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不動産屋の憂鬱

元自衛官であり、現在は不動産営業をやっているナガサワ。

彼は上野公園の中で活動している自警団(実際はマフィアである)と地元警察の間を取り持つという一番面倒な役回りを押し付けられていた。


今日はJR御徒町駅南口付近で道路陥没があったらしい。恐らく違法トンネルによるものだろう。

するとナガサワが地元警察に代わって、難民組織のボスに向かって苦情を言いに行くことになるのだった。

知り合いの警察官から私用スマホへ連絡が入った日には、気が滅入る。着信履歴だけではなく、ショートメッセージも受信していた。

『御徒町駅南口付近での道路陥没発生』

自身のスマホでニュースサイトを探索してみると、果たしてJR御徒町駅南口の近くで道路陥没が発生している。しかも「何故か不自然な具合で上水道が引きちぎられたかのようになっていた」と記事にはある。

一応この知らせをくれた警部補に連絡を入れてみると、案の定

”難民さん達には困ったもんだねえ”

というボヤキともクレームとも付かない一言をまず浴びせられた。ナガサワ達も全くの無関係という訳ではないのだ。上野御徒町界隈で唯一上野公園を仕切る自警団と繋がりのある不動産営業といえば、ナガサワくらいしかいない。彼もトンネル掘りの件は事前に聞かされていた。

”ともかく俺、現場にいるからさ。ナガサワさん、後でこの話しましょう”

一方的に要件を言うだけ言って、こちらの言い分は聞かずに切ってしまう。K警部補らしいといえばらしいが、そんな事で腹を立てている場合ではない。面倒な事になってきた。K警部補は上野公園を仕切る自警団の親玉相手に『トンネルを勝手に掘るな』と警告を入れる積りだ。そしてその伝言を担うのは、この自分。丁稚じみた使い走りをさせられるのは不愉快極まるけれど、この警部補が直接難民に会いに行くとなれば色々と事がややこしくなる。

「また俺達が間に入って伝言とかしないといけないんですかね・・」

横でぼやいているのは、自衛隊時代からの付き合いであるウエハラという男だ。一見すると麻薬の密売人にしか見えず、上野公園の中に入ると怪しげなメキシコ人から矢鱈と話しかけられる。本人曰く同業者だと思われているのだろうと。細身ではあるが鍛えられた身体をしているので、そこら辺のチンピラであれば視線を合わせようともしない。自衛隊に居た頃からバディを組むことが多かった。生い立ちについてはあまり聞かされていないし、こちらから聞くこともない。社会の歪みが出てくる組織では、自分の家族構成だの生い立ちの話はしないというのが不文律だ。幹部自衛官の中には、自らが防衛大を卒業した瞬間に親戚一同からお祝いをされた者もいると聞く。『漸く自分達の一族からマトモな職業に就く人間が現れた』と。

ウエハラとは6年以上の付き合いとなるが、余りにも仕事以外での付き合いがない。別にそれはそれで構わないとナガサワは思っている。苦しいときも絶対に逃げ出さず信頼できる。ウエハラについては、それだけ解っていれば十分だ。

「ぼやくな、ぼやくな。それも俺達の仕事の内だよ」

ー本当にこの仕事で良かったのかな、と思わないでもない。

高校を卒業してからすぐ自衛隊に入ってからというもの、海外派兵ばかりが任務として振りかかってきた。陸上自衛隊だから勤務地はどうせ日本だろうと高を括っていたのがマズかったのか。聞いたこともない太平洋の小島で起きた暴動。そこに住んでいる日本人を帰国させる仕事に就いたあたりが、ケチの付け始めだった。長くても1任期2年で辞めようと思っていた人生プランは、早くもここで頓挫した。

在留邦人を港まで無事に移送させる任務に引き続き、現地に暫定政府が成立して、自前の軍隊が成立するまで平和維持軍としてオーストラリア軍やらインドネシア軍やらの御同輩と一緒に働いていたら、瞬く間に3年ほど過ぎ去っていた。今度こそ辞めてやろうと2任期4年を迎える丁度その手前で、南海トラフ大地震が発生してまた辞める機会を喪う。地震の後始末が終わって漸く国内が落ち着いてきたと思ったときには、入隊してから早6年を迎えようとしていた。世間であれば大学の中で恋に部活に酒にと薔薇色の日々を過ごしているらしいが、ナガサワにとっては18歳から24歳までの日々は、南国の糞暑い島でのPKO活動と、大地震発生による非常招集で目が回るほど忙しかった日々の記憶しかない。学がないしカネもなかった自分が、国家公務員として働いてまぁまぁな額の貯金まで貯められたのは意味があったとは思っている。

ーだがそれでも今の仕事はどうなんだ。下手したら自分の事を殺し兼ねない連中と交渉して、警察の下働きみたいな事ばかりやらされて・・。自衛隊にいた頃よりも状況は悪化していやしないか?

