その4 マレーシア/湾岸諸国/インド(28日午後)
マレーシアパビリオン
「ヨーロッパばかり回っているし、次はアジアで」と思い立ち、歩むうち目に入ったのがマレーシアパビリオンでした。
お昼を回り会場内の人口も増してくる中で待ち時間10分はお得感があります。その間にもイケメンダンスユニットが伝統舞踊(?)を披露していたので飽きることはありませんでした。
最初の展示室にはマレーシアの地方区分と各地域の伝統料理。これはやわらか路線かな、と思いきや次の部屋ではガチガチの政策論、全土にわたるインフラ整備計画の紹介でした。具体的物質的な展望を描いているところに未来への確かな希望を感じます。
その希望を、国と都市の未来を、タイムスリップした少女が語るアニメーションを鑑賞したところで次の部屋は「Hall of Honor」、マレーシアが誇る現代の偉人たちの紹介。
地理特性や民族に始まり、かなり多様な特徴を持つ国という印象を受けました。
テーマを絞っても良いであろうところ硬い話と軟らかい話をとり混ぜつつ余すところなく紹介する、中身の濃いパビリオンだと思います。
そうして少し疲れたところで最後に来るのがお土産屋さんとお食事処。
このあたりの駆け引き上手(?)、いろいろ参考になりそうな気もしつつ……ライチ缶ジュース(200円)と、お土産に前から一度使ってみたかったココナツミルク(500円)を購入。
外に出て缶ジュースの成分表を見たところが、筆頭に「砂糖」。
失敗したかなと思ったのですが、おやつに飲んだらこれが効きました。疲労回復効果あり。
暑いときには水分に加え適度な糖分・エネルギーも大事みたいですね。
クウェート国パビリオン
マレーシアパビリオンにて「イスラム金融学に多大な貢献をしたシャリーア学者」の記事を拝見し、「シャリーア法にイスラム金融かぁ、そういや初歩の初歩をかじったこともあるような」と遠い記憶を呼び覚まされて、イスラム諸国のパビリオンにお邪魔しようと思い立った次第です。
善は急げとはよく言ったもので、午後もたけなわ15時ともなるといずこを見ても長蛇の列。一時間半は並びましたが、それでも断言できます。
「クウェートパビリオンは見る価値アリ」と。
まあ最初の部屋から演出がスゴい。お子さま大喜び間違いなし。
おとなの皆さんは、とにかくテンションのキーをひとつ上げて臨んでください。スタッフさんへのお礼と思って。
続いてクウェートの豊かな自然(保護区があるそうです!)、交易史などの解説。
ひとつひとつが手動のギミックにより行われるので理解がはかどることはかどること。
分からずともいじってるだけで楽しいので、お子さま連れの方はぜひ!
そしてクウェートと言えば石油。その歴史をこれもギミックで紐解く作りになっていました。
もうね、何から何まで参加型で、「ちょいと体を動かす」展示なんですよ。
最後はアラビアの夜空に思いを馳せる演出。盛り上げてきます。
素敵な経験させてもらったので、「これはぜひお土産も!」と思ったところに難題が。
ファブリックとかテキスタイルとかぬいぐるみとか、おっさんには敷居が高い。高すぎる。期待収益率に分散やらの数式レベルで目を向けてはならぬ気分……いえ、それ以上です(断言)。
代わりにというわけでもありませんが、親しみやすいイベントとして。
クウェートはパビリオン前にステージを設置し、常に音楽を流しています。夜になれば、「アーダ」と言うらしいのですが、アラブの兄さんおじさんが10人以上も並んで歌う歌う。
今回の万博、おとなしすぎる感はあるかもなあと思ってたのです。
お祭りはにぎやかしてなんぼ、クウェートのスタイルには個人的に敬意を表します!
