表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/19

4.全てが絶対値ではなく相対値記載だそうだ

 拓斗は、気が付くと何もない真っ白な空間にいた。

 少なくとも、ここが惑星ココナの小国クリトリアとは考え難い。


 ふと、拓斗は、

「それにしてもココナか。コロナと語呂が似ていてびっくりしたよ。それに、クリトリアって、ヤバい名前だな」

 と独り言を漏らした。



 しばらくすると、一人の中年風の男性が拓斗の前に姿を現した。ただ、その男性の表情からは、非常に面倒臭そうな雰囲気が強く漂っていた。


「アンタが地球から送り込まれて来た人?」

「はい。岸野拓斗と言います」

「拓斗ね。私は、この世界の神。アンタで転生者は七人目だ」

「七人目ですか?」

「今までのヤツ等は、全員、魔王に倒されたよ」

「そんなに魔王は強いんですか?」

「まあ、強いと言うか、今までのヤツ等が強くしてしまったと言うか。まあ、期待していないから適当にやっといてくれ」

「はぁ……」

「それと、この装置を使って登録だけは済ませてくれ。じゃあ、あと、よろしく」


 それだけ言うと、その自称神は姿を消した。

 代わりに、拓斗の目の前にATM装置のようなものがせり上がってきた。これを使って何かを登録しろと言うことだ。


 自称神の対応に対して、

「イイカゲンだな」

 とも思ったし、

「なんだか、ちょっと感じ悪いな」

 とも思ったが、一先ず拓斗は、その装置を使って手続きを開始した。



 画面には、

『名前入力』

 の文字が記されていた。しかも、カタカナ入力だ。

 そこで拓斗は、

『タクト』

 と入力した。これが、行った先(異世界)での彼の名前となる。


 続いて、

『性別選択:前世のまま or 性転換』

 の文字が記された。

 タクトが、前世のままを押すと、次のページへと進んだ。


 すると今度は、

『転生先年齢』

 と記された。年齢は、0歳から現在の年齢、つまり拓斗の場合は37歳までを自由に選択できると言うことだ。

 タクトは、折角なので若返りを図ろうと17歳を選択した。


 次の画面は、

『不老不死 不老のみ 不死のみ どちらも不要』

 からの選択だった。


 ふと、ここでタクトは、

「転生先年齢を0歳にして不老不死を選択したら、永遠に赤ん坊のままだな?」

 と思った。


 多分、勢いで、そんなバカみたいな選択をしてしまう人も、たまにいるだろう。

 ここでタクトは、不老不死を選択した。



 すると、次の瞬間タクトの身体は強烈な光に包まれた。そして、その光がおさまると、彼は人通りの無い、土が剥き出しの路上に立っていた。

 道は東西に延びており、道の両脇には延々と荒れ地が広がっていた。


 西の方角に街が見えた。

 一先ず、タクトは、その街を目指して歩き始めた。



 丁度、一キロくらい歩いたところで、突然、タクトの目の前にステータス画面が現れた。

 多分、これは本人にしか見ることが出来ないヤツだ。

 しかも、そのステータス画面にはアラートが出ていた。


「なんだろう?」

 タクトは、画面上に現れたクリックボタンを押すように念じた。

 すると、画面からアラートが消えて、

『大賢者の注意事項』

 のページに飛んだ。


 タクトは、商品を買うと取扱説明書を隅から隅までキチンと読むタイプであった。

 そう言う意味では、ちょっと普通ではないかも知れない。



 この世界では、HPもMPもSTRもATKもVITも、それ以外の何もかもが、昔の魔王を基準に相対値として数値が決められていた。

 どうやら、HPとMPは昔の魔王の値を10,000に、それ以外は全て魔王の値を1,000に定義していたようだ。


 ただ、魔王は、今では相当強くなっていた。

 それこそ、HPとMP が7,290,000、それ以外が729,000の超バケモノなのだ。。


 ところが、タクトは、全て魔王の倍、つまり、HPもMPも14,580,000、それ以外の数値は全て1,458,000と飛び抜けていた。

 普通、これなら絶対に魔王に負けることは無いだろう。



 しかし、取扱説明書の中には、タクトが魔王に敗北する可能性について、ハッキリと記されていた。

 今までの六人の大賢者達は、基本的に同じ過ちを犯して敗れていたのだが、その内容がキチンと記載されていたのだ。


 先輩大賢者達のステータス画面にも取扱説明書が掲載されており、そこには同じことが書かれていたと注意書きされている。

 つまり、ヤツラは、取扱説明書を全然読んでいなかったに違いない。



 絶対に、歴代の大賢者達と同じ轍を踏むわけには行かないだろう。

 タクトは、

『自分は、同じ過ちを犯さずに、必ず魔王に打ち勝ってみせるけど……』

 と一応、心に誓いはしたものの、何気に同じ過ちを是非とも犯したいような空気が全身から漂っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