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ブレイズソード  作者: 東虎徹
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喫茶店を出て、街に再び赴き。調査を開始した。

「腹いっぱい食ったな。相田、寝る前に歯磨きしろよ」

「言われなくても、するわよ」

「あとこれも使えよな」

腹を擦りカナタは上機嫌に彼女を誂うように言った。それに目を細めて相田は口調を尖らせて答えると、口臭予防のタブレットをカナタは差し出す。

「なにそれ」

「見たらわかるだろ、お前の口臭いからこれ使えよな」

言った瞬間。顔を真っ赤にして胸ぐらを掴んできて、声を荒らげて上下に揺らした。

「あんたねぇ! デリカーって」

相田が咎めかけたところで、怒鳴り声が飛び交う。なんだと首を傾げ視線を向かいの道路に移すと爆炎が立ち昇った。街路樹が炎上した。その付近に高校生くらいの男女が四人いた。

「てめぇら! ぶち殺してやるよ」

「お、落ち着けよ、悪かった! 俺が」

後ろ姿しか見えないが、付近の高校に通う学生であることが伺えた。おそらくは先程の怒鳴り声の主だろう。中肉中背の丸眼鏡を掛けた男子が声を荒らげた。ブレザーの片側を炎に包まれているのにも構わずに、尻餅をついたヤンチャそうな学生に凄んでいた。その後ろにいる女子二人も怯えてしまって固まっている。

行き交う人々はその唐突な出来事に驚き恐怖して顔を青くさせて混乱した。四駆車が目前で走っているのも構わず車道まで流れ込んでくる。

唐突な事態を収拾するべく、押し寄せる人波を跳躍で避けた。付近の街灯に飛び乗って向かい側まで着く寸前。

「死ねぇ! クソ野郎」

暴言と共に、燃えている片側の腕から掌に炎が集中した。一個の火の玉が形成されそれはサッカーボールよりも大きい。

それを何の躊躇もなく丸眼鏡の男は、戦意のない一学生を明確な殺意を持って投げつけた。

炸裂し煙が立ち込めて人々の悲鳴が響いた。

爆炎によって標的であるヤンチャな男子学生もろとも、その一帯は黒焦げになっていると丸眼鏡の男は思ったのか、煙がはれた瞬間。

「は?」と訳もわからないといった感じで声を漏らした。

土埃を払いカナタは背後にいる。ヤンチャな学生に安否を尋ねると、「はい」とだけ答えて大人しくしていた。

正確に言うなれば、状況が掴めずに正常な判断がつかないだけだ。

「たくよぉ、おまえ。街ん中で魔法ぶっ放すんじゃねぇよ。危ないだろうが」

「う、うるさい! 僕の邪魔をすんな! この魔族めが」

「随分と古い言い回しだな、ガリ勉くんか? まぁ別にいいか」

古風な侮辱に肩をすくめると、丸眼鏡の男は目を尖らせてまた火の玉を形成しようとするが背後から相田の手から放たれた鎖が巻き付き、身動きを封じた。

「今から警察が来ます。そのまま大人しくしていれば、私たちは手荒な真似はしません。ですから」

「いっつもこうだ。また僕は力でねじ伏せられるのか」

相田の忠告に耳を貸さずに丸眼鏡の男は俯いて、ぶつぶつと独り言を喋り始めた。

その様子に眉をぴくりと動かし、背後のヤンチャそうな学生を一瞥した。

おそらく先ほどの言動からこの二人の関係性はあまり良いものではないと察することは容易だった。しかし、それはいまどうでも良いことだ。

問題は丸眼鏡の男の髪と燃え続ける右半身だ。

黒と赤がまばらになって入っていた。染めたのかと一瞬思ったが、髪を染めるのなら金髪か茶髪が普通だ。それ以外の奇抜な髪色は魔法使いと誤認されかねないので普通はやらない。

それに右半身の炎。魔法使いとはいえ、自身の魔力で発現させた魔法に耐性があるとはいえど常時それに身を焼かれるのは死に直結する。加えて魔力も奪われ続けるので疲労が溜まり弱っていくのだが、目の前の男は苦悶の表情もなくただ平然とぶつぶつと独り言を呟いていた。

明らかに普通ではない。彼にカナタは警戒を強めた。

「ふざけやがって! ふざけやがって! 僕が」

「相田! 離れろ」

一瞬の炎のゆらめきにいち早く気づき、拘束を解くよう相田に怒鳴った。すぐに状況が把握出来ずに反応が遅れた。

炎は鎖を伝って相田に向かっていく。

手先のところまで到達したところでようやく、鎖の実体化を解くことができ間一髪火だるまになることを阻止できた。

だが、その炎はは何の関係もない一般人にも向いた。

「ふざけやがって! 皆殺しにしてやる!」

「馬鹿野郎!」

荒げると同時に先ほどよりも巨大な火の玉が形成され逃げ惑う人々にもみくちゃにされ転倒した親子にそれは投げつけられた。

アスファルトの地面を黒くこがし、一直線に火球は恐怖で身動きが取れない親子に迫る。

炸裂音と土煙が漂う。その中で両手を前に突き出し、肩で息をして親子の前に立っている姿が漂うそれがはれて顕になる。

「なっ!」

またしても阻止されたことに驚くと同時に、丸眼鏡の男は苦虫を噛み潰したように物凄い表情をした。

「今度は! もっと大きな」

憤慨したことで冷静さを失いまた、火の玉を形成しようと手を突き出して構えた。

まだ来るのかと舌を鳴らし、カナタは火球が来る前に取り押さえようと構えて間合いを詰めた。

その途端。急に丸眼鏡の男は苦しみ出した。泡を吹き出し、全身が水膨れのように肥大化した。

「な、なんだ! なんだ! なんだ! こっ!」

自身の悍ましい変化に発狂し、爆散した。トマトみたいに弾け飛び周辺を戦慄させた。

カナタも相田もその光景に、しばらく言葉が出なかった。





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