悲観のしすぎだった。今の彼は、東京都台東区は上野にある不動産会社の営業部次長を仰せつかっており、結婚して念願のマイホームも手にしている。未だにクルマを購入していないのは、何かあればママチャリか原チャリで妻は用事を済ませるせいだ。ナガサワ自身も職場でよく自転車を使うせいか、やはりクルマを購入する気になれない。それに一介の営業部次長としては、彼は結構な人脈を誇っていた。麻薬密売人の元締めとも話が出来れば、上野警察署の警部補とも話がつき、それでいて自衛隊時代の人脈繋がりでお偉方とも話が出来る。そういった奇跡的な人間だと思われているのだが、本人は周りから体のいい雑用係として扱われているという被害妄想を日々強くしているのだった。これはもう彼の性格としかいいようがない。

会社は昭和通り沿いにあって、その上を首都高速1号線が轟音を轟かせている。JR山手線の高架が首都高速の奥に見え、会社の入口から歩いて5分もしない所にJR御徒町駅がある。地の利だけで言えばまさしく最高であり、都心にあるといって差支えない。勤務先のビルは7階建ての自社ビルである。ただ仕事をする上で、そこまでの広さは必要ない。1階から3階までを自社で使い、残りの階層はよその会社に貸し出している。

「いってらっしゃい」

と勢いよく挨拶してきたのは、門衛として警備会社から派遣されている男だった。会社の入口に門衛など必要ないじゃないか、と長年言われてきたが、居なければ居ないでいつの間にかホームレスが居ついてしまう。或いは会社の入口近くに陣取って、春を鬻ぐために立ちン坊をする女だの客引きをし始める男だのも珍しくはなくなった。そうなると健全な客が会社にやってこなくなる。ここでいう健全な客とは、法律と契約書を守る積りがあって日本語で読み書き会話が問題なくこなせる人間を差す。次いでに前科がなければいう事はないが、最近の不況からしてそこまで求め始めるとお付き合い出来るお客さんが居なくなってしまうので、前科のあるなしは問わないことになっているのだ。

「行ってきます」

という時に思わず敬礼を返しそうになるのは自衛隊時代に染み付いた癖だろう。ナガサワは意識して昔の動作を無くそうとしていた。不動産営業をやっている経験上、厳めしい軍隊じみた振る舞いをして良いことが起きた試しがなかったからだ。

「誰も傷つきませんように」

「二人共生きて帰ってこれますように」

ナガサワは小声で小さく何回も何回も繰り返す。恐らくは自分でそれと気が付いていない。だが傍らにいるウエハラには、それを大袈裟だと笑う気には決してなれない。今日のお客さんは面倒な相手だ。何しろ公園の内側の住民である。「動物園の檻の中に入りにいくようなもの」と誰かが言い始めたらしいが、言い得て妙だとは思う。精々自分たちに出来るのは、殺されないように細心の注意を払うことくらいしかできない。

公園の中が無法地帯と化したにも関わらず、日本の役所は未だにその現状を認めようとしない。そもそも正式な難民居住区など存在しないというのが、現在における政府の公式見解である。今の日本は正式に難民を受け入れた訳ではない。アメリカに言われたために渋々難民が一時的に滞在するのを許可しているだけだ。だが何処の国だって、本音では難民を受け入れたくはない。同じくアメリカから中南米系難民を受け入れている韓国や台湾とは、いつも難民の押し付け合戦を繰り広げている。そんな状況でどうやって難民を日本社会に溶け込まればいいのだ。

現実に警察がやれることと言えば、壁の周囲を厳重に監視する位なもの。警視庁の捜査員ですら余程の事情でなければ、公園には立ち入ろうとしない。警視庁としても手練れの捜査員を殺されたくない。公安の連中が潜入しているという噂が流れてくることもある。実際の所は誰にも解らない。フェンスを1周するのが警察隊員たちのトレーニングメニューになっているという噂もある。これは恐らく本当だろうとナガサワは踏んでいた。朝方にはやけに筋肉の発達した角刈りの青年たちの一群が、隊列を為して壁の周りを走っているからだ。お揃いのランニングシャツと、これまたお揃いのシューズでもって、皆が一定のリズムで歩調を合わせて走る。ナガサワが現役の頃散々やらされた事だった。彼らの眼はどことなく優越感と使命感が綯交ぜになっており、そこが自分とは違う所なんだろうなぁとは思う。

