第二十七話 最上家の国宝的人物!!
最上さんの母が言いたいことがあるって……悪いことしてないんだけど! でも、怖いよ。
最上さんちの別荘に近づけば近づくほど、足が重いよー!! 助けてくれ!
「着いたね! 今からドアをあけるね」
あっという間に扉の前に立つ。深呼吸、深呼吸しろ! 泉千里!!
カシャ。扉が開く。
中に……入ってみよ。
「おじゃま、しゃーす……」
手がぷるぷる震えて、心がドキドキする。高校の合格発表のときより緊張している!
シーン、と静かな空気が流れる。
「あら! 来てくれたのね、泉くん!!」
「ふぇ!?」
最上さんの母は見たことないほど笑顔で駆けつけてきた。
そして俺の手を、にぎっている!?
「本当にありがとう……ありがとうね!! うちのバカ娘を助けてくれて。もし泉くんがいなかったら、咲良はどうなってたんでしょう……」
「いえいえ! 俺こそいつも最上さんに支えられてますし」
「うちのバカ娘が迷惑かけちゃって……い、今までのこともごめんね。もう君たちの恋人関係には一切関与しないから、どうかうちのバカ娘をお願いするね」
最上さんの母は宝物を見つけた子どものように、目が光っていて、ギュッと俺の手をにぎって離さない。
なんで前まで仇敵に遭ったかのような目をしていたのに、今はそんなやさしいの!?
「でも……転校のことは?」
「そんなの、じゃ、冗談よ! 泉くんと一緒にさせるわ! あっ、そうだ、お腹減ってない? ごはん作ってあげる!」
「ありがとう、ございます……?」
まさか……いつも華々しい威厳ある最上さんの母が、俺にごはんを作る日が来るなんて……でもやっぱ怖さの余韻が残ってんだよな。
「千里くん! おいでよ」
最上さんはソファに座り、ポンポンと彼女の隣の席を叩く。
スッとソファに座る。やっぱ最上さんちのソファ……やわらかーい!
「いまさらだけど、うちの母さんは最上明里。怖かった父さんは最上暗次っていうの。せっかくだから覚えて欲しいなー」
「明里さんと、暗次さん。前から思ってたんですけど、やっぱお似合いですよね」
「ふふ。父さんは仕事に行ってるけど、帰ってきたら声をかけてね」
俺にとって怖かった二人だけど……根はやさしいんだよな、極端ではあるけど、最上さんのために思っているし。
パタパタ、と小さな足音が聞こえる。
「――姉ちゃん……!!」
だれ?? 今すっごい可愛い女の子の声が聞こえた。
でも、周りを見ても誰もいない…………てか足元がなんか触られている!?
最上さんは目がピカッと光り、俺の足元に向かって両手を伸ばす。
「もえー! そっちはお兄ちゃんだよー……姉ちゃんはこっちこっち!」
いつのまに!? 俺の足元に一人の小さな女の子がいて、俺のズボンを引っ張っていた。かわいらしいウサギのパジャマを着て……身長的に小学生か。
最上さんはその子を自分の懐に抱きしめる。
「千里くん、この子は妹の最上萌。小学五年生だよ!」
「かわいっ!」
最上さんにそっくりって感じだし、奔放っていうよりもあまり声を出さない子だ。
「ねー! 私にかわいいって言ったことないのに、妹にだけ偏愛しすぎじゃない??」
「いや! 別に俺は異性として見てないです! シンプルに動きがかわいいっていうか」
「ロリコンじゃん! 千里くん!!」
「違うって!!」
すると最上さんに抱きしめられる萌ちゃんが、じっと俺のほうを見て、目を光らせた。
「姉ちゃんの……旦那さん?」
――一方、白井の視点――
「よっ! なんの用だ、白井」
「ひまだから一応、聞きにきた。おまえは最上さんを救って終わるような都合のいい男じゃないのはわかってる。なにを企んでるの?」
俺はカレーの匂いが漂う小屋の中にいて、目の前の金沢を見つめる。
彼とは昔、よく会っていたな。最上さんにしつこくついていたときとか。まあ、断られたけど、彼の生い立ちはたしかにお金持ちで、父は探偵の仕事をしているらしい。
ここのカレー屋さん……裏では一部の人にしか受け付けない依頼か来る。
この人について調査してとか、まあアニメの世界でしか聞いたことない話だけど、金沢に昔、教えてもらった。
「そうだな。僕は最上さんを死なせたくないから川口を止めた。その件が終われば当然、僕と泉さんの戦いになるでしょう」
「んで、なにをしようとしてる? おまえ…………は? なにを」
金沢はふふ、と鼻で笑い、俺に一つの写真集を見せてきやがった。
最上さんの寝ているときの顔写真。
最上さんが球技大会で転んだときの写真。
最上さんが歯を磨いているときの写真……諸々。
「なんでおまえが持ってんだよ!」
「僕が欲しけりゃ、いつでも貰えるさ」
「なんで持ってんのかっつってんだ…………」
まぶたが、重い。スマホ……泉に金沢のことを……手が動かない。
「見ているからだよ。僕が、ずっと咲良さんを見続けるために」
なに、言ってんだ、こいつ。ねむい……なんで俺は意識が。
暗い、まずい。こいつ、なにか。
水……テーブルに置いてあった俺が飲んだ水が目に映る。
ここまで読んでいただきありがとうございます! 金沢くんもとうとう動きに出ます! ぜひ気になった方は評価、感想の方お願いします!




