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俺にブサイクと言われたら学年一位の美少女がなぜか懐いてきた  作者: 雪方ハヤ


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第二十三話 誰にも傷つかせない

 金沢は写真の中の笑っている最上さんを見つめる。彼は眉間にしわを寄せて、俺と同じ心がむずむずしているだろう。


「泉さん。川口はあえて三月九日に近いこの時期に学校に来たと思う。そうすれば、咲良さんになにか影響を与えられる」


 なるほど、川口がいきなり球技大会で復帰してきたのも理解できた。


「なんで金沢さんは俺たちにこんな情報を教えてくれるの? 最上さんが心配とはいえ……一応、恋のライバルって思わないの?」


「この件は、恋愛とかの問題を超えたものだと思う。俺の予測は君たちには教えられない。確信を持っていないから」


 教えてくれない? 恋愛の問題を超えたってなに。


 数秒、沈黙がつづく。


「泉さん、白井さん。明日、申し訳ないけど学校休んでくれ。午前中に駅の前で待っててほしい」


「なんでだよ! 無断に休むのは怒られるかも……」


「泉さん! もしこの件が解決したら、咲良さんは僕の彼女になるよ?」


 クソォ! 冗談じゃなさそうなのが腹立つ。なんで俺は心がざわつくんだ? 昔なら、簡単に学校を休んだりしないのに。


「わかったよ!」


 最上さん……! この件が解決したら、タダじゃ済ませないよ。


「僕の予測が外れていればいいんだけどね……」


「金沢、俺たちは教室にもどる。また明日な」


「うん」


 そして――。


 三月九日まで、残り一日。


 先生には電話で体調不良と伝え、両親にも頭が痛いから病院に行くと言った。


 俺が向かった先は、学校近くの駅だ。隣に最上さんと行ったカフェがあり、人の騒ぎ声が混じる。


「おはよ、白井、金沢、ごめん、遅れたわ」


 俺たち男三人は、徒歩数十分。俺は一度見たことある公園に着く。


「ここ、最上さんと来たことあるよ」


 俺がそう言うと、金沢は驚いた表情で、口がかすかに開く。


「まじ? 泉さん、ここで、咲良さんとなにか話した?」


「いやー。特には……いや、最上さんを傷つかないようにするって言ったのにできなくて」


 俺は頭の中のわずかな記憶をひっぱり出そうとする。


「それで最上さんが『千里くんはなにも悪くない』……『私の両親も、私のために思ってて悪くない』って言って……急に話を止めたな」


「なるほど、やっぱこの静かな場所だからこそ、彼女は自分自身を見つめ直せる、か」


 俺はあたりの自然を見つめ、静寂でなんの声もないこの場でボーッとなる。


「泉さん。もうここまでにしよう」


「え?」


「僕の予測だと、咲良さんは君と別れて、ここで川口への償いのために、正式な恋人関係を結ぶことになると思う」


 俺の心が、ギュッと絞められる。金沢も残念に思うように頭を下げた。


「最上、さん……白井、帰ろうか」


「ああ、泉と最上さんの恋物語を見届けたかったのにな」


 金沢も、はあ、と息を吐く。拳をにぎり、唇を噛む。でも彼も諦めた口調であるセリフを言い残し、公園の出口に向かう。


「――これは咲良さんの選択だ。尊重しよう」


 俺は家に帰る。


 そして、体が空っぽのようになる。俺はパタっと、外着のままベッドに倒れる。


 もうなにも考えたくない、のに。


 ◇


「まあね、恋愛が禁じられる家庭にいても、千里くんなら私を幸せにさせてくれそうだもん」


 ◇


 最上さん……を幸せに。


 違う。なんか、おかしい。


 俺はまぶたを開き、再び頭をトントンと叩く。


 川口があれだけ最上さんを脅迫したのに、ただ恋人になりたいだけ?


『最上さんは恋愛禁止の家庭で過ごしている』

『学校では端正な美少女設定。しかし裏は恋愛の頭脳』

『川口は最上さんと恋人に近しい存在だった』


 川口の期待を裏切った。

 両親の考えを背いて、何度も俺と会い、厳しい罰を与えられた。

 最上さんは端正な美少女の設定に一年間もがんばってきている。

 俺が最上さんの両親に罵られたとき、彼女は何度も俺の機嫌をうかがっていた。


「いきなりキスを求めてきた日……なんだか急いでいる人みたいだったなー」


 まるで俺が最上さんの彼氏で居るのは、急いで成し遂げたかったみたい。


 しかし答えが出ないまま、意識が落ちていく。思考が途切れた。


 まぶたが重く感じ、眠りにつく――。


 何時間経ったのか、俺は再び意識がもどった。


「…………はあー……」


 大きなあくびをして、目覚めた俺はスマホの時間を見る。


『三月九日 午前四時二十一分』


 俺は寝起きにも関わらず、最上さんのことで頭がいっぱい。


 でも、そんなとき、ふと彼女のあるセリフを思い出す。


 ◇

 

「千里くんはなにも悪くない。私の両親も、私のために思ってて悪くない」


 ◇


 彼女のやさしさなら、彼女自身の両親も、俺も、川口も傷つかない唯一のやり方で。


「…………まさか。いや、最上さんがするわけ」


 川口への償い……それに俺と急すぎた恋人関係の成立。


「最上さんが、消えれば……」


 俺はベッドから立ち上がり、整頓もせずに家から飛び出る。


 間違っているかもしれない。でも間違ってくれ。


 最上さん、すべての責任を背負うつもりかよ。


 彼女自身が居なくなれば――。

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