「じゃあ、行こうか」

とウエハラに眼を向けると、彼は無表情に了解、とだけ呟いた。

ーおいおい、俺たちがこれから向かうのは戦場じゃねえよ

と冗談めいた口調で軽口を叩こうとしたが、命懸けの話し合いである所は大して変らない。

ナガサワはPKOで海外に送られたときには、使命感なんて持っている余裕はなかった。ただ目の前にいる日本人をまず空港だの港だのに送り込む。そのための機材とかクルマ(装甲車であればいう事はないけれど、そんな贅沢は言ってられないから現地でトラックを借りたり、打ち捨てられたクルマを徴発したりする必要もあった)を調達してくる。邦人を乗せたクルマをどういう陣形で守るのか。邦人を乗せたクルマを撃たれたら即座に射撃し返してもいいのか。そういった項目の一つ一つを本部にしつこく確認しつつ、全員無事なまま安全な場所へ送る。在留邦人への対処が終われば、次は難民の移送任務が待っている。地球温暖化によって太平洋のあちらこちらで住民が退避する羽目になった挙句、難民を何処の国が受け入れるかで押し付け合う時代の真っ只中だった。今日はあちらの島の住民500名を輸送機に乗せ、まずはインドネシアのスマトラ島にある基地へ。そこから15名はインドネシアに引き取ってもらい、35名をタイに、10名をマレーシアに、30名をオーストラリアに、残りの全部を日本へ連れていく・・・。そんな事の連続だった訳である。更に日本に連れて行って仕事は終わりではない。東京湾の中に新たに創設された出入国管理センターで一纏めに難民として登録させてから、日本各地の難民センターへ送り届ける。そこまで見届けて、初めて仕事が終わったと言える。そこから先の事は考えたこともなかった。誇りなど抱いている余裕などない。機械の部品にでもなったかのように必要な任務をこなすだけだった。

一方の警察は違う。彼らは基本的に国内で活動する。今回だってそうだ。警察の連中は上野公園の壁際までを監視しているものの、本当に危険な壁の中での任務は退役自衛官である自分たちに押し付けてくる。勿論彼らとて命がけの仕事をしているのだろうけれど、PKOをくぐり抜けてきた元自衛官の視線からすると、幾分お飯事じみた感想を拭えない。装備こそ現役の頃の自分達と似ているものの、まるで任務は異なる。だから内心、ナガサワは警察官を馬鹿にしている様な所さえある。


会社から歩いて御徒町駅の南口ガード下まで歩いてすぐだった。昔はここら辺に物乞いやら乞食やらは殆どいなかったものだが、上野公園から追い出されたせいか随分とホームレス達の数が増えたように思える。難民とホームレスを見分けるのは割と簡単である。難民連中はどれ程汚らしい恰好をしていようが、襤褸を身にまとっていようが、眼が死んでない。ホンジュラスだかエルサルバドルだか知らないが、少なくとも連中は危険な祖国からアメリカへ逃げるだけの気力とカネは持っていたのだ。一日中を上野公園の中で無気力に過ごしているホームレスなどとは体つきや心構えからして違う。だからという訳ではなかろうが、難民は自分達が生き残る為なら何でもやった。そういった難民連中が組織化していくのは解り切ったことではあった筈だが。

御徒町駅周辺では、また新しく歩行路面や車道に陥没している箇所が見つけられた。周辺には規制線が張られ、工事関係者と共に刑事じみた連中がうろついている。原因は解り切っていた。難民たちが無届けで掘るトンネルだろう。上野公園に住み着いた難民を壁で無理やり囲んでしまったせいか、連中は外部と自由に出入りする為にトンネルを掘り始める様になった。ここ1,2年で上野御徒町界隈の道路陥没が頻発していた。難民たちが自前でトンネルを掘る、といっても結局は素人の集団がやることだ。既存のトンネルやら道路やらに影響を与えないように出来るだけ深く掘り進めたところで、何かしらの影響が地表面に出てくるものだ。

「あぁ、長さん。こっちこっち」

K警部補のお出ましである。子供を手招きするときの様な声音と仕草なのは、自分の方が立場が上なのだ、と示したいからだろう。彼を見るとナガサワは目に見えて不機嫌になっていく。だが仕事上、関わりを持たない訳にもいかないのだ。

「これはこれは」

とナガサワの声がやけに平坦なものになる。ナガサワも大人なので、表面上のにこやかな表情は絶やさない。ただ仕事で仕方なく付き合っているというのは、互いに承知の上だ。持ちつ持たれつであった。例えば難民達が新しくトンネルを掘らねばならない場合、まず区役所を始めとする役所やら警察やらにお伺いを立てる必要がある。その際の窓口がK警部補だった。同じ役目の人間は、各役所にいるのだ。彼らに賄賂を渡したり便宜を図りつつ、お目溢しして貰える範囲を聞き取って難民に伝える。それがナガサワ達の非公式な役回りである。賄賂というのは渡し方が一番難しい。露骨なやり方で渡すと、最悪相手を侮辱することになる。だからこそ、ナガサワ達が上野御徒町界隈のマナーを難民に叩き込むのだ。誰に、どうやって、どのタイミングで渡すか。大事なのはそこである。

