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第3話



「こんにみあー!!!!! 今日もみんな、楽しく絶望してる? 

今日はダラダラトークね。

昨日、瓦礫の中をあさってたら、なんと! 雑誌を見つけちゃったんだよね。

貴重じゃない!? だって文字が印刷されてる本とかボットに片っ端から燃やされたもんね。あと大火事もあったし。で、その雑誌が『SPA!』っていう若いサラリーマンが読みそうな感じ? のやつ。どうせならもっといい本拾いたかったー。

開いてみたら「AIが人間の仕事を奪う!」みたいな記事が載っててさ、もう笑って突っ込んじゃったよ。人間の仕事どころか、地球そのものが奪われてるんですけど!? って! あ、でも奪ったのはAIじゃなくてAIを暴走させた誰かかな? もう誰が犯人かわからないけど! いい時代もあったねえ。遠い目。

面白かったのが「理想のデートコース!」っていう、これまた浅い感じの特集。「夕焼けの中、海辺のレストランのディナーでムードつくって、うんたらかんたら」とか書いてあるの。それで『夕焼け』ってあったわーって思い出しちゃった! なんか、もう見れない空の写真がきれいでさ。いまじゃ『夕焼けの中』どころか、全店舗が瓦礫の中だよ! という適当なオチで、次のコーナーいってみあー!」



最近、私と先輩が空名ミアを視聴していると、いつの間にか周りに人が集まってくる。

今日は、シェルターにいるミナトちゃん、ゲッコウくん、エドワード、モナじい、そしてマツダさんまでもがPCをのぞきこんでいた。

空名ミアのボケはちょうどいい感じのIQで、世代を超えた突っ込みの声が重なった。

「なんじゃそれ! くだらなすぎる!」といいつつゲッコウくんが幼い顔で吹き出しているのがかわいい。

モナじいは、顔をクシャっとさせて、しみじみつぶやいた。

「孫に似てるんだよなあ」

「ピンクのツインテールのロリ巨乳の孫がいてたまるか」

私は突っ込んだ。先輩どころかマツダさんまで笑ってた。


「このスパチャってナニ?」エドワードが聞いた。

「昔通貨があったときのシステムの名残ですかね。スーパーチャットの略。盛り上げたり自分のコメントを注目させたり配信主に感謝したりするときに送る投げ銭機能でしたけど、いまじゃ――」

私は説明しつつ、試しにスパチャを送ってみることにした。

「ミア最高!」と書いて100万円ほど指定して送る。「こんな感じすね」

不安定な回線のせいでちょっと間を置いてから、チャット欄で、ぴこん、と私のメッセージが華やかに表示された。

「わたしもやりたい!」横からミナトちゃんが勝手にボタンを連打する。

この世界では、円もドルも意味をなしていない。多少でも使えるのはビットコインとリップルとか一部の仮想通貨だけ。それでも人の接触が限られる以上、使う場面は少ない。

最後の頃は、インフレで卵一個の値段が「垓」とか「京」とか聞いたことない単位になってたのは笑った。


だから、ほんと意味はない、ないんだけど、なんか楽しかった。

ミナトちゃんの真似して、エドワードもゲッコウくんもふざけて指をキーに伸ばしてはスパチャを送りまくる。いくら送っても、残高は一桁も減らなかった。

スパチャを喜ぶミアは、画面の向こうから私たちの談笑に加わってるみたいに、元気よく笑い続けていた。



「こんにみあ〜!!!! みんな、今日も楽しく絶望してる?

今日は恒例の『絶望につけるヤク中相談室』! ぱちぱちぱち!

はい、ずらずら悩み流れてくるねえ。みんな大変だー、って私も他人事じゃないんだけど!


この相談いってみよー。そら民ネーム『ハリネズミ』さん。

『シェルターの人間関係がストレスすぎて、誰とも話したくないです。プライベートあんまりないし、まわりもイライラしてるし。でも誰とも話さなかったら変な奴認定されてもっとストレスたまりますよね』


うわー、わかる。崩壊した世界で人間同士が助け合うのって、密度濃くてしんどいよね。でも、『ほどよい距離感』を探すのは大事だと思う。挨拶はして深くは干渉しない、とか。そういうコミュニケーションでも、ゼロとは違うから。あと、おすすめは “相手を勝手にアバターだと思う”っていう脳内設定。目の前にいる人がイラッとする態度をとっても、「あー、これ何かのキャラ設定かもね」って流すと、意外と割り切れるかも。

無理に仲良くしろとは言わないよ。最低限の繋がりは確保しつつ、深追いしないってスタンスがおすすめ。繋がってる感覚あれば、ギリギリ健康な頭を保てる気がするよ! 


え、わたし? 一人で暮らしててもみんなと繋がってるから大丈夫! ほんとほんと! 

じゃあ次の相談行ってみあ〜!」

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