5.行き着く先はオナドルですか?
せっかく、ステータス画面が開いているので、タクトは検証がてら定食メニューのページに飛ぶことにした。
そのページには、御使いが言っていた通り、たしかに定食屋アンドウサンのメニューが載せられていた。
「懐かしいな。最後にアンドウサンに行ったのって大学四年の時だから、もう、十五年も前になるもんな。じゃあ、先ず、コイツを注文!」
タクトは、ハンバーグ&チキンソテーセットのボタンをクリックした。
すると、突如目の前に、所望の品が現れた。
まさに、無から有が生み出された瞬間であった。
出て来るとは言われていたが、本当に出てくると、それはそれで驚くモノだ。
大きな皿の上には、大盛サラダと、その上に大きなチキンソテーとハンバーグが乗っていた。
ご飯も大盛で味噌汁付き。
早速、タクトは、
「いただきます!」
懐かしの味を楽しんだ。
ステータス画面の中に、
『大賢者生活を満喫するために』
と題したところがあった。
タクトは、食事をしながら、そのページを読むことにした。
そこには、自分が使える魔法一覧と、各魔法の解説のページがあった。
「一先ず、全属性使えるみたいだな。これは有難い。それから、アイテムボックスも装備されているか。ただ、転移魔法は限定的で移動距離は二キロか。まあ、それでも使いようかもな」
次のページを開くと、そこは、旅行情報誌のような内容だった。
前方の街のことも掲載されていた。
「へー。酒が美味い街って書いてある。ただ、街の名前はオナドルか。ヒドイ名前だ」
多分、地球……と言うか日本であれば、絶対に付けない名称だ。
その辺は、異世界なので感性が違うのだから仕方が無いのかも知れない。
そもそも地球とは違って、オナドル自体が存在しないのかも知れないし……。
…
…
…
食事を終えると、タクトは、食器類を一旦アイテムボックスに収納した。
勿論、宿にでも着いたら洗うつもりだ。
「腹も膨れたことだし、街へ急ぐか」
そう言いながら、ゆっくりタクトは立ち上がった。
丁度、この時だった。
「助けて!」
背後から救助を求める女性の声が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、一人の若い女性が魔物に追われていた。
魔物は、二足歩行で体高二メートルほど。
サルかゴリラの類が魔物化したモノと思われる。
タクトは、その魔物を指さすと、
「逝け!」
と呟いた。
すると、彼の指から魔力で出来た弾丸が放たれ、その魔物の眉間を見事撃ち抜いた。
まさに一瞬の出来事であった。
大きな音を立てて倒れる魔物の死体。
その魔物に追われていた女性は、助かったことを知り、ホッとしたのか、その場に脱力して座り込んだ。
その女性は、痩身足長八頭身の巨乳美女で、タクトが地球存命時代に想い描いていた理想の姿そのものであった。
改めて見ると、心臓がドキドキして来る。
これが運命の出会いであって欲しいと、タクトでなくても願いたくなるだろう。
「大丈夫ですか?」
「アナタは?」
「俺はタクト」
「私はアルカ・リンと申します。周りからはアルカと呼ばれております」
「アルカさんね」
「はい。助けていただき有難うございます。それにしても、あの魔物を簡単に仕留めるとは……。t取り敢えず、前方の街オナドルに行くのですけど、よろしければご一緒していただけないでしょうか? 女の一人旅は、思っていた以上に危険でして」
たしかに、女性の一人旅は危険である。
しかし、初対面の男性と同行と言うのは、もっと危険ではなかろうか?
しかも、最初の行き先がオナドルって……。
さらに言ってしまえば、タクトはアルカのことを助けたが、タクトもアルカも互いに善人なのか悪人なのかすら分からない状態である。
それで同行して良いのだろうか?
とは言え、理想の容姿をまとうアルカからの誘いである。
タクトは、
「喜んで同行します」
と何も考えずに答えた。