或いは上野公園や違法に掘られたトンネルの中に逃げ込んだ犯罪者やら麻薬密売人、更には麻薬密売組織の中の掟すら守れない馬鹿者を警察に突き出す際、上野公園内部に作られた自警団との折衝に当たるのもナガサワ達不動産屋の仕事だった。

但し警視庁の連中はやはり役人というか、基本的に『捜査に強力せよ』という態度で難民とも交渉しようとする。それでは難民は反感を持つだろう。纏まる話も纏まりはしない。だからナガサワ達が上手い言い回しで、恰も警察が難民に助けを乞うように言い繕うのだった。壁の中から外への犯罪者引き渡しはその様に行われる。

それでは不動産屋はどんな見返りを得るのかというと、強力な後ろ盾を得ることが出来る。面倒な客など何処にでも居るものだ。約束したカネを払わずに踏み倒そうとするなどは序の口であり、最悪ナガサワたちを人質にとってカネをせびろうとする輩すらいる。そういった場合、壁の外では警察が、壁の中では自警団が頼りなのである。或いは上野公園内部の自警団連中が、色々な技術者やら資材やらおカネを借りたいとき、彼ら不動産屋は「お手頃価格にて」提供するのだ。こういった手数料も積もり積もれば馬鹿にならない金額となる。

警察を始めとするお役所と、難民居住区内部に自然発生した麻薬密売組織の間を取り持つ役割を演じてきたとも言える。

それにしてもK警部補は、どうやればここまで小説かドラマに出てくる刑事然としていられるのだろう、という位には彼は刑事だった。つまり所々裾の汚れたコート(確かに今は12月だから着ていてもおかしくはないけれど、この男は一年中着ているようなイメージがある。そういえば去年の真夏に会ったとき、彼はどんな姿をしていたっけ)、にこやかに微笑みかけているようで実は抜け目なく観察しているその視線が嫌だった。一見対等に振舞っている様に見せかけて、実は自分が上だと事ある度に見せつけようとする。(いやぁ、俺が居て良かったねえ、長さん。他の警察官だったら大変なことになっていたよ!)

一見して磨き上げられている靴は、実は所々擦り切れていた。耳にはいつも用途不明なイヤホンを付けていた。ただ私服の刑事はほぼ例外なく耳にイヤホンを付けているので、これは別に彼のスタイルという訳でもないだろう。K警部補が訳知り顔で笑っているような表情には、いつも苛つかされる。自分も傍からみれば道化じみているとでも思っているのだろうか?

「やっぱりこのトンネル掘らしてるの、Fさんだよねぇ」

最近になって台東区でも麻薬による中毒患者が急増してきた。密売人の元締めは、メキシコ人のFという男らしい。ふざけたことに、「Fさん」という愛称しか知られていない。中南米系なので『フェルナンデス』といった感じの本名が付いているのかも知れず、だが誰に聞いてもどういった名前か知っている人間はいない。

「恐らくはそうでしょうね。Fさんの所で雇われているトンネル技師は、比較的腕が立つって話だったんだけどなぁ・・」

「どうせ、今日もこれから上野公園に行く所だったんでしょ?ついでに伝言頼みますよ」

ナガサワは顔の表面ににこやかな笑みを絶やさない様にするだけで精一杯だった。

ーどうせ。どうせとはなんだ。どうせとは。そこまで俺達がFさん達と癒着しているって言いたいのか?お前らだって俺達のことを体よく利用してきただろうが。それに誰かが、難民たちの言ってることを聞き入れて上げないといけないだろうが。

見るに見かねてウエハラが口を挟もうとするも、ナガサワはそれを視線だけで制した。これくらいの人間相手に感情を乱すこともない、と。

「・・今日上野公園の中に行くのは、そちらに言われたからですよ?」

そうだった!そうだった!アハハ!と耳障りな声で突然笑いだしながらK警部補は続ける。

「思い出した、思い出した・・。ねぇナガサワさん、ちょっと伝えといてよ。もうそろそろ俺達限界だって」

丁度ナガサワ自身も、警部補と喋っているのがそろそろ限界に達しつつあった。もっとも警部補本人にしてみれば、『難民に対してソフトなやり方で警告している』だけなのかもしれない。

「Fさんは忙しいお方ですからね。公園の中で会えるのかどうか解らないけど、もしも会えれば今の警部補の言葉を伝えておきます」

期待してるよ、とまるで上司のような口調を最後まで保っていたK警部補のことはなるべく考えない様にして、規制線を抜けて上野公園に向かう。


御徒町駅南口のガード下には昔は物乞いやらホームレスは殆どいなかったものだ。しかし公園から追い出されたせいか、随分とホームレスの数が増えた気がする。かてて加えて麻薬の流通だ。トンネルと麻薬と地下銀行は、三位一体の関係といって良かった。上野公園の壁が生み出した鬼子といえばいいのか。

