第十話 君は背負っているものが多すぎる
「あ、あの……この人は、私の彼氏なの」
「誰が恋愛していいと言った? 咲良、あとおまえ」
俺に目線が寄せられると、俺の体はピリッと震えた。
「はい!!」
あまりの緊張に、俺は体をまっすぐ正せた。
「俺の娘を狙ってんのか?」
こわい……怖いよ、最上さんの父、すっげえ怖い人だ。この男の目だけで俺を殺せそうだ。
「あの……」
「口応えすんな! 咲良、今から母さん呼ぶから、こいつ含めて家族会議する」
俺は最上さんのほうに目線を向くと、彼女も体が彫像みたいに固まっている。
「わかった、父さん……でも千里くんは悪くないの、私が」
「黙れ! 家訓すら守れねえ娘は嫌いだ」
「ごめん、なさい……」
最上さんの目が潤う。あんなに笑顔あふれる少女が涙を溢しそうになる。
俺だけ怒られていれば、最上さんは苦しい思いをしなくて済んだのに。
「咲良、あとおまえ……ここで待ってろ」
俺たちをそのまま待機させ、重たい空気が流れる。最上さんの父は俺のことを凝視し、まるで俺の外見から見える価値を探っているようだ。
しばらくすると家の扉が開かれ、今度は華やかな衣装を着た女性が目に映る。肌がよく保養されていて、けっこう若く見える人だ。
「母さん……」
「咲良、もう父さんから聞いたよ。本当に失望した……あと、こいつが君の彼氏か?」
最上さんはうんうん、とうなずく。最上さんの母は軽蔑な目で俺をにらみ、こうつぶやく。
「制服はシワがついている、髪型も整えず恋人の家に訪れる格好なのか? どうせ清潔感のない平凡な家の不器用だわ」
母のほうは父よりもさらに毒舌だったわ。
前に俺は最上さんにブサイクと言って、それが今度は彼女の母親の口から返ってきちゃったじゃん。
「母さん、千里くん……カッコイイじゃん」
「なにがカッコイイのよ! 咲良、私が前にお見合いで出会った子の方がいいでしょ。それはともかく、家訓を破った咲良には厳しい目をさせてもらうわよ」
「あの子なにもよくないよ! ただのお金持ちじゃん」
「咲良! 母に逆らうのか?」
すると最上さんの母は目線を俺に移す。
「アンタ、さっさと帰れ。もう二度とうちの娘に近づかないでくれるかな?」
本来なら迷いもせずに逃げてしまう。しかし俺はどうしても最上さんが心配だよ。
でも、最上さんは俺のことを見て、安心させるような笑顔をつくった。
「千里くん、今日は帰って欲しい……」
「わ、わかりました」
俺は立ち上がり、ゆっくり家の出口に向かう。一歩ずつ歩き、足が重く鉛が貼られているようだ。
扉を開けて、外に出る。ようやく俺は息を吐き、爽風が体に当たるのを享受した。
怖かった……この世にこんな厳しい親っているんだ。アニメにしか見たことなかった。
それより、最上さんが心配。俺は振り向いて閉まった扉を見つめる。
「最上さん……」
次の日の学校、俺は普段よりも早く着く。すぐさま最上さんのクラスに向かった。
友としゃべっている人もいれば、スマホゲームをする人もする。そういう人たちを通り抜け、俺は一人で孤独に座っている最上さんに駆け寄った。
「最上、さん……昨日大丈夫かな?」
しかし彼女は精力がなさそうに、がんばって微笑みをつくった。
「大丈夫だよ……心配してくれてありがとう。ごめんね、昨日、嫌な思いをさせてしまって」
最上さんの顔色が悪い。目の下にクマができて、声もいつものワンランクくらい小さい。
「最上さん、なにか罰を与えられたんですか? 顔色が」
「テヘヘ、私のために心配してくれて、うれしいなー。やっぱ私のこと好きじゃん」
最上さんはがんばって普段通りに俺をイジろうとしている。
「最上さん」
「なあに」
「ふざけないでください」
「テヘヘ」
俺がそう言っても、最上さんは唇の端を持ち上げている。
俺は拳をにぎり、最上さんを見つめる。
ほんと、自己勝手な子だな。なんでこれで学年一位の美少女になれるんだよ。
「これから、最上さんを二度と傷つけないようにがんばります」
「私『を』?」
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