第二十話 泉千里の推測
謎は二つだけ。
――最上さんと川口の関係。
川口は最上さんに対して異常な気持ちを抱いている。
それに球技大会の日、最上さんは彼の姿を見て唖然となっていた。
――三月九日について。
間違いなく、最上さんと川口はその日になにかしようとしている。
俺は自宅の勉強机で、一枚のルーズリーフを取り出してそうメモした。
「最上さんと川口……最上さんがやらかしそう『罪』は思い当たらない。強いて言うなら白井が最初に言っていた……」
◇
「最上さんは彼氏いないらしいけど、告白されたら結構、塩対応されるって噂にながれてた」
◇
最上さんの異常な反応もあったため、仮に川口はかつて最上さんの追求者だったとしよう。
今のもっとも大きな疑問は――三月九日。
「ふーん」
ここまで推測できる――さすがこの俺、名探偵イズミ。しかしここで行き詰まりだ。
思考が止めると、俺はいつも最上さんの笑顔を思い出す。
◇
「まあね、恋愛が禁じられる家庭にいても、千里くんなら私を幸せにさせてくれそうだもん」
◇
ふざけた笑顔……ずっと見届けたかったのにな。
最上さんの背景のことも考えてみよ。
『最上さんは恋愛禁止の家庭で過ごしている』
『学校では端正な美少女設定。しかし裏は恋愛の頭脳』
『川口は昔の追求者――――』
つまり、最上さんはかつて、川口の好意を背き、嫌な思いをさせた。
この俺が思い浮かぶ唯一の仮説、信用できるかな。もし間違えれば……最上さんに迷惑をかけてしまうよな。
でも三つの背景を探っても、最上さんが三月九日になにをしたいのかがわからない。
それに今日を除いてあと五日。リミットが来ている。
「ふぅー」
単純な女の子だと思っていたが、最上さんはところどころが謎だ。なぜ俺を彼氏にしたのかも、なにをしたいのかも。
プルプル。スマホが鳴る。だれかが電話をかけてきた。
スマホを取り、見たことある携帯番号が目に映る。
「もしもし、泉です」
『千里くん。今日はごめんね、怒鳴っちゃった』
向こう側から落ち着いた声と、なにかの覚悟を決めたかのような気持ちが混ざっている。
「最上さん、大丈夫ですか?」
『あとでひまかな? さいご……あっ、ちがう。会いたいんだよね』
「ああ、はい。じゃあ駅前で」
俺は駅のほうに向かい、あの二つの謎を思い出す。聞けるなら聞いてみよう。
いざ駅につく。彼女はすでに俺を待っていて、カフェのときと同じように制服で来ている。
「最上さん」
「千里くん! 今日はごめんね、一つ、お願いがあるんだ」
「なんですか? 顔が赤い、ですよ?」
最上さんは目を逸らし、足がぷるぷる震える。まつ毛がピクリと跳ねる。
そして覚悟を決めたように、ゆっくりと目線を合わせにきた。
「キス、しないかな。ここでじゃなくていいから、別のとこで……」
「は」




