14.憤死?
翌日、タクトは朝早くにアルカ、アルコルと一緒に宿を出た。
次の目的地は、『ラーウンコパティー』と言う街。
タクトは、
「名前の中にウンコって入っているよ。それに、何気に『ラン〇ウパーティー』のアナグラムになっていないか?」
と、この世界特有の『街のネーミングのヒドさ』を、つくづく感じていた。
ラーウンコパティーに到着。
今までのペースなら、ここで宿を探すところだ。
しかし、今回はアルカが、
「タクト様。急いで次の街に行きましょう! まだ日は高いですし。急いで六ハラも魔王も倒すんでしょ?」
とタクトに先に進むことを提案してきた。
たしかに、まだ昼過ぎだ。
頑張れば、夕方過ぎには次の街に着けるだろう。
「分かった。アルコルもそれでイイ?」
「イイです」
三人は、そのままラーウンコパティーを素通りして、次の街、『セクロ―ス』に向けて出発した。
これもまた、ヒドいネーミングの街だ……とタクトが思ったのは言うまでも無い。
そろそろ日が傾いて来た。
三人は、セクロ―スまで、あと一キロくらいのところまで来ていたが、突然、彼等の前に六つのつむじ風が現れた。
タクトには、それが自然現象と言うには、余りにも不自然なモノに感じられた。
「サンダースピア!」
そのつむじ風目掛けて、タクトが電撃魔法を撃ち込んだ。
すると、それらのつむじ風が消え、さっきまでつむじ風があったところに六人の中年男達が倒れていた。
どうやら、タクトの電撃攻撃を受けてダウンしたのだろう。
ソイツ等の姿を見て、アルコルが、
「タクトさん。アイツ等が六ハラです!」
と言った。
恐らく、アルコルを連れ戻しにでも来たのだろう。
それこそ、今夜はアルコル一人対六ハラの凄まじいエロ大会が催される予定でいるに違いない。
ちなみにコイツ等の名前は、パワハラ、セクハラ、アルハラ、スモハラ、マタハラ、テクハラ。
ロクな名前じゃない。
六ハラ達が、辛そうに立ち上がった。
そして、ソイツ等は、
「何すんじゃ、この〇✕▼◇●◎△%&#!」
「%+*●◎〇&✕▼◇#△!」
「************!」
放送コードを遥かに超えた暴言をタクト達に向けて放って来た。
さすが、ハラスメントの塊、六ハラだ。
口から出て来る言葉がムチャクチャ汚い。
タクトは、額の第三の目を開くと、
「反射!」
この聞くに堪えない暴言攻撃を、そのまま反射した。
つまり、とんでもない暴言は、そのまま言った本人に返って行く。
すると、六ハラの一人が、
「何だと!」
自分達が言い放った暴言に、相当頭にきたようで、顔を真っ赤にして怒り狂っていた。
六ハラメンバーは、ハラスメントの如く暴言を吐くことで相手の冷静さを奪い、そこに攻撃を仕掛けて行く。
しかし、自分達が暴言を受けるのは、余り得意ではないようだ。
そして、
「プツン!」
ソイツは脳内の血管が切れたらしく、その場に倒れた。
まさに憤死である。
「マタハラ、大丈夫か?」
どうやら、憤死したのはマタハラらしい。
他の五人が、マタハラの身体を揺すったが反応なし。
と言うか、医療素人が勝手に揺すってイイのか?
突然、五人は、
「死にさらせ!」
と言いながら、刃物を片手にタクトの方に突っ込んで来た。
しかし、完全に冷静さを欠いている彼等に、連係プレイなどできるはずが無い。
ただ、単調に突っ込んで来るだけである。
タクトは、
「ファイヤーバレット、連射!」
まさに機関銃の如く、炎の弾丸を五人に撃ち込んだ。
五人は、避けることすら出来ずにモロに被弾し、そこから着火。
一瞬にして彼等の服が燃え上がった。
ここにさらに、ちょっと大き目のファイヤーランスでも撃ち込んでおけば、確実に倒せるだろう。
タクトが、そう思った、その時であった。
「お前等、要らねえ」
どこからか、ぶっきらぼうな感じの女性の大きな声が聞こえて来た。
そして、その直後、パワハラ、セクハラ、アルハラ、スモハラ、テクハラに向けて落雷が生じた。
「ギャー!」
コイツ等の断末魔の声が響き渡る。
さすがに攻撃魔法による落雷をまともに受けたら、タダじゃ済まないだろう。
五人からは魔力反応が完全に消えた。どうやら、絶命したようだ。
そして、間髪置かず、
「ファイヤーランス!」
この詠唱と共に、タクトに向けて巨大なファイヤーランスが、何処からか撃ち込まれて来た。
「シールド!」
タクトが魔法障壁で、この攻撃を防ぐ。
しかし、ファイヤーランスの威力は相当なモノだったようだ。
ファイヤーランスが魔法障壁に当たると同時に、とてつもない轟音が、辺り一面に響き渡った。