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2.並行世界の存在

 小惑星が激突することは、既に数年前に分かっていた。

 しかし、その時点で全世界に大々的にアナウンスしていたら、長期に渡って大半の人間がパニックに陥る。


 パニックにならなかった者達も、多くは好き勝手なことをし出すだろう。

 それこそ、数年に渡り、小惑星が激突するその日まで、強盗や殺人、性犯罪、不倫などが、其処ら中で日常茶飯事と化すに違いない。

『どうせ、もうみんな死ぬんだから何をやってもイイよね?』

 と言った感じになることが強く予想される。


 それで、世界中の天文学者達に緘口令が敷かれたとのことだ。

 当然、それ相当の金は握らされただろう。



 加えて、彼等は優先的に火星辺りに移住できることも約束されたらしい。

 さすがに全人類の移住は難しいが、彼等だけなら何とか移住可能と判断されたようだ。

 と言うか、既に秘密裏に移住が完了していたとの話だ。



 大方の予想通り、この日、世の多くの人達は、パニックに陥るか、もしくは開き直って人生最期の日を派手に楽しみまくったと言う。

 勿論、極悪な意味もHな意味も含めての話だ。



 次の日。

 予報通り日本近海に小惑星が激突した。

 勿論、大津波警報も発令された。


 大津波から逃れようと山に登った者達もいた。東日本大震災直後に発生した津波の教訓のつもりだったのだ。


 しかし、激突後に荒れ狂う熱風……いや、炎の渦が小惑星激突地点から半径千キロを超える範囲に渡って吹き付け、多くの日本人が一瞬で焼け死んだと言う。

 それこそ、日本人の大半は、山に登った者達も平野部に残った者達も、津波を見ることすら叶わなかった。



 しかも、小惑星激突の衝撃から、日本中では多くの火山が連鎖的に噴火を始めた。

 仮に炎の渦に巻き込まれなかったとしても、山に登った者達は、結局のところ噴火に巻き込まれて命を落としたであろう。



 気が付くと、拓斗は長蛇の列に並んでいた。

 きっと、この先に閻魔大王がいて、行き先を決めてくれるのだろう。

 さて、拓斗が行くのは天国か地獄か?


 しばらくすると、

「大沢賢人さん、早乙女聖美さん、川北一郎さん……」

 列の横に、白い服で身を包み、背中には羽を生やし、華奢で中性的な方達が何人も現れて、列に並んでいる人達に声をかけて行った。

 直感的ではあるが、拓斗は、その者達が天使であると理解していた。



 天使に声をかけられた人達は、身体が宙に浮いた。

 それこそ、反重力装置でも付けられたかのように、列に並ぶ人達の頭上三メートルくらいの高さまで一気に身体が浮いたのだった。


 その中に、

「岸野拓斗さん」

 拓斗の名前も入っていた。


 その後、名前を呼ばれた者達は、次々と別の空間へと瞬間移動させられた。勿論、拓斗も例外ではなかった。



 拓斗達が連れて来られたところは、体育館のような広い建物の中だった。

 人数は千人くらいだろうか?

 男性も女性もいたが、年齢は見た感じ全員が拓斗と同じ三十代か、それ以上であった。

 ただ、雰囲気は全員暗く、社交性に優れた雰囲気は微塵にも感じられなかった。


 また、そこには何故かステージが設けられていた。

 そして、そのステージの上に一人の天使が舞い降りてきて、まさに朝会で壇上に立つ校長先生の如く話し始めた。


「みなさんをここにお呼びしたのは、これから各担当の異世界に転生していただくためです。

 宇宙の多重発生機構をご存じでしょうか?

 ビッグバン宇宙が誕生した時、膨張が均質ではなかったため、場所によって膨張に歪みが生じて、そこで宇宙が分岐しました。

 最初に生まれた宇宙がマザーユニバース。そして、マザーユニバースから飛び出すように生まれた宇宙がチャイルドユニバースと呼ばれます。

 チャイルドユニバースからも、同じようにチャイルドユニバースが誕生して、更にそこからまたチャイルドユニバースの誕生と、一瞬のうちに連鎖的に数えきれないほどの宇宙が誕生しました。

 その宇宙の多くは消滅しましたが、それでも、かなりの数の宇宙が並行して存在しています。それらが、みなさんの言う異世界です。

 今、異世界の多くは危機に瀕しています。そこで、みなさんには各自、担当の異世界に大賢者として転生していただき、担当世界を救ってもらいたいのです。そのために、強大なる魔力と攻撃魔法を授けます」


 これを聞いて、

「俺が大賢者!」

 と喜ぶ者もいれば、

「んだよ、マジかよ。引き籠ってネトゲしてぇ」

 と面倒臭がっている者もいた。

 反応は、人ぞれぞれのようだ。

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