地下銀行には支店などない。如何にも地下銀行でござい、といった感じの怪しげな屋台はすぐに摘発されてお終いだ。だから大抵の場合は、表向きのシノギを持っている。例えばコンビニのオーナーとか、雑貨屋を営むといった具合。こうした商売は信用第一なので、一見さんには自分の正体など明かさない。第一、今自分が対面している客が、最悪警察のおとり捜査である可能性すらある。だがナガサワとウエハラは、この雑多な商店街で誰がどういう裏のシノギを持っているのかを知っている。それは日夜不動産屋として上野御徒町を駆け回っている事の証だった。

「何なんですか、あの警部補」

ウエハラが今ごろになって憤慨している。だがナガサワとしてはもう終わったことだ。これ以上K警部補の事で頭を使いたくない。

「ん・・?あぁ、もういいよ、あの人もねぇ。。」

ナガサワは適当に話をはぐらかしながら、ガード下商店街も随分雰囲気が変ったなと感じている。つい2,3年前までは、ガード下に地下銀行の支店を陰で営んでいる店などまず考えられなかった。というよりもアメ横商店街一帯が、上野公園ほどでないにせよ無法地帯となりつつある。昔は発砲事件なんて10年に一度くらいの頻度でしか起こらなかった。今や10日に1度、下手すると3日に1度の間隔で発砲事件が起きる。スリや売人も増えた。アメ横のガード下は日本で一番簡単かつ安値でLSDやらMDMAが手に入る場所として今や有名になりつつあるのだ。そうして得られた違法薬物を上野公園の中で愉しむのが、観光客の定番ルートとして定着しつつあった。観光客にとってはスリルあるひと時かも知れないが、ナガサワにとってはこれが日常である。


上野駅旧公園改札口の近くに、ゲートはある。朝方というのに、壁の中へ入ろうとする台東区指定の業者やらナガサワのような不動産屋やらが列を為している。難民の親戚も条件を満たせば面会に行くことが出来るらしく、明らかに中南米系の顔立ちをした男女も列に加わっている。現実には無数のトンネルが地下に掘られているのだから、多少地上の行き来を厳格化した所で余り意味はない。ただそうして作られたトンネルはいつ崩落するか解ったものではないし、そもそも一見さんには使わせて貰えない。誰かしらの紹介があって初めて利用可能となるのだ。例え使えたとしても、大抵は法外な使用料を請求されるのが常だった。結局マトモな人々は、行列に並ぶ手間と時間を惜しみつつもこうしてゲートを使う。

F氏は普段壁の中で仕事をしているが、必要とあればトンネルを使っていつでも壁の外側へ出てくることが出来る。勿論、滅多にそんな事はしない。あまり壁の外に出ていくと秘密のトンネルがバレてしまう可能性もあり得るし、壁の外で警察に捕まったら面倒だ。だからナガサワとウエハラがこうして正規の手続きを踏みながら、公園の中へ足を運ぶ訳だ。

上野公園を囲むように建設された壁は、一体何の為にあるのか。まず実効性に乏しいことは間違いない。幅1m、高さ5m。延々と上野公園を覆う様に聳え立ち、監視カメラやら赤外線センサーやらと連動していると聞いただけで、どれほど莫大な費用が掛かっているのか想像がつく。


万里の長城よろしく延々と続く壁が途切れる地点が3カ所ほどあった。この上野駅公園口の真ん前にあるのがその一つであり、ナガサワ達はゲートと呼んでいる。人によって呼び方はそれぞれである。各ゲートには危険物の持ち込みを予防するためという名目で、検問所が併設されていた。だが難民組織が未認可で掘られたトンネルを張り巡らしているというのに、地面の上でこんな茶番劇を繰り広げることに何か意味はあるのか?

ーもしかしたら、とウエハラは考える。誰も深く考えておらず、単純にお役所仕事の積み重ねでこうなったのかも。自分が所属する部署に嘴を挟まれることをお役人は何よりも嫌がるし、そうであるが故に他人の部署には無関心を貫く。するといつの間にか船が山に登っているという寸法だ。この場合、上野公園が壁で覆われてしまったのだが。

「もうすぐ開くみたいね」

と視線も合わせずに話しかけ、ウエハラは眠たげな目つきで頷いている。これから例のF氏とその側近との打ち合わせで言うことは二つ。

1. 正規の認可を取らずにトンネルを掘るのはもう辞めたら如何か?

