第三十二話 ごめん、やっぱこいつの方がやばいかも
「しゅっぱいよ!! な、なに入れたの?? この下品者!」
下品者はひどすぎだろ。まあ、おかしくない反応だな。
「俺は家にあるドッキリ用の飴を溶かしたんです。レモンをかるく超えたくらいの酸味ですよ」
「もー! ユルシャナイ……舌が……ヒリヒリしゅる……!」
まったく、玉緒さんの目から涙がこぼれそうだよ。俺はカバンにある水を取り出し、彼女に渡す。
「飲んでください」
彼女は瞬時にキャップを開けた。
「……ゴクゴク………………ぷあぁ」
「どう? うまいチョコですよね?」
「もう二度と泉くんのこと信じない! ふーん」
玉緒さんは顔をそらして、ポケットから小さな塊を取り出した。
それは丁寧に金色の紙で包装され、四角いものだ。
「私が作ったチョコよ……じっくり味わって」
「ははっ、ありがとうございます。そんな怒んないでくださいよー」
「いいから早く食べて! 早く!」
なんだか玉緒さんが怒っているところ、イジりたくなってしまうな。言っちゃ悪いけど。
包装を外し、中身の綺麗なダークブラウンが目に映る。
「じゃあ、いただきまーす」
パクッと、俺はチョコを口に入れ、ほんのり甘いチョコの味が広がる。
「ん!! うまいですね」
「でしょ。私は下手なものをつくるのが、逆に苦手さ!」
「ごめんなさい」
「え」
ベタベタとチョコがまだ口の中に残り、甘い味がたまらない、けど。
「俺、イタズラのつもりで玉緒さんに……」
「いいのよ!」
「なんで……?」
「ふふ」
味わってくれてうれしいから、私のほうがおいしいから満足だ、とか。
そういうのを言うと、思っていた――。
「なんでですか?」
「聞きたい?」
「うん」
「寝てもらいたいから」
は? と思ったその瞬間、まぶたが重くなり、思考が回らなくなる。周りの音も、聞こえなくなる。
「たまお、さん?」
そっと、倒れそうになる俺を彼女は抱きしめた。
そして、俺の耳元で、小さな声で。
「最上さんと仲良くしやがって……」
――玉緒さんが泉と出会う前まで――
「ねえねえ、玉緒? この問題教えてー!」
入学してまもない時の私は、よく勉強の面で人を支えてきたと思っているの。
私も笑顔で「いいわよ」と応える。
しかしそんな日が続く中、ある日、私が登校中のときだった。
廊下でこそこそと話している女子集団の声が、私の脆い耳に届いた。
「ねえ、玉緒ってさ、変な口癖あるよね」
「だよね! なんか変じゃなーい?」
「ちょっと気持ち悪いかもね。そうだ! うちのクラスの泉って人も勉強得意らしいよ、これからはその人に教えてもらおうよー」
「それいいね!」
私、不意に発する口癖が、彼女らが私を嫌がる理由となったのよ。
それ以降、いくら私から声をかけても。
「ねえ、この問題、教えようか?」
「いや、平気だよ」
と、冷たく返答される。しだいに私は授業だけでなく、休み時間、女子たちの会話の集まりにさえ、参加できなくなった。
しかしある日、あの奇妙な男が私のそばに来てくれたのよ。
「玉緒さん、この現国の問題、わかんないから教えてくれませんか?」
「……私で、いいの?」
突如な質問に、変な回答をしちゃった。でもすぐに切りかえないと。
「い、泉くんだっけ……この問題はね、前文じゃなくて……」
私を頼りにしてくれる、泉千里という人が勝手に私の世界に入り込んでしまった。
「ありがとうございます! 次の定期テスト、勝負しません?」
「ふふ、いいですわよ!」
まあ、何度勝負をしても、負けちゃうけどね。
でもそんな私を、彼は受け入れてくれたの。
でもある日をきっかけに、彼の目から私の姿がだんだんと消えていったの――。
「――あれ? 私、勘違いしちゃったかな? まあ言いづらいもんね。仕方ないから、君の最もかわいいお友達になってあげるよ!」
最上、咲良……!!
ひぃーひぃー(?)するようなお話になりましたよね! ぜひ気になった方は感想、評価のほうお願いします!




