第十五話 緊急、最上さんを喜ばせる方法とは?
球技大会の日、あのアクシデントの後に俺は家に帰った。リュックを置き、勉強机に向かう。
◇
「じゃあ、明日もデートしない? 明後日、明々後日……一週間ずっと……」
「あれれ……これってもしかして、私との恋人関係を認めたってこと? ロマンチックだねー『守る』とか言って」
◇
教科書のページをめくる手が止まる。文字を読んでいても最上さんの面影が現れる。これってまさか。
たしかに最上さんは少し傲慢で……最初は嫌だったけど、しだいに慣れていき……本当にかわいいと思う場面が増えた。
慣れてきたとはいえ、まだ謎がある。
◇
「ちゃんと自分の考えを言える千里くんなら、私と対等な恋愛ができるんじゃないかなって思ったのよ」
◇
理由としては成り立つけど、おかしい。俺じゃなくてもいいっていうか。
ピコン。スマホの通知音が鳴る。最上さんからのメールだ。
『明日ってひまかな? よければ一緒にあそぼ』
明日は土曜日、いろんなことを聞いてみよ。でも親から厳しく制限されているかな。
『どこで遊びますか?』
『近いとこだと両親にバレちゃうから、明日の九時に駅前にいて欲しい』
『わかりました』
彼女と関わってから約一週間。まだ俺の敬語が離れられない。最上さんはどう思っているのだろう。
最上さんの笑顔を思い出すと、心が暖かくなる。
あの笑顔……ちょっと自慢げに笑う最上さんの姿が見たい。滑稽でもなく、別に面白くもない。でもそれを見ると落ち着くと言うか。
俺はスマホの検索アプリを使い、『女性と遊びにいくとき、なにすれば喜ぶか』と打ち込む。てきとうに一つのウェブサイトを開き、文字を読む。
『女性のことを褒める。女の子は褒め言葉に弱いんだ! 衣装やメイクなどをベタ褒めではなく、説明するように褒める。リップ変えた? 色が個性的だなど』
なるほど、最上さんがうれしがる言葉を……でも言葉だけでいいのかな。
『プレゼントを用意することでサプライズ感を出そう……遊びならお花を贈ったり、手作りの料理を作ってあげたりするなど』
お花だとなにを買えばいいかわからないし、古臭い気がする。
手作りの料理か。家庭科の授業で学んだことを、たまに自炊に生かしているけど、悪くないアイデアだ。
でも、最上さんってなんの具材が好きなのかな。まあいいや……明日、弁当をつくってみよう。
次の日の朝。本当だったら今頃の俺は数学のワークを解いていた。
しかし今日はキッチンに立ち、フライパンをにぎる。
「よし……やるか」
※
弁当は自分のものを使っている。いつもは自分で作ったものを食べるから、他人から見ておいしいかどうかわからないけど。
いざ約束の時間にやってきた。まだ日が明るいとはいえない時間帯。
最上さんは駅のホームで携帯を触っていた。彼女のツインテールに、純白のワンピースを着ている。人並みの多い駅では光っているようだな。
「おはようございます、最上さん」
「おはよー」
俺は昨日のウェブサイトの記憶がぐいぐい脳内に蘇ってくる。
「最上さん」
「なあに?」
「最上さんの口紅、みずみずしくて、よく似合ってるよ。素敵だと思うよ」
「ふぇ!?」
最上さんのルージュに包まれたぷっくりな唇が、ぷるぷると震える。
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