第十一話 球技大会 その一
「最上さんが無理やり俺を彼氏ってことにしたけど、最上さんが両親に責められたのは俺の責任でもある。両親には抗えないけど、これからの生活では俺が最上さんを守るよ」
と、俺は真剣に言ったつもりだ。こんなに俺のことを思ってくれる子を、もう泣かせたくなかったからかな。
「千里くん……!」
最上さんの目が光った。しかし彼女は再びいたずらの目を俺に寄せる。
「あれれ……これってもしかして、私との恋人関係を認めたってこと? ロマンチックだねー『守る』とか言って」
「ちょっ……心配してるだけです!」
あー!! なんで俺は『守る』とか言ったんだよ。アニメの世界じゃねえし、告白みたいになってんじゃん。
「私、嫌って言ってないよ。ふふ、彼氏に守られる安心感も、ずっと体験したかったよー。ありがとー」
今まで最上さんのもっとも純粋な笑顔が見えた。夢がかなったときのような、満足したような。
「今日もデートしよーよ! 千里くん」
「それは…………ちょっと、授業の準備してきます!」
俺は足を動かし、パタパタと小走りで逃げ出した。なんで俺はかっこつけて変なこと言ってしまったんだよ!
教室に戻ると、白井が悠々とイスに座ってスマホをいじっているのを見つけた。
「おはよう」
「お、おっはー、泉」
白井のことをわかったせいか、彼も俺も少々気まずい雰囲気になった。昨日のことを思い出すと、俺は彼に質問した。
「昨日さ……最上さん、両親からなんかされたの?」
「ちょ! 公共の場で俺のこと晒さないで」
白井は頭を俺に寄せて、声のボリュームを下げた。
「ここだけの話ね……もし最上家にバレたら殺されるに違いない」
「安心しろ、俺の口の堅さは知ってるだろ」
彼が口を開くのに少し時間があった。でも俺は何度も「頼む」と言い、やっとのことで情報を分けてくれた。
「咲良さんは……一晩中ずっと家訓をひたすら読まされ、寝る時間は一、二時間ほどしかなかったの」
「えぐ……」
あまりにも信じられないことを聞き、俺の思考が一瞬、遅れた。
「泉……咲良さんを狙ってるなら、もう諦めたほうがいいかも」
「べつに、狙ってるわけ……」
俺は言い返すのに迷いが生じた。最初のときとは違い、俺はだんだんと最上さんの存在に慣れたかもしれない。
「そういえばさ、今日から球技大会だね。泉はなにに参加したの?」
そうじゃん。今日は二月下旬にある恒例行事、球技大会の日だ。俺はたしか……バスケを選んでいたかな。
「バスケだよ」
「バスケかー。同じ種目じゃないけど、試合中に応援するわ」
「サンキュ、じゃあ白井もがんばって。俺は授業の……いや、授業ないもんね」
普段の生活に馴染んでいるせいじゃん。俺は思わず授業のことしか考えてなかったわ。
まあ、球技は苦手だし、てきとーにってわけじゃないけど、あまり動かないようにしとこ。疲れるし。
※
バスケの試合は体育館で行われる。コートは満遍なく使われていて、走るとキツそう。
ピー! とホイッスルが鳴り、試合が開始した。
相手の男にボールが渡り、俺は相手に近づける。すると、俺の瞳は観客席のある人に留まる。
最上さん!? 俺のこと、見ているのか。
「千里くーん! がんばってー」




