第十四話 最上さんを狙う者?
「泉、なにボーッとしてんだ? 試合開始したよ」
川口は俺の体調を伺っているように声をかけた。しかし遠くにいる最上さんを見つめ、俺の心がなんかうるさくなってきた。
サッカーのゲームが進行する。こちら側は主力を置いていないにも関わらず、攻撃が順調に進む。
「泉くん! 受け取って」
味方の女子からパスをもらった。
足元の技術がない俺でも取りやすく、相手側のゴールに向かって、矢のように駆け抜ける。
「千里くん、通させないよ!」
最上さんが俺の前に立った。俺は唇を軽く吊りあげる。
しかし最上さんをどう抜くかを考えた途端に、相手チームの男が接近してきやがった。
しまった……二対一はまずい、どこかにパスしないと。
「……!?」
しかし相手の男は、俺ではなく、最上さんを押し倒した。
パタッと最上さんは砂の地面に倒れ、俺の足の動きが止まる。
「キャッ! なにしてるの??」
「最上さん……!」
同じく生徒の審判に目を配るが、笛は鳴らない。しかし相手の男は男に近づき、俺だけに聞かせる声でささやく。
「よかったな、今回は泉のクラスの勝ちが確定したよ」
「なにを言って……」
すると相手側のゴールに、川口がいた。彼は「泉くんパス!」と言い、俺は考えもせずに彼に向かってボールを蹴った。
川口はボールを止め、軽くシュートする。遮るものなくサッカーゴールネットにボールが当たった。
おかしい。なんで、相手側の選手が、最上さんを……それに他の人もやる気がないように、ただ歩き回っているだけ。
川口がゴールした後、ようやく審判の笛が鳴った。
「ただ今のプレイは四組チームの子が最上選手のことを敵だと勘違いし、誤ったプレイをしたそうだ」
審判はそう言い、あの違法プレイをした男にイエローカードを取り出した。
再びプレイが始まる。しかし俺もやる気を失い、ただその場で立ち止まった。
「泉くん、最上さんを見て……かわいそうだね」
「……!?」
川口がいつのまにか俺のそばに佇んでいた。彼は砂塗れになった最上さんに指をさす。
「最上さんが倒れてる姿、見たくないよね? 僕も見たくない」
「なにを言ってるの? 川口、なにか知ってるの? 相手おかしいよね?」
川口はいつも通りの笑顔を見せる。しかし俺は頭が殴られたかのように嫌な感覚が燃え上がる。
「安心して。泉くんになにかあるわけじゃないから」
「おまえ! やっぱなんかしてるだろ?」
「そんな目で見るなよ。別に最上さんを殺すわけじゃないし」
川口の笑顔がだんだんと不気味に見えてきた。この人、まさか相手チームの人になにかしたのか……それに最上さんを。
「――おい、止めろ」
ある男が威圧感ある声で場を抑えた。その正体は俺のクラスの担任――芦田先生だ。
「審判! アイツ明らかに最上を押し倒してただろ、試合中止だ。さっき押し倒したヤツ、俺のとこに来い」
試合は中止し、観客席を見渡しても沈黙になっていた。
あれ、最上さんの両親も退席していて、先生のところに審議しに行ったのかな。
俺はチラッと川口の方に目を寄せる。彼は眉間にしわを見せていたが、口元だけは笑っている。
「ふーん。泉くん、よかったね」
「おまえ……」
「僕のことを先生にチクっても、証拠なしでは勝てないよ」
俺が川口のことを先生に言う希望が崩れた。たしかに、川口が最上さんに手を出す理由なんて知らないし、彼が直接やった証拠はない。
「んじゃ、泉くん。僕は休憩席にもどるよ」
「…………」
くそ……川口、あれだけ信頼していたのに、最上さんに手を出すなんて。今後もなにかやってきそうだ。
「泉! 大丈夫か?」
「白井……」
サッカー後半組の白井が俺のところに駆けつけた。
「泉さ、最上さんが倒れてたの、見てたよね」
「うん……明らかにおかしい」
俺は川口が言っていたことの一部始終を白井に伝えた。白井も恐ろしく思う表情だった。
「マジか……川口の野郎、先生にチクっても無理だったら、俺が最上さんの両親に伝えとくよ」
「ああ、ありがとう」
今回、三組対四組の試合は中止となり、後日再開することになった。
そして、川口という謎に包まれた男を警戒しなくちゃならなくなった。
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