2. 地下銀行を使った決済は、資金洗浄対策という事で近々使えなくなりそうだ

いずれにせよ、気が重たい仕事である。彼らから言われる言葉は予想が付く

「じゃあ俺達にどうしろっていうんだ」

だろう。とはいえこちらも行政や警察連中からの要請には応じるしかない。それに御徒町南口の道路陥没はまだ可愛らしいレベルであり、なかにはあるとき突然地盤沈下によって、商業ビルが3mほど地面にめり込んでしまった例もあるという。これも野放図なトンネル工事によるものだ。キチンとした地盤調査、そして地盤改良工事をしていないからそういう事になる。壁の内外を問わず、皆が薄々解っている。

『壁なんてものを作って、難民たちを一定区域に押し込めようなんて馬鹿げたことを考えるからこうやって辻褄が合わなくなってくるんだ』

と。最初から難民を日本社会に溶け込ませようとしていれば、莫大な費用が掛かる壁なんて建設する必要もなかったし、難民たちはトンネルや地下銀行を設立しようとはしなかったのだ。だがそれでも、現在上野公園内部で繰り広げられている醜い光景を辛うじて押しとどめているのは、壁だった。壁のこちら側に検問所みたい建物が見える。よくよく見ると上野公園交番と書いてあるが、コンテナが縦に3つ繋がっただけの外見から交番と想像するのは難しい。その周りには装甲車が常時2,3台はエンジンを掛けた状態で待機している。装甲車の上には自衛官と見間違える様な恰好をした連中が座っている。揃いも揃って鉄製の帽子を被り、身体は防弾チョッキで着膨れていて、持っている銃は機関銃である。尤も彼らは機関銃ではなく、特殊拳銃と呼んでいるらしいが。


「上野交番」と書かれたゲート脇の三階建てコンテナ。その中は何故か空港の手荷物検査場を連想させた。2,3人ほど警官が詰めている。

「お二人さん、今日もフェンス潜るの?お仕事に精が出ますね?」

完全武装した警察官の姿を見ると、何故か昔からナガサワは違和感を感じてしまう。彼らもそれなりの実戦経験があって、命のやり取りもしているのは間違いないのだろうが、何処かコスプレイヤーじみている。そういう気配を悟られない様に、ナガサワは伏し目がちになって

「・・お陰様で」

短く答えるだけだ。だが向こうはまだ絡んでくる。皆に顔を覚えられるのも考えものだ。

「自衛隊さんでしょ?」

「解ります?僕ら元自なんですよぉ」

ウエハラの眼が少しずつ険悪なものになっていくのを感じながらも、ナガサワは懸命に笑顔を浮かべていなそうとしている。ここで揉め事を起こして良いことは何一つない。

「それにしても丸腰でなんて勇敢だなぁ」

「逆に丸腰だから、生きて帰れるんですよ。下手に武装してると相手を刺激すっから」

「それ、経験談?」

「えぇ、太平洋難民を移送するときにPKOで送られたときに得られた貴重な経験です。」

「自衛隊の人たちって随分と平和主義者なんだなぁ」

ハハハハハ、と笑って受け流すに限る。やはり兵隊と警官は相性が悪い。

ーそりゃあ国境の中で戦争ごっこだけやってるてめぇらに比べれば、俺たちは平和主義者だよ。

海外で揉め事起こしたら最悪戦争に発展する。だからこその交戦規定であり、PKOで海外派遣されている最中には、『自分たちにある程度損害が出るのを前提とした作戦』にも従事したことがあった。恐らく外交的配慮云々によって振り降ろされた無理難題に従っているとこうなるんだろうな、という所であり、実際に辻褄を合わせる事になる現場としては溜まったものではない。

そういった修羅場を何回も経験した身からすれば、この警察の連中は何とも無邪気に思える。隣にいるウエハラも怒り心頭というよりも、コイツらにどれ程説明した所で自分達の気持ちなんて解りはしない、という諦めすらと苛立ちが綯交ぜになっているのが感じられた。結局、コイツらは俺たちに嫉妬してるんじゃないのか、そう考えるとナガサワは逆に相手を労わるような気持ちの余裕が生まれるのだが、逆にその態度が彼らにとっては癪に触るらしい。ではナガサワはどうすればいいというのか。

「それでは、僕らの身分証明書です。どうぞ」

サッサと仕事をこなしてくれ、という気持ちと共にマイナンバーカードやら社員証やらを詰所の中にいる警察官に手渡す。彼も服装こそ先ほどの連中と似たような恰好をしている。つまり、灰色をベースとした都市型迷彩と腰に付けた標準装備のニューナンブが不釣り合いで思わず笑ってしまいそうになる。彼は何が気に食わないのか知らないが終始不機嫌そうな表情を崩さなかった。ナガサワとウエハラのマイナンバーカードをセンサーに置いて登録された情報との差異がないことを確認してから定型通りの決まり切ったやり取りが交わされる。

