第三十三話 許さないわよ
――玉緒さんの少し前の話――
私のわがまま、お嬢様的な性格を唯一、受け入れてくれる泉千里が、だんだんと最上咲良という泥棒猫に盗られてしまう。
ある日、私は密かに彼らの後ろをついていった。
◇
「今日のデートさ、楽しかった?」
「楽しかったですよ」
「じゃあ、明日もデートしない? 明後日、明々後日……一週間ずっと……」
◇
最上咲良……なんで君は私ができなかったことを、平気にできるんだよ。
アンタは軽々と泉くんと付き合い、なにも考えずに楽しい思いができる…………でもそんな泉くんは私にとって唯一の存在なの。
お勉強もできて、ちょっと面白いことを言ってくれたりして、私を受け入れてくれる王子様なの!
アンタは学年一位の美少女だから泉くんを奪えられた……でも私の気持ちも、考えろよ!!
許さない、許さない。
――泉千里の現在の状況――
意識がだんだん戻り、重たいまぶたを開く。なんだか長い間、眠りについたな。
しかし俺の見慣れない環境が目に映る。そばにウサギのデザインの可愛らしいベッドがあり、壁のペンキはピンクに塗りつぶされている。
でも、体が動かない! 俺は今、イスに座り、体がロープに縛られているのか。
そ、そうだ! 玉緒さんのチョコ、なんか食べたら眠くなってたんだけど。
カチャ。部屋の扉が開く。
制服姿の玉緒さんがトレーを持って近づいてきた。
「あっ、起きたんだね」
「『起きたんだね』じゃないですよ!! なんですかこれ」
「ごめーん。痛いかな? ちょっと縛りを緩くしてあげるわ」
は? なんで玉緒さん、俺を監禁してんの?? 恨み、買ってないよね俺。まさか超酸味のチョコを食わせただけでブチ切れたとか?
「泉くん、ぜーんぶ、最上さんのせいだからね。君も私も悪くないの」
「は? なにを言っているのです?」
「約束してくれる? もう二度と最上さんと関わらないの」
なんでだよ。いきなりどうしたんだよ!! 一回冷静にならないと……って! 玉緒さん、なに持ってんの??
彼女はトレーから一切れの茶色のケーキをとり、俺の口に送る。
「安心して、ちゃんと私はこのケーキとさっき食べさせたチョコには、高級な材料でつくったからね」
「そこ気になってませんよ!!」
ハムッと、そのチョコの味が俺の口の中に広がる。
甘くて、濃厚で、ちくしょー! うまい!! 今はそんなときじゃないのに!
「おいしい?」
ここは素直に認めたら、俺を解放してくれるかな。
「……うん」
「ふふ。泉くんの幸せな顔、大好き」
は?? 今、玉緒さんなんて言った……? 大好きって、俺ら、そんな関係じゃないし。
コンコン、と部屋の扉からノック音が聞こえる。
「あっ、入ってきていいわよ」
カチャ……現れた人物は、思いもしなかったあの人だった。
「金沢ぁ!?」




