その2 イタリア・バチカン/コモンズDパビリオン(5月27日、夜チケ)
5月半ばに万博へ行こうと思い立ち、28日の全日チケットを購入のうえイタリアパビリオンを予約してみたのですが、まったく当選しないあたりやっぱり大人気のようです。
このぶんでは長蛇の列、「半日つぶれてほか見られない」なんてことになりかねないと思ったもので、27日の夜チケットを追加購入しました。そこで割り切ってイタリアだけ見ればいいやと。
結果的に見て、まずまず「当たり」の判断だったと思います。「絶対に見たいけれど予約が取れないうえに、長蛇の列が予想される」パビリオンがある方の参考になれば幸いです。
そして臨んだ当日、曇りに近い晴天のもと気温は体感20℃強、海からの涼風に身を浸しつつーー待機時間は140分でした。
待つと言えば待つ、長いと言えば長いけれど、それぐらいならばといったところでもあります。旅先の空に雲、巨大リングなどを眺めるだけでもそれなり時間は潰れますし。
少なくとも盆暮れの東北自動車道よりは快適&スムーズ(断言)。
行列整理にあたるスタッフさんの呼び掛けでは「3~4時間待ち」とのことでしたが、長めの見積もりを出すようにしているのでしょう。このあたりは他のパビリオンも同様ですので、これも参考になればと。理由はまあ察せられるところでもありますし。
不当なるクレームを入れる馬鹿はユスリカの群れに集られてあれ(呪詛)……ちょっぴり期待していたユスリカのいのちの輝きですが、ほとんど見かけませんでした。運営のおかげか、場所の問題かは存じません。
展示を見た後、すこし並べば併設レストランで食事もできたところかと思います。行列もパビリオン待ちに比べてぐっと短く見えました。
でもね、バカ舌中年男性の食レポなぞ無益もいいとこ誰が見たいかと。
「行列してでも美味しいもの食べたい」派と「メシに行列するぐらいなら食わぬ」派とで言うところの後者寄りなもので、食事方面の情報はほとんど持っていないのですゴメンナサイ。
肝心の展示内容ですが、あまり何もかも記すのもいかがかと思いますし。
とは言えみんな大好き『ファルネーゼのアトラス』はいくら触れても良さそうですので、はいどーん。
写真を撮りつけていないのがバレバレですが、ともあれ。
実物を見たところ、筋肉のつき方――胸板や背筋臀筋の厚みに形――から浮き出た血管にいたるまで、かなり写実的でした。紀元150年ごろの作品と聞いてただただ驚きつつ、職人か芸術家か、もっと大きく言えばやっぱ人間ってすげえなあと。
そのいっぽうで、気になったところがひとつ。
「ティタノマキアに敗れたアトラスは、世界の西の涯で今も天球を支えている」ものとして「重いものを担ぐのに、両足の踵を上げるか?」と、まあその。写実的なだけに、そこが妙に気になったのです。
そうして眺めるうち、重いものが嫌になって「そぉい!」する寸前の姿、あるいは重いものを担いで「歩む」人物の像に見えてきたのでありますよ。
「そぉい!」ならば「ヘラクレスの十二の試練」等との関連でなんとなく分かる気もしなくもない。しかし歩んでいる姿であれば、これがわからない……どなたかご存じの方、参考文献などぜひ教えろください。
ともあれ。あれだけ間近で見られるとは思っていませんでした。
イタリアの太っ腹に感謝です。
アトラスばかりを取り上げても何なので、というわけでもありませんけれど。
イタリアパビリオンは科学技術、特に機械工業分野の展示に力を入れているように見えました。船や自動車、特にそのエンジン周りです。
ほか、天井を見上げれば木製飛行機(1920年に、ローマから東京まで飛んできたのだそうです)のレプリカ。
レオナルドダヴィンチのスケッチ『コーデクス・アトランティクス』にせよ、取り上げるに値する記載は多々存在すべきところ、展示されていたのは…………なんか歯車がいっぱいある(文系並の感想)絵でしたし。
歩む人の像に心臓のアートもあわせ、「芸術は生命を再生する」というテーマのもと、最も強く印象づけられたのは「駆動」であると。私としてはそう申し上げたいと思います。
そのあたり、まとめでは「じゃないほう」のイタリアとも銘打ちました。
偏見かもしれませんが、我々一般(主語大きめ)のイタリアに対するイメージ「陽気で、いい加減で、あいさつ代わりに女性を口説く」……「のではないほう」のイタリアを押し出してきたという印象です。
粗雑な要約なりにいま少し言葉を飾るならば、北イタリア的とでも申しますか。
ミラノ・トリノ・ジェノヴァ、技術・機械・工業……ファッションウィークということで一室まるまる衣類の展示に割かれていたことも、その印象を強めていました。
もうひとつ、字数ほかの都合で「イタリア」と書いてきましたが、「イタリア・バチカン」パビリオンと称すべきが本筋かと。
何も形式主義ではなく、「聖座(バチカン)」コーナーの一撃は重かった。
高3m幅2mに及ぶカラヴァッジョ『キリストの埋葬』、真に迫るものがあります。私たち日本人(再び主語大きめ)には日ごろ想像が及び難い「信仰」なるものについて、足を止めて深刻に思いを致さざるを得ませんでした。
そうしたもろもろを含め、実質的にも「イタリア・バチカン」と並記しておきたい気分なのです。
というわけで、全体的にはおとな向けの印象です。子供には少々ウケが悪いと申しますか、よく分からないかもしれないなあと。
待ち時間もありますし、小さなお子さま連れの方は「頑張って予約を取る」もしくは「夫に子供を押し付k……任せておいて、ひとり楽しむ」等々の選択も検討に値するかと思います。
なお、待機中に2時間並んだところで倒れ込み救急車で運ばれる方がありました。大事無いことを願います。万博の警備医療体制は万全に近いかとは存じますが、これから参加をご検討の方は体調にお気をつけください。
宿へ帰る前にもうひとつぐらい見ておく時間はあったので、通り道にあったコモンズDパビリオンにお邪魔しました。
来訪者を迎え撃つはリベリア続けて南スーダン、粗雑な中年男性言うところの「アフリカのお面」。
なんとなし想像していなかったわけでもありませんが、実物はやっぱり違う。
ことにその迫力いえ、存在感でしょうか。強烈です。思いもつかぬ造形には見入るばかり。
そんなコモンズDで最も印象に残ったのが、「石」。
特にタジキスタンやパキスタンのブースですが、いわゆるパワーストーンが並んでいました。
メンヘr、もとい鋭敏な感受性をお持ちの方……失礼しました訂正します……愛好家にはおススメのパビリオンかと思います!
ほかサントメ・プリンシペ、モルドバ……それぞれコーヒー豆、ワインのイメージはあっても、正直「どこだったっけ」な国々の出展を見るにつけ、身の回りのあれこれにはそれぞれ産地があるわけで。遠い国とのつながりをひと目で認識できるだけでも、万博に来て良かったなと。
アンティグア・バーブーダ、(国旗と名前を)ぼく覚えた。いえその、「全くもって何も知らない」のとは大きな違いがあると信じて。
当初の計画では1泊4日の3日目を万博にあてるつもりでした。夜行バスを利用するなら弾丸旅行のゼロ泊3日が本筋でしょうが、年も年だし病後の身ということで予定変更。
で、どうせ泊まるなら奈良にしようと。中学の修学旅行以来、もう一度行きたいなあと思っていましたし、いま大阪のホテル高いし。
そうしたわけで26日の夜に東京を出て、27日の午前に奈良を観光して、万博には夕方お邪魔したと、そうした旅程をとりました。




