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虹の花  作者: 満咲
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数年ぶりの再会


「お久しぶりです。奈津美さん。」

「4年ぶりね、誠司君。元気そうでよかったわ」


船から降りた俺に、港で待ってくれていた親友の虹花(にじか)の母親である奈津美さんは変わらず優しく微笑む。

その笑みは俺にとって、とても眩しく見えて一瞬だけ目を逸らしてしまった。


俺が今いるのは【瑠璃島】という日本地図で表すと東南の方角にある小さな島だ。


瑠璃島は、透き通った青い海に美しい草花、ほんのりと塩を含んだ澄んだ空気と自然豊かな島だ。

そして一年中、比較的暖かくて過ごしやすい。


そんな美しい景色や過ごしやすさに惹かれて、訪れる観光客や引っ越してくる人は少なくない。


目の前にいる、奈津美さん達は俺の親友が産まれてすぐにここに越してきて、俺も父親の仕事の都合で小5の時にここに来た。

違う点は親友はずっとここに住んでいて、対する俺はここにたったの2年ほどしかいなかったことだけど。


「誠司君。今日は遠くからわざわざ来てくれてありがとう」

「そんな…俺こそすみません。もっと早く来たかったんですけど、なかなか来れなくて。」

「いいのよ。虹花も誠司君に会えたらきっとすごく喜ぶわ」


俺達は港を出る。

奈津美さんは俺に向かって更に笑みを深くする。


虹花と最後にあったのは4年前の高校1年生の夏、旅行で来た時だ。

引っ越してからもずっと仲が良く交流が続いていた虹花とは1年に1回は会っていて、その時も「また来年も会おう」と約束した。それにも関わらず、訳があって今の今まで会えずにいた。


「あら、もうこんな時間。ごめんね、これから仕事があるから行かないと…」


奈津美さんの声に思考が戻される。

彼女は腕時計に視線を向けて眉を下げる。


「忙しい中ありがとうございます。ここで十分ですよ」

「確か2泊3日よね?明後日休みだから、その時によかったらまた会えないかしら?お見送りもしたいし」

「いいんですか?じゃあ、お言葉に甘えますね」


奈津美さんは笑顔に戻るとタクシーに乗って行ってしまった。

俺はそのタクシーが見えなくなってから、この島の名物である【瑠璃が丘】に向かった。


瑠璃が丘は、この時期になると丘全体に瑠璃色の花が咲くことから名づけられた。

近くに小さい森や神社があり、涼しくてちょっとした冒険をしている気分になれたことや、あまり遊ぶ場所が多くなかったこともあっていつも何かあれば虹花とここに集まって遊んでいたことを今でもはっきりと覚えている。


港の近くにある坂をずっとまっすぐに上り、上りきったところの分かれ道を右に曲がる。

そこから更に10分程歩くと瑠璃が丘につく。


昔の事を思い出しながら、俺は坂を上り切って右に曲がる。

そして遠くに瑠璃色が見え始めたその時…


「誠司…?」


懐かしい声が後ろから聞こえた。

足を止めて、俺は声がした方をゆっくりと振り返る。


さらりと風に合わせて揺れる長い黒髪。

涼しげな大きな瞳。

陶器を思わせる白い肌。


そして瑠璃色のワンピースを纏った女性がそこにいた。

そんな彼女は、4年前と変わらない満面の笑みを俺に向けた。


「誠司だ!会いたかった!!」


目が合うと走って、少女のように無邪気に飛びついてきた。


「虹花!?」


慌てて俺は彼女を抱きとめる。

抱きとめた虹花の体は、とても冷たく感じた。





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