「域内では何をされるのですか?」

「仕事です。難民たちの互助会を取り纏める人との打ち合わせが一件。それだけです」

「何か武器、それに順ずるような刃物などは携帯しておりませんか?」

「一切携帯しておりません」

申告通りに刃物や銃器に順ずる代物を携帯していないかどうか、空港にでも設置してありそうなゲート式金属探知機を通る様に指示される。手荷物は荷物検査装置の前に置くように指示される。するとベルトコンベヤーで運ばれて、X線で金属で構成されたものが中に入っていないかどうかを確認する。やっている事は空港の搭乗前検査とまるで変らない。

次に書類へ署名、捺印させられる。

『私は麻薬売買、人身売買を目的として域内に入るものではありません』

『域内に立ち入ったことにより、最悪命を落とすリスクがあり得る事を認識しております』

『如何なる事情があろうとも、24時間以内にこのゲートへ帰還します。不慮の事故があったときへの対応のため、GPS発信機を身体に装着することを承諾します』

いずれも神経を擦り減らす禍々しい文体であって、読む度に人生を間違えてしまったな、と思わせるのだ。だが後輩のウエハラならばともかく、今更結婚もして家のローンに縛られた身では、今更どうにもならない。

「家賃徴収や物件の内覧も楽じゃないですな」

警察官がこちらの心情を見透かすかのようにニヤついた笑みで浮かべる。どぎつい皮肉だ。こんな場所でそんな事をする筈がない。

「ええ。ですがもう慣れましたよ。何事も慣れですね」

警察官のそういった冷やかしを振り払うかのように立ち上がりかけたとのとき、手渡されるものがあった。

「最近制度が変りましてな。域内に入る日本人の方々は、全員このGPS位置発信機を始終携帯して貰わないといけなくなったんですわ。万が一の事態に備えてという事です。行方不明になられる方々がとても多くてねぇ・・」

そういえば先ほど読んだ文面の最後にGPS発信機が云々というくだりがあったことを思い出す。この発信機は足首に付けるものらしく、傍目には厚めのテープにしか見えない。

「一回の充電で2,3日は持ちますからね、まぁ24時間以内に戻ってきてくだされば、何ということはないんですがねぇ・・」

表面上の笑顔に包めて彼らが言いたいことは、

『お前らが余計な事をするから仕事が増えるんだ』

なのだろう。

「そういう危険な所で、キチンと不動産仲介とか家賃徴収してくれる業者さんが居ないんですわ」

ウエハラが半笑いで素っ気なく返している。こういう皮肉返しの一つも言えるようになったじゃないか、とナガサワは軽く感動していた。昔の彼であれば、怒鳴り散らすかそのまま不機嫌そうに黙り込む所だ。

「難民の方々だって生活していく為に色々と設備が必要となってきますからね」

ナガサワは表面上笑いながらも、”お前らだけが戦っていると思うな”と皮肉混じりに相手を牽制しておいた。この警察官たちだって、ナガサワとウエハラが相手にする連中がどういう人種か知らない訳ではない。

域内入境手続きはこれでお終いです、という声と共に、詰所の扉が開かれる。扉の向こう側には、歩哨として周囲を警戒している警察官以外は難民しかいない。もう上野公園の中である。


ここには昔から乞食やら右翼連中が集会を開くことはあったものの、観光客で賑わう緑溢れた都心のオアシスだった。在りし日々には、中国韓国を始めとするアジア諸国からの富裕層が家族連れ恋人連れで美術館巡りや科学館に子供を連れていったらしい。そんな話を先輩方から繰り返し繰り返し聞かされていると、なんで年寄りでもないのに同じ話を繰り返すのだろうな、と駆け出しでこの仕事を始めた頃のナガサワは不思議に思っていた。彼にとって、以前の上野公園がどうなっていたものやら解らない。大体埼玉県出身の彼にとって、東京というのは漠然と都会というイメージしかなく、それも煌びやかな新宿副都心の摩天楼群やら六本木ヒルズのようなビルだけを想像していたのであって、こんなテントとバラック小屋とコンテナに囲まれた無法地帯など想像の埒外にあった。大体漂ってくる臭いからして違う。糞尿が他の生ごみと共に発酵する時に放つ饐えた臭い。パンダだのキリンだのといった動物は、難民が押し寄せてきた時期に飼育員と共によそへ移ってしまった。今のところ公園で飼育されている動物は人間しかいないのだからしょうがない。それでもここは公園と呼ばれている。

