二
彼を即急に処分対象にすべきです」
鎖で繋がれカナタが翡翠髪の女に連れて来られたのは、魔法師団最高責任者師団長の部屋だった。
馬鹿みたいに広い室内は、一人の為の部屋とは思えない。左手の窓からは街の景色を見渡すことができる。
中央の高級そうな机から入り口まで一直線に赤の絨毯が引かれていた。
その席に座っている老年の男性は、白い顎髭を触りながら彼女の訴えを聞いた。彼こそが最高責任者である白銀ギンだ。
自分と目が合うと、白金は上を向いて少し考える素振りを見せて、数秒の沈黙を経て答えた。
「確かに、彼がやったことは親族や警察から、苦情がきておる」
「では」
処分命令が下せると思ったのか、彼女は目を輝かせた。しかし、次の一言で目の色を変えた。
「じゃが、それはできないのだよ」
「なぜですか!?」
「君だって彼が、どういう存在かわかるだろう?」
を飛ばしてきた彼女に白銀は至って冷静に応対する。興奮した彼女による次の抗議の声を遮って、言い聞かせるように言った。
「彼は、カナタくんは。魔物から国を守る為に居なくてはならない存在だ。近年、魔物の凶暴性が増し魔法使いや一般兵の殉職は十年前と比べて、大幅に増加している。研究者によれば、魔素の濃度が濃くなっているからではと見解を述べているが、そんなことはどうでもいい。我々国際魔法師団としては、魔物から悪質な魔法使いから身の安全を保障し安寧に暮らしていただくことだ」
席を立ち上がり、街の景色を眺めながら語る。自分の方を一瞥したあと白金は続けた。
「魔人は魔物を兵器として扱う過程で得た副産物。世界で十人しかいない。首を落とされようと、心臓を潰そうとも、血を全部抜き取ろうとも、死なない。不死身の戦士じゃ。それにほとんどの魔人は、制御不可でそのうち二人は失踪している。一人は中国の魔人で一般人にヤジを飛ばされただけで、百万人虐殺してどこかへ飛んで行った。二人目はロシアで、もっと涼しくしたいという理由で、吹雪を一週間ほど吹雪かせた。多くの死者を出した。その後同じく逃走し行方をくらました。それと比べれば、彼はまだ扱える方だろ?」
ニヤリと口角を上げていたが、目は笑っていなかった。
「ですが」と中々引き下がらない彼女に、白金は息を吐いて席に戻った。
「そんなに彼を危険視するのなら、君が彼の監視をするといい。これで異論はないね?」
横目で一瞥し、顎を擦る素ぶりをしたあと彼女は頷いて答えた。
「はい、その役目喜んで頂戴いたします」
こうして、カナタは彼女とバディを組むことになった。