第三話 むりやりつきあい
「なんで俺なんだよ! 君と付き合いたくないです」
「ダメ! 断っちゃダメ、ほんとうに付き合いたくないの? もっと考えてよ、少なくとも私は、彼女としては優秀な方だと思うよ」
最上さんは顔を逸らし、頬がバラの色に染まって言う。無茶振りを見てなにも言葉を思いつかない俺は、ただこの子を見つめるしかない。
「最上さんはなんで俺がいいのです?」
「……口が滑ったからだよ。優雅で上品な学年一位の美少女という設定でがんばってたのに、君に私は恋愛しか頭にない女の子だと言っちゃったじゃん」
あの自然な笑顔が溢れる最上さんの演技だったのか? まあ、最上さんは人の評価を気にしそうだし。
「秘密なら俺、口堅いから安心していいですよ。だれにも広めないので」
「ダメ!! もう言っちゃったから、私、恋愛したくなっちゃったよ。試しでいいから」
こんな理不尽なことある!? 俺の意見も尊重してくれよ。
「逆にいいのですか? 俺みたいなただの普通の男子校生と付き合って」
「もちろんいいわ、君も……なかなかカッコイイから自信を持ってよ」
カッコイイと言っているときの最上さんは、声が小さくなっていた。俺、まさかこの子を惚れさせちゃったのか?
そもそも突然の彼女の告白に、まだ頭が追いついていなかった。
迷いもせず断ってみたけど……どうしてもっていうなら付き合ってもいいけど……って俺なに考えているの! あんな傲慢のお嬢と恋人になってたまるか。
「最上、さん」
「うっ…………もう、オッケーってことね。泉、いや、千里くんこれからよろしくね、今日はもう帰る」
最上さんはダッシュで教室から離れた。まったく、今日は一体どういう日だったんだよ。
教室から出ると、俺の肩が急に、軽い痛みがピタッと伝わる。
「よっ! 泉」
「白井……まだ帰ってなかったのか?」
「そうだよ、まあ、あんな見たこともない最上さんの姿が気になっちゃってさ」
「さっき盗み聞きしてたの?」
最上さんは自分の秘密を俺に言ったのに、白井まで聞こえてしまったのか。
「まあまあ、最上さんが恋愛の頭だっていうことは秘密にしておくよ」
白井は怪しい笑顔でごまかす。俺は気にしない方がいいと思い、普通に彼と帰った。
「白井って最上さんのこと、かわいいと思う?」
「まあ、かわいいんじゃない? 彼女は甘いもの好きだし」
「なんで知ってるの? 別のクラスだから、知らないはずなのでは?」
すると、白井は後頭部を掻いて、ハハッと歯を見せて笑う。
「それは、まあ、好きそうじゃん。気にすんなよ」
「そっか」
次の日の学校、俺と最上さんのことが少々ニュースになっていた。
スマホを取り出し、クラスのグループチャットを開く。間違いなくグループがつくられてから、一番メッセージが爆発している。
『泉くんあの最上さんなんの関係だったの??』
『そうそう、最上さん泣いてたじゃん』
『まさかあの最上咲良と付き合っているのか?』
『うそでしょ。そうなるとこの学年の全員の男の子が泣き喚くじゃん』
「うそだろ……」
今日のイスに座る俺は、周りの人からの目線がヒヤヒヤと伝わる。
「おはよー。私の彼氏くん!」
「最上さん!?」
俺はイスから跳ね上がり、心臓がバクバクおどる。
「まだ緊張してる? まあこのかわいい最上咲良と付き合うもんね!」
「だからなんでそんなに容姿に自信があるんだよ」
最上さんは今まで出会った人の中ではかわいい……いや、この学年の中ならたしかに飛び抜いた方だ。
でもやっぱりその口が気に食わない。まず、告白の件でオッケーしていないはずだが。
「放課後さ――デートにいかないカナ??」
「無理です」




