越しに彼女のやわらかい目が見える。怒って、いないのか?
「私の輪ゴム……欲しければいくらだってあげるわ。ふふ、うれしいわ、私のことそんなに気にしてくれて」
「な、なんで??」
「安心して、泉くんの携帯で親に連絡しておいたの『今夜は友達の家でお泊まりする』って。今日の夜、いっしょにごはん食べよ」
「待て待て待て! 説明してください、なんで俺を縛ってんのか、なんで金沢がいるんですか? あと、俺のスマホのパスコード……!!」
金沢は一歩、俺に近づき、ゴホンと咳払いをして声を整えた。
「僕は泉さんの仲間であるって……いつ言いました? まあ、所詮は勉強しか頭にない男ですし。咲良さんを助けたのはうれしいが、最初に言った通り僕は君を気に入ってない」
「は……?」
「泉さんと玉緒さんの勉強カップル、僕と咲良さんの優秀な家系のカップルを組んだ方が、お似合いですよね? たまたまその考えが玉緒さんとかぶって、今は共に行動してるわけだ」
こいつ、やはり最初から最後まで悪いやつだった! しかも玉緒さん、なんで金沢と企んで。
「人を眠らせる薬は僕が提供し、玉緒さんがチョコレートに入れたそうですよ」
クソ……なんだかわかったようで、なにもわかっていない。それよりも玉緒さん……なんで俺を。
ピコン。勉強机から着信音が聞こえる。
いや、あれは俺のスマホの着信音だ。
「泉さん、玉緒さん、僕は帰ります。お二人の邪魔はしたくはないので」
「ええ。ありがとうよ」
ありがとうよ、じゃないよ!!
金沢は部屋から出る。この玉緒さんの部屋という空間、静寂に包まれる。
「玉緒さん、俺のスマホ、返してほしいです……」
「ふーん。私、さきに見るよ」
「ちょっと! なんで俺のパスコードを」
「泉くんの誕生日を入れてみたら当たったの! 私、天才でしょ」
なんともいえねえ……俺言ったことあるっけ、玉緒さんに誕生日を。
玉緒さんは俺の携帯を持ち、じっとホーム画面を見つめ――頬が赤く染まる。
「最上……咲良!!」
「俺にも見せてくださいよ!」
しかし玉緒さんは俺を無視して、部屋の扉に向かう。彼女が離れる前に、こう言い残した。
「ちょっと……待っててね」
玉緒さんの声がすごく震えていて、がんばって笑顔を保とうとしているが、目からの殺気が溢れている。
最上さんと、会いに行くのか? それに金沢も加勢してしまうと、最上さんは――。
俺から遠ざかってしまう。