アラブ首長国連邦パビリオン
うって代わって、こちらは静謐のパビリオンです。
「大地から天空へ」のテーマのもと、ナツメヤシの柱が高い天井を支えていました。
特筆すべきは「語り」。
動画によるのみならず、スタッフさんの口を通じて解説を行うスタイルです。
特に印象に残ったのが「七つの砂」のお話。
UAEを構成する七つの首長国・七つの地域を七つの砂で象徴しているのだそうです。
サンプルの試験管を掲げつつ「山側は礫が粗く、海に近づくほどきめ細かくなる」とのお話、理屈としては分かるのですが、どうにも区別がつけ難い。
しかし砂漠の民には明らかな違いとして目に映っているに違いありません、日本で雪の表現が多彩であるのと同様に。口調にも誇りを感じました。
奥の大きなビジョンでは、伝統的な生活を送る人々の話を流していました。
広いじゅうたん地に腰かけて静かに耳を傾ける展示スタイルです。
子供さんが多少走り回るぐらいのことは許容されているようですし、小休止にもおすすめかと。喫茶店が併設されています。
なお、もちろん現代的なテーマの展示もされています。特に個別医療・ゲノム研究に対する熱量は大きいものがあるようです。
カタール国パビリオン
パビリオン巡りをしていて気づいたことがあります。
湾岸諸国の皆さん、瑠璃色と翡翠色には特別な思い入れをお持ちではないかと。
例えばクウェート館でも、女性の伝統衣装としてこのふた色が飾られていました。
瑠璃色はおそらく夜空の色。翡翠色は昼の空か、あるいは海か。
海に対する思い入れも湾岸諸国に共通する展示となっています(海に囲まれた日本を意識してのことかもしれません)。
カタールは特に海に対する思いが強いようです。
「半島国家で、三方を海に囲まれている」旨、パビリオンの冒頭に示されていました。
壁面を覆う瑠璃色の布にもカタールを取り巻く景色が描かれています。
徹底的に「地理・地勢」で押してくる展示スタイルです。
現在でこそ「石油(天然ガス)」のイメージが強い中東ですが、これは僅々100年のこと。
それまでは漁撈や真珠の採取で暮らす人が多かったらしく、「海に出る男性と、拡大家族で支えあう女性」という生活スタイルであったとのこと。
いろいろと難しい話に(あるいは興味深い考察に)繋がりそうな気配を見せつつ、その手前で留めておく。これもひとつの敬すべきスタンスかと思います。
インドパビリオン「バーラト」
サウジアラビアパビリオンを目指して歩いたはずが、なぜかインドパビリオンに並んでいた。
疲労のせいだろうとは思うのですが、初っ端から衝撃体験でした。
ここは待機列の作り方から特殊です。
パビリオンのスタッフさんが、「並ばないよー。並ぶのダメ―」と声をかけて回っていました。木製リングのすぐ近くにあるため、通路を確保する目的であろうとは思います。
じゃあどうするんだという話ですが……説明が難しい(めんどくさい)ので、ぜひ現地で体験してみてください。
「日本人、列作らなくて大丈夫よー。めちゃくちゃならなーい。インド違ーう」
あなた絶対日本語流暢ですよね?
パビリオンに足踏み入れるや、仏像(?)のアタマがドン!
おじさんが「ナマステー」
隣には北インド風味の……やけに写実的な女性像。
男子をお連れのお母さまが視界をブロックする中、解説のおじさんから「『インド』とはイギリスがつけた名前であり、私たちは『バーラト』と言っています」とのお話を伺いました。
「ガネーシャ(幸運の置物)、探してみてくださいね」
簡単に見つかるのですが、はるか高みに置いてあるため全体像がよくわからない。カオスだ。
改めて思うのですが、バーラト芸術の造形って独特の魅力があるなあと。ちょっと癖になりそうな味わいと申しますか。
旅の恥はかき捨てとばかり絵や像に出会うたび同じポーズを取りつつ歩めば、次の部屋では宇宙開発。もう振れ幅が広すぎて。
歴史も長ければ国土も広大、人口から民族に文化まで盛りだくさんなお国柄ですものね、簡単に理解しようと思うほうが間違いかと。
理解への入口としてはアリのパビリオンだと思います。
とりあえず「ナマステ~、バーラト~」だけ覚えて帰ることにします。
サウジアラビア王国パビリオン
待機時間としては短いほうだと思います。しかし夜行バス(寝不足)に始まり二日間歩き通しの最終段階、思っていたよりキツく感じてしまいました。
文化・芸術方面を強く押し出してきたという印象です。
まあ実際、湾岸諸国に対する我々(主語大)のイメージといえば、「石油・砂漠・イスラム教」しか無い(暴論)わけで、「それ以外」を紹介していただけるほうが有難いというところはあります。
マングローブやサンゴ等の環境への取り組み……とのお話でしたが、そもそもその存在から初耳でした。しかし考えてみれば「暖かく浅い海」なわけで、なんの不思議もありません。
結局自分が「石油・砂漠・イスラム教」の話ばかりを気にかけていただけと、そういうことかと思います。
いろいろ気になるものが出てきたところで、未完成のコーナーに行き当たりました。しかもこれが複数存在しています。
……ということは、まだまだいろいろな側面をご紹介いただけるわけで、ますます期待のパビリオン。
帰り道は前の晩に引き続き、クウェート合唱団(?)の歌に手拍子打ちながら。
もうクタクタでしたが、充実した二日間でした。
どう申しますか……大阪万博2025、「行って後悔はしない」催事であろうとは思います。