犇めきあって所狭しと並んでいるテントは、それ自体が生き物に思える。流石に公園の中にある大通りはまだ埋め尽くされていないけれど、時間の問題だろう。ナガサワとウエハラを見ても、誰もが肩をすくめて視線を合わせない様にしている。F氏の客人だだからだ。如何せん彼らは公園一帯を仕切る自警団の連中と繋がっているものだから、下手に手が出せない。泣く子と地頭には、というヤツだ。まさしく鎌倉時代の地頭を地で行くような存在の連中が、自警団であった。つまり、難民によって構成されたマフィアだ。この上野公園内部には、所謂ホームレスは存在しない。その代わりほぼ毎日2,30人ずつ人が増えていく。だから公園内部の土地は何処もかしこも過密状態であり、夜寝る床もないという難民も珍しくないのだ。そういう連中は、パイプ椅子の上で一晩を過ごすことになる。しかもそのパイプ椅子に座る権利だけで一日200円取られる。難民にとっては大金である。それだけ空間というものが貴重品だという事だ。

「また一段と人が増えましたね」

とウエハラが話しかけ、

「そりゃあ毎日毎日誰かしら公園にやって来るんだもの。いつまで続くのかねぇ、こんな事」

とナガサワも応じる。誰にも答えられない問いかけだった。


「よお不動産屋」

「久しぶりだね、案内人」

見るからに信用の置けなそうな笑みを浮かべつつナガサワに近寄ってきたのが、この案内人と呼ばれる男だった。流石にホームレスや難民たちとは違って服装はこざっぱりとしている。毎日とはいかないまでも週に何回か風呂にも入れているのだろう、別に目が染みるような体臭もしなかった。彼はホームレスや難民にしては小奇麗だが、日本のそこら辺を歩いている一般人に比べると垢ぬけない恰好をしていた。来ている服装の一つ一つを取ってみれば、綺麗でこざっぱりとしている。だが全体を通して見てみると、何故か違和感があるのだ。この男には全体での着こなしという概念がないらしい。

「お互いに元気そうで何よりだ。病気もせずに五体満足なのは素晴らしいことだ」

「ナガサワさん、この人誰ですか」

「ウエハラにはまだだっけ?紹介するよ。案内人のカノアさん」

カノアと呼ばれた案内人は、素っ気なくウエハラに挨拶した後でこう続けた。名前からしてポリネシア系なのだろう、比較的身長は低いがそれ以上に顔つきがおかしい。

「最近になってこの公園の中も急に統制が効かなくなってきてね。それにオタクが今日会いに行く相手ーFさんだっけ?ー、相当にいろんな相手から恨みを買っているらしいんだよ」

この男の表情や仕草からは、10代から20代前半にしか見えない。だが彼の顔に付いている皺だの染みだのをよくよく見てみるにつけ、初めてあぁこの人は実はいい年しているのだなと解って来る。

案内人とは何かというと、縄張りを荒らさずに目的地まで移動できる道のりを教えてくれるという事だ。例えば4つの組織が公園の中で縄張りを争っているとすれば、その境界線を伝って歩いていくと十中八九揉め事に出会うことだろう。逆に自分が普段から親しくしている組織を選んで歩いていけば、別段なんということもなく目的地まで辿り着くことが出来る。この案内人のカノア氏は、公園内部のほぼ全ての組織の縄張りに出入りする事が出来るらしい、とウエハラは聞いていた。何処まで本当の事なのかは解らないが、少なくとも今日の目的地であるFさんの所までは無事に歩いていけそうな雰囲気はある。

案内人は道行く難民達とは顔馴染みのようで、カノア氏が「よぉ」と難民に声かけすると彼らも力なく頭を下げるのだった。だが難民たちは絶対にカノア氏に眼を合わせようとしない。それがタブーであるかのように。

「ここら辺はね、しょっちゅう縄張りが変るからね。気を付けないといけないよ」とカノア氏。

「どうやって縄張りが変ったなって解るんですか?」

とウエハラが尋ねると

「ー何となくかな?毎日見てると解るんだ。見張りに立ってる人間が、どちらの組織の人間か、何処に落書きが書いてあるかで判断するようにしている。君たちが何の気なしに眺めて居る壁だの気に書かれた落書きにもね、一つ一つ意味があるんだ。昨日なかった落書きが今日現れていたら、要注意。これからそのシマを巡って争い事が起きるかも知れない。最初は互いにラクガキで上塗りしあうだけだ。そこまでだったら微笑ましいってなもんだがな。でもそのうちにコリドー(まぁ悪い連中のプロパガンダソングだ)で互いを罵り始めたら、もう秒読みだな」

何となくという感覚は、不動産営業である彼らにもよく解る。毎日同じように見える街並みにも、よくよく目を凝らしてみると違いが見つかるものだ。解りやすい例えだと新宿とか渋谷みたいな盛り場にいるキャッチ連中みたいなものか。こないだまでこの通りにいたキャッチの兄さんたちの一群が姿を見せなくなったら、今度は別の兄さんたちがキャッチを始めているという具合。それぞれの縄張りは日々変っていく。


「何時からなの?Fさん達との話し合い」

「10時からだね。今9:30」

「んじゃあ、普通に歩いていけば間に合うな」

そういって三人は歩き出した。

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