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第23話 自由の意味

※すみません!本文修正しました!

 ハンターズギルドを後にして、俺は再び宿屋へと帰り、ベッドに横になっていた。


 帰って来た際、まだ怪我人の処置やらでロビーはバタバタしていたが、避難していた宿屋のオーナーが戻っていて、あとで金を払うから一晩泊めて来れと言ったら、お代は結構だと言われた。


 宿屋へと向かう間も、出会う人皆が俺に感謝してくれていた。


 ……昔から、感謝してもらえる事が何よりも嬉しかった。 少なくとも、自分はその人達の人生を少しでも良く出来たのだと実感して、どんな苦労も報われた気がしていたから。


 今もそれは変わらない。 でも、自由に生きると決めてからは、心のどこかで、自由とは自分勝手に、好き勝手に生きなければならないんだと云う固定観念があったのかもしれない。


 コピロフと話をして、自分の考え方が意固地になっていた事に気付かされた。


 助けないのが自由ではないんだ。 良いんだ、好き勝手で。 ……好き勝手に、困ってる人を助けりゃ良いんだ。 他人の為に頑張っても良いんだ。


 魔族の事もあるし、それを放っておけるのかと自分自身に問い掛ければ、俺の性格ではとても無理なのだから。


 ……人を助ける。 それもまた、ガロウという男にとっての自由なんだと、そう割り切る事にしよう。

 ……ただ、やはりAランクに昇格するのは、また別の話しだ。


 ハンターズギルドの調査部隊は優秀だと聞く。 Aランク以上の申請では、どんな細かい詐称も暴かれると。


 であれば、もしAランクへのランクアップ申請を行えば、ガロウがヴォルグ・ハーンズであり、国王殺害の容疑でアルカトラウスに収監され、脱獄した逃亡者だとバレる危険性がある。


 いっそ、リングース王国に戻って、無実を主張して戦ってみるか? ……とも考えたが、相手は国家権力の中枢にいる奴等だ。

 騎士団団長にまで上り詰めたとはいえ、平民出で、しかも容疑を掛けられた脱獄者でしかない自分の主張など、誰が信じるだろう?


 それに……正直、無実を証明するのは多大な労力がいるだろうし、どれだけの時間を費やす事になるのか分からないのだ。


 なら、アレクセイやディック、その他にも自分を嵌めたかもしれない奴等を片っ端からぶっ殺すか?


  ……それは、考える間もなく悪手だと分かっている。 俺は、そんな殺人鬼みたいな真似はしたくない。


 そんな面倒事よりも、やはり今は自由に生きたい。 ジェイクと出会い、それが今の自分の望みだと気付いたのだから。



 とりあえず、明日、この町を発とう。


 コピロフとはあんな感じになってしまったし、やはりBランクの再発行は諦め、新たに冒険者登録すると決めて。


 とにかく、俺の……ガロウの新たな人生はまだ始まって初日なのだ。



 時間的に、暁の宴団がジェイクを救出に来たのは早朝だったのだろう。

 そこから、脱獄し、スタンピードに遭遇した。 合間に二体の魔族とも遭遇した。


 そして、あの黒炎野郎の言葉を信じるのなら、魔族は再び人間界に侵攻しようとしているのだ。


 自分は……腐っても聖騎士だ。 流石に魔族と対してまで、聖騎士である事を隠す訳にはいかない。 でも、光属性で戦えば、ガロウがヴィクトーだとバレてしまう可能性が出てくる。


 魔族の侵攻を見て見ぬフリが出来ないだろう俺とって、魔族の存在は、今後の自由を阻む最大の障害になるだろう。


 ……でも、とにかく、今は自由を楽しむとしよう。 魔族と戦わざるをえない日が来たら、それはその時に考えるしかない。 色々あり過ぎて本当に信じられない一日だったが、明日からの予定は当初と同じ、ベラドール王国の王都・海洋貿易都市ベラドールだ!



 すると、コンコンと部屋のドアをノックする音がする。


 慎重に部屋のドアを開けると、そこには意識を取り戻したリリアが立っていた。


「…………嘘、カッコいいじゃん」


 ぼ~っとしてなにか呟いてるが、声が小さくてよく聞こえなかった。


「リリア……さん、もう動いても大丈夫なのか?」


「え? ああ、大丈夫大丈夫! 応急処置が良かったみたいでね。 あの……アンタが助けてくれたんでしょ?」


 そういえば、リリアにはまだ名をちゃんと名乗ってなかったな。


「……ガロウだ。 気軽にガロウと呼んでくれ」


 ガロウ……そう、俺はハンターのガロウだ。 もう、ヴォルグ・ハーンズじゃないんだ。


「ガロウね。 本当にありがとう、アンタは私の命の恩人だよ」


 そう言いながら、リリアは俺に抱き付いて来た。


 …………ちょ、俺の胸に柔らかい二つの感触が!? そして耳元には温かい吐息がっ!?



