第二十六話 最上さんの復帰
「最上さん……! なんでここに。親に呼ばれたんじゃないですか?」
最上さんは何事もないかのように、ふふ、と笑う。
「千里くん、今までありがとうね。あっ、これはお別れの挨拶じゃないからね。白井も久しぶり!」
白井は白目が出そうになる。ガチで呆れているじゃん。
「俺のこと、まだ覚えてるんっすね」
「へへ、ごめんね。私、少し千里くんと話したいから、帰ってもらえる?」
「ひど!! 一応俺もこの件に携わりました……よ?」
いや、おまえはなんもしてなかっただろ! 情報は金沢のものだし、最後の推測も俺がやったんだから……まあ、でも彼もがんばろうとしていたし、最後まで諦めていなかったけどな。
しかし最上さんはただじっと白井を見る。『早く出ろよ』と言っている目だ。
「もーわかりましたよ。お二人はいつもラブラブで……。これで失礼します。あ、ら、た、め、て、末長くお幸せに!」
「ありがとー! 末長く千里くんと居るよ!」
ちょ! 最上さんなにを言ってんの……て、手が震える……心がうるさい。
白井は店から離れる。最上さんは俺の隣に座って、満開した桜のように笑顔があふれる。
「なんすか……最上さん」
「今日、ありがとうね。私のためにいろいろ調べたでしょ?」
「…………うん」
喉に石が詰まったように声が出しづらい。
「あれれ、顔が真っ赤だよ? 声も震えてるし。やっぱ私のこと好きだったじゃん」
「…………」
「なんか言ってよー。好き? 嫌い? 二択で早く答えてよ」
なんでその二択なんだよ……つい前まで自殺しようとしてた女の子が、こんなにからかってくることある?
「ノーコメントで」
「キスもしたのに?」
「……やめてください」
あれは俺が悪い!! なんでかっこつけてキスとかしちゃったんだよ!! なんだよ『最上さん――俺は君を傷つかせないって約束したもんね』なにもかも恥ずかしすぎる。
「でもね、千里くんのおかげで、私は死なずにいられたし、命の大切さも気づかせてくれたし」
「俺のおかげって言わないでください」
「え」
「最上さんは人に優しすぎですよ。川口への償い、俺への気遣い。俺は最上さんが好きっていうより……そういう人を死なせたくないっていうか」
「そ、そっか……」
ガクンと最上さんの笑顔が固まる。まずい、落ち込んでいた人にかけるべき言葉じゃなかったわ。
「う、嘘ですよ! 最上さんはすき……いや、そばに居てくれるのはうれしいですよ!」
「そばに居てほしいんだー。じゃあ私もこれからずっと千里くんのそばに居るよー!」
やべえ……言えばいうほど俺が最上さんのことが好きみたいになってんじゃん。
「私たち、一度別れちゃったけど、もっかい恋人ってことでいいかな?」
「…………」
「黙秘は承認! これからもよろしくねー」
ダメって言えないよ……心もそう思っていないし、ダメって言おうとしても、体に止められる。
「あとあと! 千里くん――うちに来ない?」
「えっ!? これ以上最上さんの家に行くとご両親が……」
最上さんはプスッと笑う。
「いいの! 母さんが言いたいことがあるって」




