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宴の後

 さて、大騒ぎのバレンタインが終わった次の日。学校は何事もなかったように落ち着き、千紗と菊池は、学級委員会に出るために、廊下を歩いていた。千紗は今日もレモンエッセンスを振りかけてはいたが、昨日よりは控えめにしていた。

「昨日の放課後、一年生からチョコ貰ってたね。あたし、見ちゃった」

「おお。あれ、部活の後輩なんだよ」

 それ以外にも、菊池がいくつか貰っているところを、千紗は目撃していた。菊池は結構、もてるのだ。

「菊池くんは、結構、チョコを稼いだんじゃないですか」

千紗がおどけてからかうと、菊池はちょっと声を潜めて、

「でも俺、実はチョコ、嫌いなんだ」

「うっっっそ!」

千紗は、思わず立ち止まった。

「しぃぃ、ゴリエ、でっかい声出すな」

「あ、ごめん。でも、でもさ、鮎川さんにミルクチョコが好きだって、言ってたじゃない。あんた、人でなしの嘘つきなの」

「だってお前、あそこでチョコが嫌いなんて言えるか。一対三だぞ。俺だって、ちょっとはびびるわ」

「ははぁ、まぁ、そう・・・だね」

そうだよな。いくら自分に気がある女子だとしても、三人いたら、ちょっと怖いか。

「じゃあさ、もらったチョコはどうするの」

「母ちゃんと姉ちゃんが食べるんだよ」

「なるほど」

「でさ、母ちゃんも姉ちゃんも、ミルクチョコが好きなんだよ。だから、俺はそう嘘は言ってないぜ」

必死に言いつのる菊池を見て、千紗はもう我慢ができなかった。

「あっははははははは」

千紗は、体を折り曲げるようにして、笑った。

「あ、何だよ、ゴリエ。笑うなよ」

「だって、だって」

菊池の困ったような顔が面白くて、千紗の笑いは止まらない。

「はぁ、やっぱ、菊池って面白いわ」

千紗につられて、菊池も笑顔になった。

「確かに、俺って、馬鹿かもしれないな」

「うんうん」

千紗が盛大にうなずくと、

「やかましいわ!」

と、菊池が千紗の頭を叩くふりをした。ま、素早くかわしたが。すると急に、

「あれ?」

と、菊池が鼻を鳴らした。

「なんか、匂いするな、お前」

「そう?」

「うん、レモンかなんかの匂い。お前、何か飴でも食った?」

「あほか」

「あれ、でも、本当にするぞ。レモンの匂い」

「そう? シャンプーかな」

 そう言うと、千紗は菊池をおいて、会議室に向かって駆け出した。


 これ以上は、情報はやらない。これが、レモンエッセンスの香りだなんて、菊池にだけは、絶対に教えてあげない千紗なのだった。


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