「わっわっ、ちょちょちょ、ちょっと待て!」


 慌ててリリアを離す。 恥ずかしいが、俺はずっとガチガチの男社会である騎士団にいて、女慣れしてないのだ。


「……ねえ、ガロウってもしかして……」


「ん、んな訳ねーだろう! に、二六……いや、二七にもなって、どう……な訳、ねーだろう!」


 動揺から、思いの外声が大きくなってしまった……。



 すると、なぜかリリアが妖しい笑みを浮かべた。


「……へえ~……そうなんだ~。 ……じゃあ、試させてもらおっかな~」


 リリアが俺を部屋の中に突き飛ばし、終いにはベッドに押し倒された。


「お、おい、何を!?」


「ガロウには命を助けて貰ったし、私は借りは直ぐに返したいタイプなんだけど、今は返す手段がこれしか無いから……」


 上着をスルリと脱ぎ始めるリリア。 インナーは着てるが、とんでもなく立派な二つのたわわが目に飛び込んでくる。


「ば、バカな事はやめろ! オ、オジサンをからかうな!」


「オジサン? さっきは口元隠してたから分からなかったけど、ガロウの素顔……とっても素敵。 むしろタイプ。 経験豊富なんでしょ? 私も負けてないんだよね~、ケ・イ・ケ・ン」


 経験!? 俺、経験なんて……!? おわっ、リリアの手が、俺のガチガチの身体に触れる!


「!? 硬い……スッゴい硬~い……。 こんなの、初めて」


 うう……俺も初めてです。 ごめんなさい、アリシアとだって、手を繋いだだけでした……。


「さ、うつ伏せになって。 大丈夫、布団の染みを数えてる間に終わるから……」


 こ、こんな形で……俺は初めてを捨ててしまうのか? ……いや、待てよ。 そう、これも自由の一環じゃないか!


 騎士学校時代は、勉強とハンター活動に明け暮れ、騎士団に入団すると直ぐに戦地に送られた。


 その後、アリシアと付き合う様になったが、相手は一国の王女。 迂闊に手を出せないし、かといって俺が他の女性と仲良く話そうものなら、アリシアから容赦の無い絶対零度の魔法が飛んで来たのだ。


 二○代半ばにして、女を知らない騎士団団長だなどと恥ずかしくて言えず、部下に自分は男も女も一晩で一○○人斬りしたもんだと強がってた。


 そんな日にも、漸くおさらば出来るんだ! でも……アリシア……ごめんよ……。



 ……


 ………


 …………



「ホントにスッゴい! ちょっと細いけど、こんな硬いのに弾力のある筋肉を揉むの、初めてだわ!」


 …………うん、確かに一年間も動けないでいたから、身体の調子は最悪だったけどさぁ……。


「どう? 気持ちいい? 私これでも、マッサージは得意なのよね~」


 くそう! この小説がノクターンだったら良かったのに! ……ん? ノクターンってなんだ? ……忘れよう。


 リリアの恩返しは、俺がほんの少しだけ期待したものではなかった。 そもそも、うつ伏せにされた時点で気付くべきだった。



「ハイ! 終~了! ガロウって凄く痩せてるけど、筋肉はしっかりしてるのね」


 一年の間にどんなに痩せても、元々鍛えに鍛えまくってたから最低限の筋肉は残ってたのだろう。


 それにしても、なんだかんだでリリアのマッサージは本当に気持ちが良かった。 めちゃくちゃスッキリしたな。



「さ~て、ターニャたちが心配してるだろうから、帰るね」


「ん? そうだな。 マッサージありがとう、凄く良かったよ、リリア」


「フフフ……まだこんなんで恩を返したとは思ってないから……」


 リリアの顔が近付いて来て、柔らかい唇がガロウの頬に触れる。


「今度は、大人のマッサージを教えてあげるから、楽しみにしててね……チェリーくん」


 そう言って投げキッスをすると、リリアは部屋を出て行った。


 ……大人のマッサージ…………。



 その後、悶々としたチェリーくんこと俺は、久しぶりに自家発電を行い、眠りに着いたのだった……。

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